勇者のバックストーリー(4)
冒険者の夢見亭。冒険者の夢みたい。
冒険者が見る夢って、何なんだろうか? 名声? 財産? 権力? 暴力? お姫様?
人それぞれか。……人それぞれだな。
「おにーさん! いらっしゃいませー! 本日はどのような御用件でしょうかー?」
「賞金首の手配書。あるいは冒険者っぽい仕事を一つ」
「おにーさんは、もう冒険者じゃありませんから、ギルドの依頼は受けられませんよー?」
「賞金首の手配書。あるいは冒険者っぽい仕事を一つ」
「おにーさんは、もう冒険者じゃありませんから、ギルドの依頼は受けられませんよー?」
「賞金首の手配書。あるいは冒険者っぽい仕事を一つ」
「おにーさんは、もう冒険者じゃありませんから、ギルドの依頼は受けられませんよー?」
「賞金首の手配書。あるいは冒険者っぽい仕事を一つ」
「おにーさんは、もう冒険者じゃありませんから、ギルドの依頼は受けられませんよー?」
「賞金首の手配書。あるいは冒険者っぽい仕事を一つ」
「おにーさんは、もう冒険者じゃありませんから、ギルドの依頼は受けられませんよー?」
「賞金首の手配書。あるいは冒険者っぽい仕事を一つ」
「いい加減にしてください!! ティータの話を聞いていないのですか!!」
「賞金首の手配書。あるいは冒険者っぽい仕事を一つ」
怖いねー、無限ループは。いいえの選択肢なんて与えてやらないよ?
「…………蟲の森、その近辺にキマイラが住み着きました。これの退治。報酬は銀貨で二百」
「ギルドの取り分は?」
「全てですー。全額ですー。無償奉仕ですー。あ、これでお仕事じゃないですねー? これなら依頼にもならないので大丈夫ですねー」
「解った。それじゃあ詳細を頼む」
「――――ッッ!! また、ティータ達を馬鹿にしてっ!!」
「解った。それじゃあ詳細を頼む」
感情を殺した無表情。でも、翠色の瞳だけは複雑な色をしていた。
「…………蟲の森近辺の村にキマイラがあらわれて困ってるんですよー。でもー、その住処が蟲の森の向こうの山なので、だーれも辿り着けないんですよねー。蟲の森にはペンデュラムスパイダー、ジャイアントハニービー、グレーターブロードサッカー等の危険なムシムシさんが一杯なんですよー? キマイラも小さなドラゴンと呼ばれるほどの魔獣で、単体でも倒すなら金貨で三百枚は欲しいところですねー? でも、銀貨二百枚。金貨なら四枚でお願いしてくるんですから、その村の人達はよっぽど物を知らない人達なんでしょうねー? まるで、おにーさんみたいですねー。相場を無視されると困りますよねー」
まぁ、そうだ。相場を無視すれば首を吊る人間が出てくる世知辛い世の中だ。
でも、この場合は相場を無視しなければキマイラに喰われる人間が出てくる世知辛い世の中だ。
「それでも、逃げ場の無い村の人達は銀貨二百枚でお願いするしかないんですよねー。あー、ここにちょうど相場を無視して働く、かなりのお馬鹿さんが居ましたー。もしかして、引き受けてくれるかもしれませんねー?」
「引き受けた。詳細を頼む」
無表情が一変、ティータちゃんらしくない苛立ちに歯を食いしばった表情。
あまり、見たくないな。見るなら笑える顔が良い。それがブサイク顔でもね?
「では、どれくらい危険なのかー、このティータがちゃーんと教えてあげますねー?」
やっぱりティータちゃんはティータちゃんだ。
優しいね。怖がらせて断って欲しいんでしょ? でも、断ってあげないよ?