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1、当たり前にして出来そうで出来ないこと

 おやおや、早速お酒に呑まれてるお客さんがいますね。どうしました? 吐くならトイレでお願いしますね。

 え? 「小説家になりたいんだけど一向に文章が上手くならない、死にたい」ですって? そりゃあ穏やかではありませんね。あ、でも最近の日本語の用法だと、『死にたい』って、『ゆっくり休みたい』程度の意味に成り下がってますから大丈夫ですよねきっと。

 ときにお客さん、小説、書いてます? 毎日。

 え、気の向いた時にしか書いてない?

 あー、なるほどぉ。お客さんの問題点が見えてきましたよ。


 小説を書くのが上手くなりたいのなら、毎日書く! これが一番効きます。

 っていうか、小説について悩んでいる書き手さんのほとんどが、実はこれを実践するだけで解決しちゃうんですね。

 ちなみに丸屋は毎日小説を書いています。その経験からお話ししますと、毎日小説を書くことによって、脳に「小説回路」とでも言うべき回路が出来上がります。小説を書くのが上手い人っていうのは、頭の中にこの回路を持っている人です。そして、この回路を持っていると色んな点で有利です。

 たとえばこの回路を持っていることによって、オンオフの切り替えが簡単に出来るようになります。また、アイデア練りの速度や執筆スピードもメキメキと上がっていきます。さらには、文章力そのものも、倍率ドン、さらに倍! の勢いでまさしくうなぎ上りになっていきます。それこそですね、構想一時間、執筆一時間でそれなりのものが書けるようになっちゃうんですよ。

 便利じゃないか、「小説回路」。

 でも、この「小説回路」というのが曲者なんです。

 メンテナンスが面倒なんですよ。

 使わないと、少しずつ「小説回路」は錆びついてきちゃいます。なので、毎日小説を書いてやってその回路を動かさなくてはなりません。

 でも、中には、毎日が仕事に追われていて、毎日小説に費やす時間なんてないよ! という人もいるかもしれません。

 そんな丸屋がオススメするのは、ツイッター小説とか200文字小説みたいな短い小説を利用することです。

 ツイッター小説というのは、140文字の規定の中で一つの物語を作るもので、200文字小説というのは「小説家になろう」に一定数の愛好家がいる、やはり200文字の規定で物語をつくるアレです。あれ、「あんなん小説じゃないよ」とか、「ショートコントのネタじゃねえか」とか「あんなんずっと続けていたらネタ切れするよな、馬鹿だよなあ」とか言う人がいるんですが、そういう人に限って毎日小説を書いていない人だったりします。断言しちゃいましたけど、きっとそうです。

 ツイッター小説にしても200文字小説にしても、書いてみるとけっこう難しいものです。ネタの選択(掌編よりもさらに小さなネタを用意しなくてはならない)とか、言い回しの研究とか、規定数に文字数を収める作業とか。それに何より、この「小さな小説」群は、一日で、構想、執筆、推敲まで出来てしまう、恐るべきインスタント小説なのです。

 たとえばですよ、毎日が忙しくてとてもじゃないけど小説が書けないという人は、働いている/学校に行っている日にはふとした時間の合間にでもケータイでツイッター小説とか200文字小説を書いて、休みの日にはパソコンを前に長編小説をまとめて書く、みたいなことをすればいいんじゃないでしょうか。

 でも、実はこのやり方も、緊急避難的なやり方です。

 本当は、毎日一時間は絶対に書く! という風に決めた方が、絶対にいいです。

 これは二つほど意味があります。

 まずは、小説を書く、という行為を日々の日課に固定することの意味です。歯を磨くように小説を書く、お風呂に入るように小説を書く。そういう風にしていって、毎日の日課にして慣れてしまえば、案外その生活のリズムの中に組み込まれていくようになります。

 そして、あともう一つは、あなたがプロになった時のためです。

 編集の方(というか出版社)は必ず、「締め切りをいつにしますか」と聞いてきます。向こうから一方的に締め切りを切ってくることも多いと聞きますが。とにかく、締め切りの交渉がどこかで起こるんです。で、その時に、自分の文章作成能力をしっかり把握しておかないと大変なことになります。休日にしか小説を書かない人は、「ええと、休みの日がこれだけあるから……」という風に決めてしまうかも知れませんが、現代人っていうのは忙しいものです。やれ取引先との接待ゴルフだあ、恋人がどこかに連れて行けだあ、友人の結婚式だあ、家族サービスだあ、そんなこんなで休日が潰れてしまい締め切りをアウトしてしまったら……。社会人の方は痛いほどご存じなことかと思いますが、取引先の締め切りが守れないなんていうのは論外でしょう? とにかくですね、締め切りを守るためには、毎日同じ分量を書けるだけの力を持っていた方が有利です。「毎日一時間は確実に書けるので、最悪でも大体このくらいに書き上がる見通しです」とクライアントに言える、カッコいい小説家になれるんですね。(欲を言えば、一時間でどのくらいの文字数を書けるのかを安定化した方がこういうときに楽ですが、そればっかりはその作者さんのやり方次第なので、そこまでは申しません。)

 さて、この稿でのまとめです。

①「小説回路」を作る

②「小説回路」を錆びさせないために、毎日小説を書く

③出来れば、小説を書くということを日課にする

 

 お客さん、こんな感じですけど、いかがですか?

 え? 「吐き気がしてきた」ですって? だからトイレに行ってくださいって。

 は? ふむふむ? 「お前の話に吐き気がしてきた」ですって? でもこれ、上手い人は皆やってます。千里の道も一歩から。努力に勝る処方箋なし。それがこの世の真理というものです。

 え? じゃあお前は今日も小説を書くのか、ですって?

 ああすいません、今日はオフなんですよー、てへぺろ。


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