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いずれはしたいニャンニャンを(5)

「きーにーいーらーぬーのーじゃー!!」

 お膝の上のメイメイさまが、ボクの冒険譚に対して文句を仰られる。人が智恵を絞り、命を懸け、そして仕掛けた策謀だというのにね?

 ジャパンじゃ酒に酔わせて不意打ちで英雄とか、女装して不意打ちで英雄とか、そういうのばっかりじゃないですかー。大抵の英雄って、寝込みを襲ったりとか卑怯ですよー?

 お膝の上でジタバタするたびにフォックスナインテイルがコショコショくすぐったいのです。

 ペシペシと太腿を叩いてくるが、これは抗議のペシペシだ。でも、レイジ嬉しい!!

「むー、ボクは頑張ったのですから、ほーめーてーくーだーさーいー!!」

「いーやーじゃー!!」

 プイッと頬を膨らませて顔を背けるメイメイさま、可愛いですねー。モフモフしたい。だけど、ボクにはモフモフが無い。禅の境地はまだ遠い。頭を撫でると幸せになってしまう。

 ちなみに、剣聖様に聖魔様のご夫妻とアルエットにマリエルさん。聖戦軍の皆さんが、白虎王の到来に備えているが……そろそろ海岸に残留物が漂着したりしないんだろうか?

「なぜ、お主が正々堂々と戦い、そして討ち果たさぬのじゃ!? さすれば英雄譚がまた一つ増えたものを!! お主は何のつもりで、こんなにも姑息な手段に頼ったのじゃ!?」

 姑息って。

 そもそも、魔王の前に姿を晒してる時点で姑息じゃないと思います!!

「戦戯王ですよ。勇者様は不在。でも、魔王を単身討ち果たせる存在が健在。ならば、興を惹いてしまうでしょう? もしもボクが、魔王討伐を名目にして聖戦軍の旗頭になどされたら必ず攻めてきます。だから栄誉を避けたんですよ。攻めませません勝ちません。不戦争です」

 メイメイさまに腿をペシペシとされた。続けろという意味だ。

「まず、王が勇者様に爵位等を授けます。それは勇者が王の家臣となることです。世界の平和の為に召喚された勇者を、自国の兵士にするとは何事かと大義名分を得た北の国が攻めてきます。戦争には大義名分あった方が良いですからね。そこでその一歩目を踏ませませんでした」

 王様とその取り巻き、外道どもの泣きっ面を思い浮かべたのだろう。

 メイメイさまがちょっぴり狐顔で笑った。良かった。これで正解だったようだ。

「――――ふむ、続けるのじゃ」

「白虎王は中途リアル、最後の試練だったんですよ。勇者様を主軸にして魔王を討伐し、聖戦軍が完全に結束するための最後の一手。勇者様、なんだかんだ言って未だに魔王を一体も討伐してないじゃないですか? 勇者様にも箔を付ける必要があったんですよ」

「なるほどのぅ。やはり医者を呼ぶか?」

 メイメイさま? ほっぺツネツネの刑ですよ?

 お餅みたいで柔らかいですね、プニプニです。ハムハムしても良いですか?

「戦場を海の遠方にすることで、水竜王と海洋王を誘き寄せ、この地の海上封鎖を解きました。遠く沖に出ない限りは大丈夫だと思います。あの白猫王がやらかしましたので、海中の自然環境は破滅状態です。餌の無い場所には、幾ら魔王でもやってこないでしょう?」

「多くの漁師達が死ぬぞ?」

 ――――はい。

「死にますね。でも、死後には偉大なる保険屋が何とかしてくれるから大丈夫ですよ。すでに戦争は始まっているんです。全ての人が無傷で居られる訳ないじゃないですか……。勇者様は西へ東へ、困っている人々を助けて回ってるみたいですね? もう北の国がこちらへ攻め入る名分が失われました。もしも攻め入ったなら、周囲の国が批難声明と共に、北の国へ侵略を開始することでしょう。魔王の脅威に晒されている今、人間同士で争う気かと大義名分を得て。詰みです。人間の軍だけではまず勝てない局面。兵士に魔物を加えたなら勇者様が飛んでくるでしょう。それでさらに周辺諸国から兵士が集ります。そもそも人間と魔物の即席混成軍では連携など取れないでしょう? だから、今回の遊戯はこれで詰みです。今回は不戦勝ですよ」

 遊戯盤の上で勝てないなら、遊戯盤を隠してしまえ。

 それが俺の選んだ最善の選択だった。ついでに王様の顔に泥パックしてやったしね!!


「なるほどのぅ? で、あるそうじゃぞ? アルエット」

 フスマが開けられ、その背後に控えていたアルエットが姿を現した。

 メイメイ様はいつもの斜め座り、さらには背中に手を回したりなんかしたりして、なんだろう、この気まずい雰囲気は。う、浮気じゃないよ? 二股だよ? あ、それは殴られそう。

「レイジの本懐。聞き遂げさせて頂きました。アルエット=バリューシュラン。この剣を貴方に捧げます。舞剣には遥か遠く届かぬ未熟なる剣ですが、どうか、お受け取りください……」

 その剣は本来、王様が受け取る剣なんだけど……。

「受け取る前に、聞きたい事がある」

「なんでしょうか、レイジ?」

「受け取るのは剣だけなのー?」

 あ、顔が真っ赤になった。俺も。メイメイさまはくふふと狐笑いをしていらっしゃる。

「――――お、女も、お受け取りください……」

 受け取ろうとしたのに、メイメイさまが、お膝から降りてくれないので大変でした。

 アルエットそのものを受け取るには、お姫様抱っこが必要で、剣を抱えた鎧装束のままだから重いのなんの。ついでにメイメイさまも背中に乗っかってくるものだから、レイジ、おもわず倒れちゃいました。


 なぜでしょう? なぜ、我が剣にボクは腕立て伏せをさせられているのでしょう?

 ハーレムって、完全に体力勝負なんだなぁ……。あとこれにティータ先生にアリアドネさんを加えるの? ……レイジ、お嫁さんは一人で良いかも。むしろ、レイジがお嫁さん希望!!


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