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牡丹に桜に紅葉の赤(3)

「お前に相応しい剣技、ミラージュステップ、は決まった!! 剣技≪爆真竜破斬ふりおろし≫!!」

 ≪爆真竜破斬≫、それは竜を名乗るトカゲの牙から造られた竜王剣ロゴスにのみ許されし業。

 Vの字に作られた刃。そのVの谷間にジェット噴流を加えることで剣を振り下ろす超絶奥儀。

 ちなみに、何一つ斬れた事は無い。刃先が鋭くないからだ。

 魔力を持つ生物は頑丈だ。力強い。魔力のない俺は普通だ。力も普通だ。

 比較対照が強いからといって、自らを弱者と名乗るほど自虐的ではない!!

 ティータ先生が強いんだよっ!!


 さて、そんな理不尽な魔力の存在だったが、ある一点で平等なところもあった。

 質量自身だ。硬くて斬れなくても、ホームランは可能だった。運動エネルギーは平等だ!!

 茨猪、その猪突猛進を避ける。猪突猛進とは真っ直ぐに進むことしか知らない馬鹿のことだが、実際はわりと小回りの利く生き物!!

 鉄茨の毛に触れるだけでも怪我は必至の俺!!

 ミラージュステップでかわし、竜王剣ロゴスを内部ストレージから召喚!!

 そして繰り出されるのは真っ向を避けた、側面唐竹割りの≪爆真竜破斬≫!!

 ズシンと地面に亀裂が入る。なんという漫画的表現。……そして運動エネルギーを失った竜王剣ロゴスをストレージに戻す。実は、重たくて持っていられません。縦に振り下ろすことは出来ても、横に振り回すのは剣に振り回されるだけになります。

 後は≪真空ノ理≫を使った変わらない吸血衝動。かなりの勢いで血の噴水が……。

 だが、ここでその脅威は終わりはしない。真なる敵。茨ウリ坊達との死闘が始まるのだ!!

 速い!! 小さい!! チョコマカと!! やるじゃないか!! 痛い!! また、膝をザシュられた!!

「潰してやる!! ≪爆真竜破斬≫!! ≪爆真竜破斬≫!! ≪爆真竜破斬≫!! ≪爆真竜破斬≫!! ≪爆真竜破斬≫!! ≪爆真竜破斬≫!! 痛ああああああああいっ!!」

 親の茨猪より強いって、どういうことなのよ!? あと、脛ばっかりを狙うなっ!!


 竜王剣ロゴスは、宮廷魔術師のマリエルさんに頼みこんで造って貰った一品である。

 そこに聖具がある。なら、それを人造することを試みるのも人の常だ。物体自身に魔力を保存させる技術が存在した。ただ、元となる材料と職人によってその性質は大きく変わった。

 魔物が元々持っていた性質に近寄しい魔力波動しか留めて置けないのだ。

 マリエルさんが聖魔の称号を持つ理由は二つ。

 杖の聖具に認められたこと、もう一つは魔力波動を巧みに変えられたことだ。

 人には固有の魔力波動があり、同じ魔法に見えても実は微妙に違うものらしい。

 火、水、風、土、光、闇などのエレメントが考え出され、きっとそれに分類されるんだ!! と、いう考え方も過去の話。赤と緑と青らしいです。あとプラス極とマイナス極。……光の三原色ですか。磁石ですか。電気ですか。ファンタジーがまた一歩遠くに……。

 マリエルさんの性質は純白。なので、基本的にどんな魔法でも使える。

 アルエットの性質は謎。多分、可視広域を出ちゃった赤外線とか紫外線なんじゃないかな?

 おかげさまで、もっとも基礎とされる自分の色の光を出す事すらできないそうだ。

 マリエルさん曰く、アルエットの性質は馬鹿だそうです。剣聖さまも同じだというのに。


 魔法ついでに語ると、この世界には治癒魔法と医療魔法が存在する。

 治癒魔法はいわゆるゲーム的な治癒だ。医療魔法は、医学的な手法による治療行為だ。

 他者の魔法というものは、どうしても体内では異物になるらしい。魔法をかければ腕が生えてくる、そんな便利なものではないそうだ。魔法で造った水を飲むと腹を下したりもする。平気なのは本人だけなのだ。

 なので、魔法使いが作った水で水不足を解消というわけにもいかなかった。植物には毒水だ。

 付け加えれば、魔法使いが土木作業をすること自身は可能なのだが、まず、やりたがらない。

 その理由。魔法使いとはインテリジェンスな方々である。魔法を使えるだけの基礎教養を学んだ上で成り立つ人々なのだ。そして教育とは高額の商品。ゆえに貴族の次男や三男、継承権を持たない人々が進む道の一つが魔法使いであった。

 つまり、庶民とは違うのだよ庶民とは!! 文字も読めぬ庶民は黙って剣でも振ってろ!!


 軍の一兵卒から入るより、冒険者を経由しレベルを高めてから軍に就職する魔法使いも多い。

 軍や傭兵に一度入ってしまうと規律に縛られ、レベルアップの機会が失われてしまうからだ。

 レベルが高ければ良いというものではないが、高いに越したこともないものである。

 自分が仕えるならば、弱い将軍よりも強い将軍。弱い魔法使いよりも強い魔法使いが良い。

 さらに高級な貴族となると、捕縛してきた魔物を傍において屠殺するパワーレベリングもあるそうだ。断末魔の魔力、成長の波動は相手を選ばない。魔物さんが可哀想……。


 そんな訳なのだが、実家の威光が届くのも国内まで、国外には出たがりませんでした。

 なので、冒険者ギルドにたむろっているのは下の下から中の下までの魔法使いばかりです。

 実力は小さいが気位と態度は大きい、この国のお坊ちゃまにお嬢様ばかりなのです。はい。

 ……まぁ、冒険者気分を叩き直される、地獄の特訓が軍では待っているそうですが?


 こうして日々、この隣国からも茨猪を駆逐しつつある俺。茨猪といえば、もう俺の代名詞だ。

 茨猪。その硬く鋭い毛と牙を武器に農家の人達の苦労をムシャムシャする邪悪な魔獣である。

 強さのわりに危険度が低いのは、被害にあうのが概ね野菜と農家の人だけだからだ。

 だがな!! 農家の人にとっては死活問題なんだよ!! 突撃喰らうと本気で死ぬからね?

 茨猪と馬鹿にするお前等は野菜を食うな!! 俺は世界の野菜のために戦ってるんだよ!!


 モンスターの危険度についておかしいんじゃないかとティータ先生に尋ねたましたところ、

『魔物もレベルアップしますよ? 同じ魔物でも強さがまったく違いますよ? まさか、レベルや強さが全て一律だとか思っていたのですか? 人間でも天と地ほど違うのに?』

 はい、思ってました!! ゲーム感覚で思っておりました!!

 そして、今、気付いたぞ茨ウリ坊!! お前が強いのは母猪が先に死んでいたからだな!?

 おのれっ! 姑息な手をっ!! 俺の力を利用してレベルアップしていたとはなっ!!

 だが、母の残した最後の力である!! 存分に使うが良いわ!! 叩き潰してやるっ!!


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