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嫌われ魔女と体が入れ替わったけれど、私は今日も元気に暮らしています!  作者: 江本マシメサ
第二部・二章 事件について調査せよ!

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作戦

「それで、調査って具体的にどうするの?」

「まず、晩餐会に関わっている使用人達を調べたいところだけれど――」


 外出許可が出ていないので、すぐに行動に移せるものではないだろう。


「だったら、私が連れてきた侍女に扮して、一緒に帰るのはどう? すぐに行って帰ってくればいいだけの話だし」

「いいかもしれないわ!」


 そんな計画に、待ったをかけるのはグリージャである。


『お待ちになって。マリエッタ、あなた、その作戦を騎士に内緒でするつもりですの?』

「ディー様に話したら、反対されてしまうわ」

『そうでしょうね』


 ディディエは過保護で、マリエッタが何かあれば、血相を変えてどこでも駆けつける。

 行動の一つも慎重で、マリエッタのように思いつきで動くような人物ではない。


「グリージャ、お願い! 協力して」

『どうしましょう』

「あとで、グリージャが大好きなパンケーキを焼いてあげるから!」

『まあ、それでしたら、協力しなくもないですが』

「ありがとう!」


 メルヴ・トゥリーも協力してくれるという。

 そんなわけで、入れ替わり大作戦を行うこととなった。

 すぐさま廊下で待機していたゾフィアの侍女が部屋に招かれ、マリエッタと服を交換する。

 侍女にはグリージャが幻術をかけて、マリエッタに見えるようにしてくれた。

 マリエッタは侍女の手を握り、本を読んでいる振りでもしておくように言っておく。


「コンシェルジュのお方くらいだったら誤魔化せると思うけれど、ディー様やリード様は騙せないと思うの。だから、この二人がきたときは、これからお風呂に入るとか言って、先延ばしをしてくれるかしら?」

「承知しました」


 なるべく早く戻ることを約束し、マリエッタはこっそり宿を抜け出すことにした。

 グリージャはマリエッタの影に隠れ、メルヴ・トゥリーはバスケットに入ってもらい、上から布を被せておく。

 マリエッタ自身はベールを被り、顔を伏せてゾフィアのあとを続いた。

 廊下に護衛の騎士がいたものの、マリエッタに気付く者はいなかった。

 あっさりスイートルームがある階から魔導昇降機エレベーターに乗ったまではよかったが、十一階で停まってディディエとリードが乗ってきた。

 マリエッタは口から心臓が飛び出そうになる。

 ディディエは魔導昇降機エレベーターに乗っていたゾフィアに気付き、「おや」と反応した。


「ま、まあ、ディディエ様!」

「ゾフィア嬢、どうしてここに?」

「ディディエ様を見舞いにやってきたのですが、ご不在だと言われてしまい、帰るところだったの! お元気そうで、何よりだわ!」

「おかげさまで」


 ディディエはそれ以上何も話そうとせず、ゾフィアに背中を向けていた。

 リードはゾフィアを睨むように見ていたので、マリエッタはひたすら気配を消すように努めていた。

 早くロビーに着いてくれ、と思うも、こういうときの時間は永遠に感じてしまう。

 次の瞬間、ゾフィアがリードに話しかける。


「閣下、これからどこかへ行かれるの?」

「事件のことで国王陛下が話を聞きたいようで、呼びだしを受けた。しばしの間、王宮へ出かけるだけだ」

「そうだったのね」


 やっとのことでロビーに到着する。

 ディディエが壁際に寄って、先に下りるよう促した。

 ゾフィアは迷いのない足取りで歩き、マリエッタもあとに続く。


「待ってください」


 すれ違った瞬間、ディディエが声をかける。

 マリエッタは跳び上がりそうになるくらい、驚いてしまった。


「あなた――」


 ディディエがマリエッタの肩に触れそうになった瞬間、ぱちん! と音が鳴る。


「私の侍女が何か?」

「……いいえ、なんでもありません」

「そう。では、急ぎましょう」


 ゾフィアはマリエッタの手を取り、足早にロビーを通り抜ける。

 最後は小走りとなり、ランゲンブルグ公爵家の馬車へ飛び乗った。

 御者に合図を出し、すぐに出発してもらう。


「はあ、心臓に悪い!!」

「まさかディー様と一緒になるなんて、思いもしなかったわ」

「本当に!」


 すれ違った瞬間、ディディエはマリエッタに気付いただろう。

 けれどもディディエは途中で声をかけるのを止めた。


「魔法の気配がしたの。グリージャかメルヴ・トゥリーが何か魔法をかけたのかしら?」

『ソウダヨ』


 どうやらメルヴ・トゥリーが、ディディエの意識を逸らす魔法をかけてくれたらしい。


「ありがとう。ディー様には、調査が終わったらきちんとお話しして、謝るつもりだから」


 きっと怒られるだろう。けれどもそうでもしないと、事件はもみ消されてしまうに違いない。

 徹底的に調べなくては、とマリエッタは思う。


「でも、ディー様達が出かけていてよかったわ。侍女さんが心配だったから」

「そうね」


 ディディエやリードが帰る前に、ランゲンブルグ公爵家での調査を終えて帰らなければ。

 そんな気合いと共に、向かったのだった。

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