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嫌われ魔女と体が入れ替わったけれど、私は今日も元気に暮らしています!  作者: 江本マシメサ
第二部・三章 誰が犯人なのか?

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王太子に会いに

「王太子殿下に、ですか?」

「ええ」


 誰が何を聞いても口を割らないという王太子である。

 会っても時間の無駄ではないのか、とリードに言われてしまった。


「それでも一度お会いして、王太子殿下が何を考えていらっしゃるのか、お聞きしたいの。ディー様、お願い」


 リードの言うとおり、時間の無駄になるのかもしれない。

 それでも、マリエッタは王太子と会ってみたいと思ったのだ。


「わかりました。一度だけ、面会を取り次ぐよう、頼んでみましょう」

「ディディエ、いいのか?」

「はい。マリエッタはこう見えて、言い出したら聞かない性格ですので」

「ディー様、ありがとう!」


 そんなわけで、マリエッタはディディエと共に、王太子と会うこととなった。


 ◇◇◇


 面会が叶ったのは三日後だった。

 マリエッタは朝からディディエと共に、差し入れを作ることとなる。


「本当に、王太子殿下に持って行く差し入れを作るのですね」

「ええ!」


 ディディエが晩餐会であったときよりもげっそりしていたという話を聞いて、マリエッタは差し入れを持って行こうと思いついたのである。

 宿にパンを用意してもらい、固形ジャムを使ったジャムサンドを作ることにした。

 ディディエは慣れない手つきで固形ジャムをパンに挟んでカットしていく。

 マリエッタはそんなディディエの補助をしつつ、調理を共にする。

 もしかしたら甘い物が苦手かもしれないと思い、追加でハムサンドやキュウリサンドも作ってみた。

 食べやすいよう、一つ一つワックスペーパーでキャンディ包みにして、バスケットに詰め込んだ。

 他、リンゴやチーズ、チョコレート、キャンディなどの、軽食も添えておく。


「王太子殿下は受け取ってくれるでしょうか?」

「食べ物を押しつけるのは得意なの! ディー様も初めて会ったとき、わたくしの料理をうっかり食べてくれたでしょう?」

「そうでしたね」


 ディディエが笑ってくれたので、マリエッタは内心安堵する。

 王太子との面会がディディエにとって心の負担になっていないか、心配だったのだ。

 こうして笑ってくれている間は大丈夫なのだろう。

 あとは、王太子とディディエの間にピリピリとした空気が流れないことを祈るばかりだった。


 時間となり、宿を出ようとした瞬間、グリージャとメルヴ・トゥリーがやってくる。


『心配だから、私もついていきますわ』

「グリージャ、いいの?」

『ええ』

『メルヴ・トゥリーモ!』

「ふたりとも、ありがとう!」


 グリージャはマリエッタの影に隠れ、メルヴ・トゥリーはディディエと手を繋ぐ。

 リードが見送りにやってきてくれた。


「ディディエ、マリエッタさん、どうか気をつけて」

「わかっています」

「リード様、行ってくるわ!」


 今回、リードの同行はディディエが断ったという。

 なんでもディディエ曰く、王太子ともっとも険悪なのがリードなので、今回は宿で待っているようにお願いしたらしい。

 馬車に乗って王宮へ向かう。

 王太子の秘書官がディディエとマリエッタを迎えにやってきて、王太子が軟禁されている場所へ案内してくれた。


「こちらです」


 秘書官は三十代半ばくらいで、モローと名乗る。

 今回の面会を取り持ってくれた人物で、王太子の傍に仕える者の中でも中立的な立場にいるようだ。

 転移陣を使って移動した先は、塔の高い位置だった。

 そこに、王太子が軟禁状態にある。


「王太子殿下、ディディエ様と婚約者であるマリエッタ様をお連れしました」


 鉄格子に阻まれた空間の先に、王太子が一人がけのソファに座っていた。

 ディディエが言っていたように、晩餐会で会ったときよりもげっそりとした印象がある。

 マリエッタはスカートの裾を持って、頭を下げた。


「……」


 王太子はマリエッタを前にしても、話そうとしない。

 長い戦いになると思ったマリエッタは、メルヴ・トゥリーと一緒に持参した大判の敷物を広げ始める。

 その行動にギョッとしたのは、ディディエだけではなかった。

 王太子はマリエッタの行動が理解できなかったからか、話しかけてきた。


「おい、何をするつもりだ?」

「ピクニックをしようと思いまして」

「なんだと!?」


 マリエッタは非難するような王太子の言葉を気にもせずに、バスケットの中からサンドイッチや水筒などを出して広げ始めた。


「さあ、ディディエ様も、モロー秘書官もお座りになって」


 水筒の中に入れた薬草茶をカップに注ぎつつ、マリエッタは腰を下ろすように勧めた。

 しかしながら、勧められたディディエとモローは戸惑う顔をするばかりである。


「グリージャも食べるかしら?」

『ええ、いただきますわ』


 マリエッタの影から猫が出てきたので、王太子は「なんだ、その猫は」と問いかけてくる。


「この子はわたくしの親友、グリージャ」

「その隣にいる葉っぱはなんなのだ?」

「世界樹の大精霊、メルヴ・トゥリーです」


 王太子は魔法に精通しているからか、グリージャやメルヴ・トゥリーの存在が気になったらしい。


「今日はディー様が、王太子殿下のためにサンドイッチを作ってきました」

「毒入りのサンドイッチか?」


 嫌味たっぷりに聞かれて、マリエッタは思わず顔を上げる。

 王太子は恨みがこもった眼差しでマリエッタを見下ろしていた。

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