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牡丹に桜に紅葉の赤(2)

「ごめんなさい。ボクにはあのユグドラシル大鹿さんへ刃を向けられませんでした」

「いえ、来て下さっただけでも感謝しています!! それで、この大量の茨猪の査定なのですが……随分と綺麗に仕留められていますね? 血抜きもされていて随分と助かります!!」

「はい、コイツは悪魔ですから。息子の仇ですから。それはもう容赦なく打ち倒しました!」

 話し相手になってくれているのは、東側の隣国にある冒険者ギルドの受付嬢セルティさん。どことはなしにティータ先生に似ているが、ミレッタさんと割る二をしたような、ボディの持ち主である。

 国がしっかりし過ぎていると冒険者ギルドは衰退し、国がボロボロだと冒険者ギルドは伸びるもの。日々、それだけ冒険者向けの細かな魔物退治の仕事が舞い込んでくるということだ。

 それは良いことなんだか、悪いことなんだか……。


 冒険者ギルドに設置された念話装置。この念話機能を使って隣国の冒険者ギルドに支援が要請された。この念話装置。無線のフリをした有線電話だ。中継念話機があり、そこを経由しなければ長距離念話は届かない。

 どうやって国中からの依頼を王都で集めているのかと思えば、こういう仕組みだった。

 そして、この念話代が高い。やけに高い。運営管理するのがその土地の領主さまだからだ。

 領地を一つ経由するごとに高くなっていく電報。それが念話連絡であった。世知辛いね。

 ちなみに文字数が多いなら、ペガサスライダー郵便局に頼んだ方がまだ安上がりだそうだ。


『おにーさん、おにーさん。一応、形だけでも応援に行ってきてください。また無茶をしてはいけませんよー? 相手はただ逃げているだけの可哀想な鹿さんですからねー? お肉も美味しくないそうですしー。倒しても、どうせ賞金は向こうのギルドの取り分ですからねー?』

 黄金の獣どのは健在でしたー。はーい、解りましたー。


 まぁ、本当に戦える冒険者を寄越しただけでも良いほうなのだろう。向こうもそれは重々承知の上だ。送って寄越されたのは戦えそうにない冒険者と……問題児ばかり。

 とにかく魔物を虐めたい奴。とにかく暴力を振るいたい奴。とにかくスリルを味わいたい奴。

 軍に置いても駄目。傭兵にしても駄目。だけど、やたらに好戦的な問題児ばかり……。

 勧誘される恐れがあるんだ。自分のギルドが抱えるエースを切り札として差し出す、そんな馬鹿なギルドは存在しない。俺は?


 現に集った冒険者達は……。おい、そこの日雇い仕事を奪うんじゃない!!

 その清掃業の人足は俺の仕事だぞ!! 煙突掃除、煙突掃除はないかなー?

 今度こそ存分に嫌がらせしてやるんだー!! 暖炉は新品が良いですよねー!!

 ティータ先生? ボクは、この人達の仲間で良いですよね? 問題児とは違いますよね?


 ユグドラシル大鹿が走り回った。ならば今後、この国での冒険者需要は高くなる一方だ。そこで――――うちの問題児達を引き取って? おねがーい。

 ……実に世知辛い世の中でした。


 冒険者の分類は大まかに分けて三つになる。

 本業を見つけるまでの日雇い人足の仕事を求める、都にやってきたおのぼりさん。

 兵士や傭兵として自分を高く売るため、レベルアップの魔物退治に勤しむ武者修行さん。

 あと馬鹿。

 ――――ティータ先生、ボクはどの分類ですかー? どれに分類されているんですかー?


 しかし、会話が通じる。ただそれだけでもセルティさんの好感度がアップした!!

 それは比較対照が悪すぎたからだ!!

 カウンター越しにいきなりギルド受付嬢に迫る冒険者。男性経験の数を尋ねてくる冒険者。一晩幾らと尋ねる冒険者。なんて不憫なギルド受付嬢……。

 あ、やっぱりユグドラシル大鹿さんを退治してこようかな?

 キャー素敵ー抱いてー!! ってならないかなぁ?


 昔々、海の男には港の数だけ女が居た。

 なら、ギルドの数だけ女が居ても良いんじゃないかな?

 一夫多妻というのも形は色々だ。一箇所に集めたハーレム方式。各地に分散させた現地妻方式。……どちらの維持が楽であろうか? 飛行できる身の俺としては悩ましい問題であった。

 ちなみに九股までは許されるらしい、九尾だけに。……ただし、『根っこはわしじゃぞ?』と、釘を刺されました。

 くぅぅ!! 縛らない、故に束縛される。このレイジ、感動です!!


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