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ダンジョンや、あぁダンジョンや、ダンジョンや(3)

 二日目になりました。

 挑戦者がまだ現われません。あいつ等、何をサボっているのでしょう?

 ボクが退屈をしていると、ダンジョンのなかから見たことの無い魔物が出現しました。

 ワームの分離体と言う割には、実にムシムシした魔物さんだったので、お土産に持って変える事に決めました。きっと、ティータ先生が大喜びですね。

 ムシムシした魔物。……虫そのもの? どういうことでしょう、これは?

 不死王さんの居城の近くにダンジョンミミズを放ってあげると良いかも知れません。


 三日目になりました。

 挑戦者が現われません。レイジ、退屈です。一人遊びにも限界があるのです。

 ムシムシさんな魔物が湧いて出てくるので、上手にダンジョンとダンジョンの入り口をトンネルで繋いで見たところ、ムシムシ同士が喧嘩を始めてるじゃないですか!?

 喧嘩の理由は、一匹のグレーターブロードサッカーを巡った争いです。

 水槽で蟻を飼ってる人の気分が解ってきた気がする!! なんだか、とっても楽しい!!

 レイジの新しい趣味が出来ました。これは見てて飽きない遊びです。


 四日目です。

 まだ挑戦者が現われません。そういえば、途中で崩れた石の橋を見た気がします。

 道が物凄くデコボコだった気がします。大鹿さんは頑張って生き残っているみたいですね。

 彼等は六人パーティー。馬車で移動してた気がします。……早く来いよ。

 ムシムシ大戦争の勝利者は第二ダンジョン。グレーターブロードサッカーをお持ち帰り。

 倒した敵や仲間の死骸もお持ち帰り。随分とエコロジーな魔物さんたちです。


 五日目ですねー。

 一方の側にハチミツを与えてみました。わりと大喜びで持って帰りました。

 このダンジョンミミズ。どこから栄養補給するんでしょう?

 そこで、入り口からダバダバ流しこんでみたところ、ダンジョンの床や壁面に付着したハチミツが吸収されました!!

 蜂の巣やプロポリスなんかも吸収されました!!

 その辺の木なども時間をかければ消化できるみたいです。なんでも食べます。

 好き嫌いの無い子さんです。このミミズさんは、ティータ先生よりも偉い子ですね。


 ダンジョンの観察日記六日目です。

 もはや売り物にならない茨ウリ坊の挽き肉を放り込んでみたところ、新種のダンジョンモンスター、茨ウリ虫が完成。洞穴ライオン蟻のミルメコレオって、ここで誕生したんじゃ?

 茨ウリ坊の性質を引き継いだ、速い、小さい、硬い、トゲトゲ、そして大量。……もしかして、とても危険な生き物を生み出してしまったのかもしれません。生命倫理の禁忌に触れてしまったのかもしれません。

 いやいや、もともと分離体を使って人や魔物を引き込むって話じゃないですか。なので、ボクの行為はセーフだと思いました。茨ウリ虫。キモ可愛いです。


 観察日記七日目。

 ついに茨ウリ虫達の総攻撃が開始。第一ダンジョンから第二ダンジョンへと流れ込み、削り取ってきた壁の石や敵の虫達を持ち帰る茨ウリ虫の勇士。

 あ、見た。サムライ蟻が、他の蟻の巣から幼虫を持って帰る姿にソックリです。あるいは、人間達の戦争。略奪の後です……あぁ、亡国の第二ダンジョンに鎮魂の鐘が響きます。

 でも、第二ダンジョンにはグレーターブロードサッカーを与えられたはずなのに、変異していません。あるいは変異した結果、元よりも弱くなったのかもしれません。これは難しい。


 観察日記八日目。

 奪われるだけの第二ダンジョンが可哀想なので、ジャイアントハニービーの死骸を与えてみました。すると、空飛ぶバグが発生!! チョコマカと地上を走るウリ坊と、空飛ぶ槍の小さなハニービー。 なかなかの名勝負です!! キルレシオは互角!!

 ウリ坊の突進攻撃を受けると撃ち落される。小さなハニービーの槍で貫かれるとウリ坊がやられてしまいます。天と地と、黄色と茶。偉大なる大決戦の始まりでした。

 どちらも基本はウリ坊サイズ。正直、俺自身が真っ向勝負で勝てる気がしなくなりました。

 こいつら、どう見ても危険生物です。


 観察日記九日目。

 空飛ぶバグの生態が判明。最初に与えたグレーターブロードサッカーの性質を吸収し、針から血を吸う珍しい蚊になった模様。なるほど、最初に与えられた性質と基本の相性が悪かった訳ですね?

 基本の魔物が虫だったのは、その辺の虫がダンジョンの中で死んだからなのでしょう。

 ウ、ウリ坊にアルミラージュとかどうかな? ……こいつを与えたら、超凄いのが出来ると思うんだけど? 超凄いムシムシさんが完成すると思うんだけど? どうかな?

 駄目だと解っているのに、駄目だと解っているのに、お、俺の右手が――――。


 十日目。

 実験、仕舞っちゃいました。危険生物を生み出していたことには、未だ気付かれて無い模様。

 あと一日到着が遅れていれば、茨ウリ坊にアルミラージュが合体した、危険度絶大の生命が誕生するところだった。よくぞ止めてくれた、皆、ありがとう!!


「待たせたみたいだな、すまない。だが勝負は勝負。公平な気持ちで戦わせてもらうぞ!!」

「すまないじゃなくて御免なさいでしょー? これだから最近の子は全く。そもそも、こっちは先に始めても良かったんだからねー? 解るー? その辺の所ー? 公平の意味間違えてないー? 本当に公平なら機動力を含めて、もうとっくに勝負は始まってるんだからねー?」

 生命倫理を逸脱した危険な実験をしていた事を隠す気持ちが、僅かばかり含まれていたのかもしれない。俺の言葉が強く当たってしまった。

 平常心。平常心を保つんだ。バレてない!!

「うっ……ご、ごめんなさい」

「うむうむ、謝ればそれで良いのじゃ。それで勝負の内容なのじゃが、ダンジョンは二つある。好きな方を選ぶが良いぞ。わしは山の側を第一、もう一方を第二と呼んでいるが、どちらも同じダンジョンなのじゃろ? お主が好きに選ぶが良いぞ」

「それでは、遅れてきた俺達は第二の方で。レイジさんは第一の方ということでよろしいでしょうか?」

「うむ、それで構わぬぞ? 先に辿り着いた身として忠告しておくが、すでにここのダンジョン、それなりの成長を見せておるようじゃ。命を落とさぬよう努々、気を付けるのじゃぞ?」

 茨ウリ虫の回避に成功。

 第一第二の呼び名、本当は逆なんだ。その奥ゆかしさを忘れないでくれ、カシウスくん。

 あんな恐ろしい魔物の相手なんか出来るものか!!

 わざわざ向こう脛を狙って削っていく悪魔だぞ!! 弁慶殺しと名前を登録し直したい。


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