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第21話 急転直下
カオルの店の前なんて
通らなきゃ良かった…
ユージはなぜか、そんな気持ちになった。
だけど…
自分もこんな思いを…
いや…
もっと辛く
酷い思いをカオルに
させていたんだ…と
ユージはようやく悟ったのだ…
その晩
ユージはカオルに話を持ちかけた。
「あのさ…」
何気ない感じでカオルが答える
「うん…何?」
「こんなことになって
俺が一緒にここに住んでるのは
何だかおかしな気がするんだ…」
少し間をあけてカオルが反応する…
「えっ!?別に構わないと思うけど…」
「いや…別の所を探そうと思うんだ」
昼間のことよりも先に
ユージは自分の立場から
カオルの気持ちを…優先しようと
心に決めていたのだ。
「ホントに勝手な人だよね…」
カオルは寂しさと
呆れた感を隠せなかった。
「これまでのツケが回ったのさ…」
苦笑いでユージはカオルを見た
前ほどの涙は出ていなかったが
うっすらと浮かべた涙は
カオルの人柄を象徴するものだった。
引き止めても
この人の気持ちは変わらない…
日頃の優しさからは
想像がつかない程の
ユージの実直さを
カオルは知っていたから…




