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Death Eater  作者: 玲瓏
4/5

第四話 【非日常】

今回は少し短いです。


「キャ!?」


 私はあまりの揺れに立っていれなくなる。


「なんだこりゃ!」


 飛山もバランスを崩してナイフを落とした。


「二人とも、じっとしていろ」


 唯一、彼方君だけは何事もないように仁王立ちし、そして屋上のドアを見つめている。

 この大きな地震にも動じず、命の危険にも動じない。

 彼は何者なんだろうか…。


「女、男」


 彼方君が私達に話しかける。

 って、もう少し良い呼び方ないの…。


「明、俺は飛山(ヒヤマ) (アキラ)だ」


 飛山にですら、その呼び方に反感を覚えたらしく、自分の名を名乗った。


「私は、やよ」


「明、女、これから地獄を見ると思っとけ」


 無視ですね…。


「お前、それはどういう意味だ?」


 飛山改め、明君が彼方君を指差した。


「彼方。閻魔 彼方だ。

 地獄の意味は…」


 すぐ分かる…とでも言いたかったのだろうか。

 ……。


「来たぞ…。明、女、絶対にそこから動くなよ」


 彼方君は未だ目を細めて屋上のドアを見つめている。いや…今はもうドアから出てきた"人"を見つめていた。


「誰だ?」


 明君がドスを聞かせた声で問う。


「明、見えるのか?」


 彼方君が不思議な事を言ったのは分かる。

 だけど、私の脳は理解出来ていない。

 私の脳は…いや、私の体、私のすべてが目の前に現れた"モノ"でいっぱいだった。

 "ソレ"はゆっくり近づいてきて、月の明かりで姿が目に映る。


「おい、マジかよ…」


 明君の呟きと、そして"ソレ"の動く音が辺りを支配する。


ヒタヒタ…ヒタヒタ…


 あいつだ…。

 朝も目の前に出てきた、血まみれの男。

 そいつは口に水を含んだようにガラガラと喋った。


「ギ…ギシキハ…チュ…チュウダンヲ…ユ…ユルサレナイ」


 聞いてるだけで不愉快な声…そして私達に恐怖を与える声。


「儀式…"死合い"の事か?」


 気のせいだろうか、さすがの明君の声も震えて聞こえた。


「無駄だよ、明。奴らには聞こえてないよ」


 "奴ら"?

 彼方君は…。

 何か知っている…?


 "男"は足を引きずるように、ゆっくりと近付いてくる。


「奴らは伝えるだけ、聞く耳を持たないのさ」


 更に彼方君は目を瞑ってブツブツと何かを呟き始めた。

 そしてついに明君は"男"のスピードと同じスピードで後ずさりを始める。


「おい、彼方。聞こえてないのは分かった。で、どうすればいい!?」


 明君と私が横に並んだ。


「おい、彼方!!」


 明君は私の前に手を出して強制的に自分と同じように下がるようにした。

 一応守ってくれてるのだろうか。


「ギ…ギシキハ…………ユ…ユルサレナイ」


「お前に許してもらうつもりはねぇよ」


 閃光…。

 そして鮮紅。


 私の前を"黒"が駆け抜け、"紅"が宙を舞った。


「女、明。地獄が始まるぞ」


 "男"は倒れ、その背後から彼方君が現れる。


「……"血"……いや…………」


 私は突然目の前の"人"から"血"が吹き出し、"人"が倒れた事で頭がパニックになった。


「人が…そんな…」


 彼方君が私に近づく。

 いや、彼は"人"殺しだ。


「女、落ち着け。さっきのは…」


「いや、お願い…近付かないで…」


 彼方君の血に染まった手から必死に逃げた。


「オンナ!オレノイウコトヲ」


 ダメだ…。

 何を言ってるかも理解できない…。

 気分が悪い…。

 私は膝から崩れ落ち、嘔吐して意識を失った。




 私の目の前に何かが立っている。

 人なのか、そもそも生物なのかも分からない。

 姿はボヤけてて、目を細めても、その正体は分からなかった。

 だけど、こう言ってるのは分かる。


「"血"の呪いは"血"で解かれ、"骨"の呪いは"骨"で解かれる。"一族"の呪いは…」


 そこで"ソイツ"の言葉は途切れた。

 私は意味も分からないのに、言葉の続きが気になってたまらなかった。




「…じゃあ…だっていうのか!?」


 私の耳にはまた別な人物の声が入ってきた。


「明、静かにしろ。"奴ら"に気付かれちまう」


 これは…そうだ。

 明君と彼方君の声だ。

 私は痛む頭を押さえながら体を起こす。暗すぎてよく見えないが…保健室?私はいつの間にか保健室のベッドで寝ていたようだ。


「女、起きたか」


 彼方君が私が起きたことに気付き隣に座ると、目を合わせ、手を取った。


 って、えっ!?


「ちょっと彼方君!?」


「大声を出すな。"奴ら"に気付かれる」


 "奴ら"…?


 そうだ!!


 明君と彼方君が"死合い"を始めて、彼方君が明君に何かを聞こうとした。

 その時、大きな地震が起こって、屋上のドアが開いて、そしたら…。


「おい、女!女!!」


 気付くと彼方君が私の肩を揺すっていた。


「…あ。私…」


「良いか、よく聞けよ」


 放心状態の私に彼方君は諭すように喋る。


「俺たちは今、学校に閉じ込められてる。"奴ら"のせいでな」


 彼方君は私の目を見つめて、そして深く目を閉じ、ゆっくり開けた。


「お前等は必ず守ってやる」


 彼方君の目は"金色"に輝いていて、


「"Death Eater(デスイーター)"の名において」


 手には大きな十字架を持っていた。

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