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嫌われ魔女と体が入れ替わったけれど、私は今日も元気に暮らしています!  作者: 江本マシメサ
第二部・二章 事件について調査せよ!

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食事を囲んで

 黄金パンの最後の一口を食べきったグリージャが、マリエッタに問いかける。


『ねえマリエッタ、こういう料理は、作りたてが一番おいしいのでは?』

「ええ、そうよ」

『だったら、あの人達の黄金パンはあのように放置していてよろしいの?』


 グリージャはディディエとリードの分の黄金パンが、一番おいしい瞬間を逃しつつあるのが心配のようだ。


「大丈夫なの。黄金パンには、新しい魔法書にあった魔法をお皿にかけていてね」


 それは、〝できたて料理〟の魔法である。


「できたて料理の魔法がかかっていたら、食べ終わるまであつあつのままなのよ」

『まあ、そんな便利な魔法がありますのね!』

「そうなの! すごいでしょう?」


 そんなわけで、黄金パンはいつでもおいしい状態でディディエとリードに提供できるのだ。


「グリージャ、ディー様とリード様の黄金パンを心配してくれてありがとう」

『別に、あのお方達が冷え切った黄金パンを食べても、まったく問題ないのですけれど!』

「ふふ、またそんなことを言って」


 グリージャの言動にほっこりしている場合ではなかった。

 マリエッタは調理を再開させる。

 二品目はスープを仕込む。

 地面に落下させて少し傷んだ野菜をタマネギ、トマト、カブをみじん切りにし、水を張った鍋に入れる。

 続いてスライスしたニンニクを炒めた油で鶏肉に火を通し、これも鍋に加えた。

 タイム、オレガノなどの薬草を加えたあと、塩、コショウをぱっぱと振ってから魔法を唱える。


「――ぐつぐつ煮込んで、あったかいスープよ!」


 魔法陣が浮かび上がり、鍋が光り輝く。

 一瞬の間に、スープが完成した。

 味見をしてみたのだが、野菜はほくほくやわらかく煮込まれていて、味もおいしい。


「よし!」


 他にホウレンソウのクリーム煮に、ジャガイモのグラタン、白インゲンと根菜のキッシュ、と野菜中心のメニューが完成した。

 ワゴンに完成した料理を並べ、ラウンジに運ぶ。

 事前に約束していた時間となり、ディディエとリード、メルヴ・トゥリーがやってきた。


「市場で買った食材で、いろいろ作ってみたわ」

「おいしそうですね」

「マリエッタさん、大変だろうに、作ってくれてありがとう」

「いえいえ」


 メルヴ・トゥリーには、リンゴの蜂蜜漬けをお湯で溶いたものを用意してみた。


『ワア、オイシソウ!』

「お口に合うといいけれど」

『嬉シイ!』


 オススメは黄金パンだと紹介する。


「黄金パンはディー様が買ってきた、バゲットを使って作ったの」

「これがあの、金属のように硬いバゲットだなんて」

「信じられないな」


 神に感謝の祈りを捧げてから、いただくことにした。

 ディディエとリードは黄金パンが気になっていたのか、真っ先に食べ始める。


「これは――!?」

「なんと!!」


 二人とも一口食べるなり、驚いた表情を浮かべる。


「表面はカリッと香ばしく、中はシュワッとしていて……おいしい!」


 ディディエは真顔で感想を述べる。

 リードはこくこく頷きながら、黄金パンを食べ進めていた。

 どの料理もおいしい、おいしいと言ってくれるので、マリエッタは嬉しくなる。

 メルヴ・トゥリーも新作の蜂蜜リンゴ水を気に入ってくれたようだ。


「マリエッタ、慣れない場所で料理を作って大変だったでしょう?」

「みんながおいしいって言って食べてくれることが、何より嬉しいことなの。だから気にしないでね」

「ありがとうございます」


 ただ明日からは、宿の料理を食べることにするという。


「おそらく明日は朝が早いですし、帰りも遅いと思われますので」


 国王陛下と魔法開発の問題について話し合うようだ。

 マリエッタも来るかと誘われたものの、ゾフィアから連絡があるかもしれないので、今回は留守番をしておくことにした。


「明日は野菜の加工をしながら、のんびり過ごすわ」

「わかりました」


 食後のデザートとして作ったチョコレートタルトを囲みながら談笑する。

 楽しい夜は、あっという間に過ぎていった。


 ◇◇◇


 翌日――ディディエとリードはマリエッタが起きるよりも早く、出かけていったらしい。

 コンシェルジュがディディエからメッセージカードを預かっていた。


『いい子にしているように書いていますの?』

「いいえ、何かあったらすぐに呼ぶようにってあるわ」

『まあ、父親みたいなことを言いますのね』

「ふふ、父親みたいでも、こうしてメッセージをくれるのは嬉しいわ」


 朝食をコンシェルジュがラウンジに運んでくれる。

 三種類のサンドイッチとカリカリに焼いたベーコン、カボチャのポタージュに茹で卵、温野菜のサラダ――豪勢な朝食が用意された。

 量は二人分あるのではないか、と思うくらいである。


「ごゆっくり」

「ありがとう」


 一人では食べきれないので、グリージャに協力してもらう。


「グリージャ、朝食、一緒に食べましょう?」


 姿は見えなかったのだが、声をかけるとどこからともなく登場する。


『仕方ありませんわね!』

「ありがとう!」


 途中でメルヴ・トゥリーも起きてきた。

 手にはディディエが作ったらしい、蜂蜜水がある。


『メルヴ・トゥリーノタメニ、作ッテクレテイタ、ミタイ』

「よかったわね!」

『ウン!』


 ほどよくぬるくなっていて、おいしいという。


「グリージャ、わたくし達も食べましょう」

『その前に! きちんと鑑定魔法で料理を調べませんと!』


 毒の混入していないか、確認してから食べるように言われてしまう。


「そうね、警戒に越したことはないから」


 マリエッタは鑑定魔法を発動させ、毒の有無を確認する。


「大丈夫みたい」

『だったら、いただきましょう』


 どの料理もおいしくて、朝から感激してしまう。

 グリージャも『まあまあですわね』と言いつつも、瞳はキラキラ輝いていた。

 あっという間に食べてしまう。


「食べ過ぎてしまったわ。少し休憩……」

『動かないと、脂肪になってしまいますわよ!』


 耳が痛くなるような言葉を言ってくれる。

 マリエッタは重たくなった腰を上げ、野菜の保存食作りを開始することとなった。

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