第27話 優しさ
工場で仕事をしていたユージの
携帯電話が鳴った…
それは…ヒロミからだった
退院を認められ
今度はゆっくりと話せるという
嬉しい気持ちとは裏腹に
ヒロミの声のトーンが低いことに
ユージは不安を覚えていた
見舞いに行く度に
早く退院したいと願っていたヒロミが
なぜ、あんなにも落ち込んだのか…
念願叶ったはずだろ!?
ユージは術後の経過が
気になって仕方が無かった
その翌日…
カオルが差し入れてくれた
弁当箱を返し忘れていたことに
気がついたユージは
キレイに洗った弁当箱を
カオルの店へと届けに出向いた…
「気にしなくて良かったのに…」
優しい口調でカオルは答えた。
そして、
ユージの頭へと目を向け
続けて言った
「いい加減…髪切ろうよ
今日は暇だから切ってあげる♪」
微笑みながら店の中へと招き入れ
ユージの髪を切り始めると
離れてからの生活のことや健康状態…
それは心配で仕方がないと
いったところだろうか…
「まだお見舞い行ってるんでしょ?
病気の娘…どうなの?」
「!?」
ユージは思わずカオルを見た…
目を合わすこともせず
淡々と髪を切り続けるカオル
「手術は無事…終わったけど…」
そのハッキリしない結果にカオルは
「何? 何かあったの?」
ことの経緯を説明し
結果的にこの先も会い続けることを
告げてしまったユージ…
そこで初めてカオルの表情が曇った
「ねぇ? もう…いいんじゃない?」
何かを断ち切る様に
言い放った言葉に聞こえた…




