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20、新しいものを否定すること

 ふう、とりあえずお客さんの足も落ち付いてきたなあ……。

 あんまり喜んじゃいけないんですけどね。でも、今日の上がりノルマはしっかり達成してますからね、今日はこれ以降の時間はおまけ同然! お客さんが来ればそりゃもちろんきっちりと応対はしますが、あえて呼び込む必要はありません! 

 というわけで、ちょいと秘蔵のお酒でも飲みましょうかね。

 よし、「久保田」!

 え、今、バーのマスターなのに日本酒かよ! ってツッコミがどこかから聞こえたぞ! そのツッコミ向けに話しますが、いいんです。バーのマスターなんていうのはあくまで世を忍ぶ仮の姿なのですから。

 ふう……。

 さて、ここからは独り言です。ちょっと、恥ずかしい話をしましょうかね。ロートルのちょっとした昔話です。


 新しいもの。それは、いかなる分野においても毎日のように生まれ、そして淘汰されています。それは見えづらいですが、確かに底辺の方から、中間層から、あるいはトップから、ポコポコと沸いています。逆に、そういう動きがなくなってしまった時、その分野は死に体になり、やがて壊死に至るでしょう。でも、そうやって我々の前に現れた「新しいもの」というのは、ともすると不格好で支離滅裂、もしかしたらあなたの常識の裏をかくようなものだったりします。また、余りの稚拙さ、バカバカしさに唾棄したくなるような悪臭を放っている場合もあります。

 小説の世界、とくにWEB小説の世界でも同様です。新しいものは常に生まれています。

 今日のお話は、そういう「新しいもの」に対する向き合い方についてです。

 「新しいもの」というのは、本当に不格好でどうしようもないほどヘンテコです。それはそうです。新しいものは常に、洗練化を経ずにその「面白いものである可能性」を一本槍にして出てきてしまうものだからです。

 でも、それが面白いか否かというのが曲者です。

 実は、丸屋も昔それで痛い目に遭ったことがあります。

 今では超がつくベストセラー小説家さん(あえて名前は伏せます)の出始めのころ、その内容について丸屋は「こんなの○○小説じゃない!」とフンガイし、本を投げ捨てたことがありました。でも、今やこの作者さんはそのジャンルにおいて売れっ子になっています。そして、その方の書かれる世界はこの方の独壇場と化しているのです。

 まあ、恥をかいてしまったわけですね。

 よく、アマチュアの作者の間で、「あの作品は駄目だ」とか、「あんなの小説じゃない」とかいう議論が行なわれているのを見かけますが、あんまりアレを大々的にやってしまうと、とんでもない恥をかいてしまうことがあるんですね。

 たとえば、ケータイ小説だってその一つですよね。

 出始めのころは散々バカにされていましたが(もっとも、バカにされる理由のある作品も多かったんですが)、今ではしっかりと独立した一つのジャンルになっています。

 そもそも、WEB小説の世界だって最初はバカにされていました。「ああいうところで小説を発表している人たちはプロの小説家になることはない」ってプロの小説家さんたちも言っていましたが、今となっては笑い話です。もちろんジャンルにもよりますが、今ではWEB小説の作者さんたちが、編集さんに見出されてデビュー、なんてこともけっこうあると聞きます。それに、新しい出版業態である電子書籍とも相性がいいこともあって、そっち方面から頭角を現す人なんかもいらっしゃるようです。それに、「世界の中心で愛を叫ぶ」などで知られる片山恭一さんの登場と御活躍によって、今では「WEB小説の世界からはプロの小説家は生まれない」なんて口が裂けても言えない状況になっています。

 もちろん、出てきたものすべてを肯定することなんて出来ません。かくいう丸屋だって、未だに先に紹介した某小説家さんのスタンスはあまり好きではありません。でも、「新しいものを感知できない」ことと、「それが好き、あるいは嫌いである」というのは全くの別問題です。

 新しいものを感知できる力。これも、小説家が持っておく必要のある力です。きっと読者さんも、小説家に対してそういう神秘的なものを求めています。

 丸屋としては、ぶっちゃけ、「新しいものに対しては発言を慎む」というのが一番の正解のような気がしています。もちろん、自分の中で目の前にあるものがどういう価値を持つものなのかをジャッジする必要はあるでしょうが、あえてその成果を表に出すことはない、そう考えるものです。

 そして、もしあなたが、ある「新しいもの」に対して何かを言いたいのならば、それこそ慎重を期して行なって下さい。恥をかくだけならばあなたのプライドが傷つくだけでいいですが、場合によると、将来のあなたの名前が傷つく場合だってありますからね。

 自分の意見を世の中に放つってことは、その意見の信ぴょう性とか真実性によって、あなたそのものが評価されることに等しいのです。なので、なにかを発信する時には、色々と気をつけた方がベターです。


 まあ、長い間創作をやっていると、こういう失敗ってよくありますよねー。

 あはははは。

 え、もしかして、そんな経験があったんじゃないか、ですって?

 ええ、それはもう沢山ありますよ。でもね、人間っていうのはそういう語りたくない過去に対する対処法を発見しているんですよ。

 皆さん、お分かりですね。では御一緒に。

 はいはい「黒歴史」!

 そして、古来より、そういった黒歴史の処理の仕方は伝わっています。

 そう。お酒を飲んで、この胸の痛みをやり過ごすのであります。


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