力を合わせて
ゾフィアは晩餐会で起こった事件について打ち明ける。
すると、アルマにエマ、ローズは驚いた表情を浮かべた。
それも無理はない。ディディエの毒殺未遂事件については、外部に漏れないように徹底的に隠されていたから。
「もっとも怪しいとされているのは、以前よりディディエ様の命を狙っていた王太子殿下だったらしいの」
「そ、そんな事件があったなんて」
「酷い……」
「驚きました」
ただ、本当に犯人は王太子なのか?
「ディディエ様が倒れたとき、王太子殿下はたいそう驚かれていたご様子だったみたいなの。それで、本当に犯人は王太子殿下なのか、って疑問に思って、マリエッタと調査し始めたのよ」
ディディエは晩餐会に招かれた招待客である、王太子、アンハルト侯爵、ビュッセル伯爵、ゴーン伯爵が持ってきたワインを飲んで倒れた。
「同じ年代、銘柄のワインを持ってきたそうよ。示し合わせたように、おかしいでしょう?」
「でしたら、その中の誰かが犯人、ということですの?」
「私のお父様も……」
ゾフィアは暗い表情を浮かべながら、自らの父親であるランゲンブルグ公爵も疑うべきだと口にする。
「お父様もディディエ様と同じワインを口にしているけれど、だからと言って暗殺に加担していないとは言い切れないから」
事件当日、それぞれの父親の行動について話を聞くこととなる。
「アルマ嬢の父君は?」
「帰宅しませんでした。いつものことでしたので、誰も気にも留めませんでした」
いつものように愛人と共に別邸で夜を過ごしたのだろう、とアルマは思っていたという。
続いてエマに話を聞く。
「父上は……一度帰宅しましたが、何やらバタバタしていて、再度出かけました。帰ってきたのは、朝方だと」
何やら不審な行動を取っていたらしい。
最後にローズからゴーン伯爵の行動について聞くこととなる。
「私の父も、何か事件が起こったから現場で指揮を執るというメッセージが母宛に届いて、その日の晩は帰りませんでした。父の顔を見たのは、翌日の夜だったかと」
これもよくあることだったため、ローズは気にも留めず、どこかで事件があったのだ程度にしか思っていなかったようだ。
三人から事件当日の話を聞いても、何やら怪しい動きをしているように思える。
最後に、ゾフィアも父親であるランゲンブルグ公爵の行動について振り返った。
「お父様はディディエ様を酷く心配されていたわ。家令に毒に詳しい医者はいないか探させていたの」
不審な行動はなかったように思っていたらしい。
「今、探偵に依頼して、アンハルト侯爵、ビュッセル伯爵、ゴーン伯爵について調査させているの。お父様についても、調べさせるようにするわ」
アルマやエマ、ローズも手がかりがないか父親の書斎などを調べてくれるという。
調査に協力してくれるという彼女らを、マリエッタは心配して声をかけた。
「無理はしないで。危険だと思ったらすぐに手を引くのよ」
アルマは強い眼差しを向けながら頷いた。
「ええ、わかっております」
エマは目を伏せつつも、はっきり物申す。
「可能な限り、協力は惜しみません」
ローズは瞳をキラキラさせながら、自らの気持ちを口にした。
「探偵ごっこみたいで、なんだかワクワクしてきました」
彼女達は三人で旅行に行くと言って家を出てきたようだ。
けれども予定が変更になったと言って、帰宅するという。
ゾフィアも家に戻って、父親の行動について改めて調査してくれるようだ。
また後日、こうして集まることを約束してくれた。
これにて、お茶会は解散となる。
◇◇◇
誰もいなくなったあと、マリエッタは部屋に戻って長椅子に腰掛ける。
すると、これまで姿を隠していたグリージャがやってきた。
『かしましい娘達は帰りましたの?』
「ええ」
『何か事件についてわかりましたか?』
「今から聞いたことをまとめてみようと思って」
紙とペン、インクをと思っていたらメルヴ・トゥリーが持ってきてくれた。
『ハイ、ドウゾ』
「ありがとう、メルヴ・トゥリー」
ペンを手に取り、情報を整理する。
ディディエの暗殺未遂事件について、容疑者は王太子、ランゲンブルグ公爵、アンハルト侯爵、ビュッセル伯爵、ゴーン伯爵の五名。
『あら、ランゲンブルグ公爵も仲間入りしましたのね』
「ええ、ゾフィアがランゲンブルグ公爵も疑ったほうがいいって」
『気になっていましたのよね、自分の父親だけ除外していることが』
ランゲンブルグ公爵は毒を盛られたディディエと同じワインを口にしていた。そのため、マリエッタも容疑者から除外していたのである。
アルマとエマ、ローズから聞いた情報を書く中で、ふと気付く。
『マリエッタ、どうしましたの?』
「いえ、ゴーン伯爵は事件が起こったとか言って調査しに行ったほうだけれど、ランゲンブルグ公爵家に騎士隊は立ち入っていなかったと思って」
『言われてみればそうね』
「別の事件の調査に行ったのかしら?」
ゴーン伯爵がどの事件に駆り出されたかまでは話していなかった。別件である可能性は多いにあるが――。
「そうだとしたら、帰宅できたのが翌日の夜というのも、不思議よね。暗殺未遂事件以上に大きな事件でなければおかしいわ」
『あなた、珍しく頭が冴えているじゃないの』
「珍しくって……」
この件についても、ローズが詳しく調べてくれることを願うしかないようだ。




