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勇者のバックストーリー<注・ギブアップ>  作者: 髙田田
赤い糸より確かな質量、それは鞄でした
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十二歳のギルドマスター(3)

 本日は、あぐらの上のメイメイさまが、おかんむりでした。

 キマイラ退治のことでぷりぷりと、頬っぺたを膨らませながらのお仕置き中でした。

「そのやり方が気に入らぬのじゃ! 男らしくないのじゃ!!」

「ホッペのツネツネが痛いのです」

 ずっとホッペを抓られっぱなしで、レイジは泣きそうです。

 これは、嬉し泣き? 悲し泣き? ――――今、いけない扉が開かれそうです!!

「なぜ天空の王……ちょっと、待つが良いぞ? ちょっと待つのじゃぞ?」

 天空の王者さんを地中の王者さんにした件は、メイメイさまも気に入られたらしい。

 ちなみに地中から首だけ出していた地中の王者さんは、今日も元気に天空で吼えています。

「天空の王者さんがどうかしましたかー?」

「言うでないと!! くふっ! くふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふっ!!」

 こうなると、もう思い出し笑いが止まらない。だが、ツネツネは止めてくれないようだ。

 でも、これで反論も出来ません。なので、一方的に俺の言い分を聞いてもらいましょう。

「キマイラと正々堂々と戦わなかったのはですねー。キマイラを綺麗な形で仕留めたかったからなんですよー。ほら、後で演劇を作るとき剥製に傷があると自由な傷跡を作れませんからねー? あとから色々傷つけて、芝居に沿った激戦の痕跡を作らなきゃなりませんからねー?」

 ツネツネが、ちょっとだけ弱くなった。

 メイメイさまの金色の瞳が、俺の顔を上目遣いで覗いている……その角度は反則ですよ!?

「金貨三百枚、銀貨で一万五千枚。それはとても大きな金額です。それをランダル男爵に気持ちよく支払って頂くためのサービスでした。それに、追加で金貨二十枚。村の人達に配らなければ助けられませんでした。相場は三百。でも、もう少し必要だったんです。だから街を練り歩き、噂になるように恥ずかしい思いまでして務めて……これでも我慢したんですよー?」

 ツネツネがフニフニに。たてたてよこよこ。まーるまる。

 俺のホッペは御餅ですか? メイメイさまは喉に詰まらせちゃ駄目ですよ?

「キマイラを倒した。手元には銀貨五十枚。それを渡してティータちゃんと仲直り。そして村は滅んだ。ミレッタさんは独身のまま。……嫌ですよ。ボクは欲張りなのですよー。愛するものの為に立つ、それが最善の最善とメイメイさまは仰いましたが――――ついでに他の人を助けてもいいんじゃないですか? ついでに他の人が幸せになってもいいんじゃないですか? ボクなりに考えた最善ですよー」

 フニフニが撫で撫でになった。あぁ、ちっちゃくて柔らかくて優しい手の平だ。

 笑いがやんで、金色の瞳が俺の瞳のなかを覗き込む。俺のなかに何を見ているんだろう?

 俺の黒い瞳と、メイメイさまの金色の瞳が重なりあい続け、

「くふふっ! 堪らぬものなのじゃな。少年が男になる瞬間というものは――――」

 ――――そして瞳だけでなく、唇が柔らかく重なって……、

「唾をつけたのは、ワシが一番じゃからの? くふふっ!!」

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