帰るべき場所
魔女エリー・ロードは王太子にかけた魔法に異変を感じたため、現場に駆けつけた。
その先にいたのが、世界樹の大精霊メルヴ・トゥリーと、家猫妖精グリージャだったので驚いたという。
グリージャの結界がある影響で王太子に接近できなかったのだが、そんな彼女に交渉を持ちかけたのが、メルヴ・トゥリーだった。
メルヴ・トゥリーの葉っぱをあげる代わりに、王太子にかかった魔法を解いてくれないかと言ってきたのである。
世界樹の葉は魔女エリー・ロードが喉から手が出るほど欲していたアイテムだった。
彼女はアンハルト侯爵の愛人業と、ランゲンブルグ公爵との魔女契約をあっさり手放し、メルヴ・トゥリーの願いを叶えたのである。
その後も、魔女エリー・ロードは「おまけだ」と言って婚約披露パーティーに登場するという演出にも参加してくれたのだ。
おかげで王太子から胸がスッとした、と感謝されたという。
ディディエの暗殺未遂事件のすべては、ランゲンブルグ公爵が犯人だった。
今後、すべての事件を詳しく調査し、しかるべき刑で裁かれるという。
アンハルト侯爵、ビュッセル伯爵、ゴーン伯爵も同じように裁判にかけられ、刑が執行されるようだ。
当然、彼らの爵位と財産は国へ返上される。
ディディエは国王陛下と王太子に、ゾフィアとアルマ、エマ、ローズの娘達に対し、財産の一部を継承させるように頼み込む。
それが認められ、生涯暮らしていけるだけの財産を得ることができたようだ。
さらにリードが彼女らに、希望があれば結婚相手を斡旋すると提案した。
国内の貴族に留まらず、他国にも範囲を広げて探すと言ったのだ。
しかしながら、皆首を縦に振らず、当初の予定だった通りクリスタリザーシーに移住することを望んだのだ。
そんなわけで、マリエッタはディディエとリードだけでなく、ゾフィア、アルマ、エマ、ローズと共にクリスタリザーシーの地へ渡ることとなった。
◇◇◇
二ヶ月ぶりに、マリエッタはクリスタリザーシーの森へ戻った。
すっかり雪が解け、若葉が芽吹く春の景色となっている。
マリエッタはメルヴ・トゥリーの転移魔法で庭に下り立つと、森の仲間達が出迎えてくれた。
『魔女さん、おかえりなさい!!』
『待ってた!!』
『嬉しい!!』
「みんな、ただいま!!」
腕を広げると、みんなが駆けよってくれる。
喜びをその身をもって感じることができた。
ふと、視線の先にリスの兄弟妹の兄がぽつんといることに気付いた。
マリエッタは兄のもとに駆けより、しゃがみ込んで声をかける。
「ただいま」
『やっと帰ってきたのかよ。もう戻ってこないのかと思ったぞ!』
「遅くなって、ごめんなさいね」
『ふん!』
そんな態度を見せる兄の様子を見た弟と妹が、これまでの様子を報告してくれた。
『お兄ちゃん、頑張って魔女さんのお庭を守っていたよ』
『毎日きていたんだから!』
『ちょっ、お前ら!』
『本当のことだもん!』
『だもん!』
マリエッタは立ち上がって、庭を見渡す。
「庭も、きれいにしてくれていたのね!」
『そうだよ!』
『きれいなお花が咲いたんだ』
リスの弟と妹が、一つ一つ報告してくれた。
この二ヶ月間、いろいろあったが、自分の本当の居場所はここなのだと感じることができた。
グリージャが家の中から声をかける。
『マリエッタ! 家が埃だらけですわよ!』
「まあ大変! お掃除しなくては!」
マリエッタは箒を握り、気合いを入れる。
森での楽しくも忙しい日々が始まりそうな予感だった。




