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第29話 空白
再度、手術を余儀なくされたヒロミに
かける言葉を無くしたユージ…
男女の仲に、戻らないにしても
ユージが居るだけで
パワースポットの様な存在だと
ヒロミは言う。
本来、二人の仲に
派手さは無かったが
しっかりと次の事態に備えた
先見の明と安心があった。
ヒロミがこの先に描いた未来は
どんなものなのか…
ユージは頭の中が真っ白に
なっていくばかりだった…
今までの人生で
身体における苦しみや
手術が必要になる病を
患った人間が
同じ年頃に居ること自体が
初めてだったからだ…
それから
1ヶ月ほどたったある日…
いつもと変わらぬ工場の仕事を
淡々とこなしていく…そこへ
ユージの携帯電話が鳴った。
それはヒロミの携帯電話から
ヒロミの母親がかけたものだった。
「ユージくん…大変なのよ」
最初は何があったのか
さっぱり分からなかった…
手術を受ける日を
連絡すると言ったきり
時間ばかりが過ぎて
いつ面会や見舞いに行って良いやら
分からずにいたユージ…
そのTELの朝方…
異変に気づき
母親が部屋に入ると
苦しそうに息をするヒロミに気付き
緊急搬送されたらしい
何も手につかなくなり
慌てて会社を飛び出すユージ…




