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嫌われ魔女と体が入れ替わったけれど、私は今日も元気に暮らしています!  作者: 江本マシメサ
第二部・一章 思いがけない招待状

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旅立つ日

 初めて遠出をするグリージャには、いつもお昼寝などで愛用しているクッションを入れたバスケットを用意した。上から織物クロースをかけてあげたら、落ち着く空間のできあがりである。

 メルヴ・トゥリーは蜂蜜水を作るための蜂蜜の瓶とお気に入りのカップを、せっせとハンカチに包んでいた。

  マリエッタも必要な物はすべて鞄に詰めておく。

 魔法の杖に、魔法のメモ帳、日記帳に魔女の外套――。

 滞在に必要なドレスなどは、ディディエの屋敷のほうで用意されている。

 マリエッタが森の家から持って行く荷物は、そこまで多くはなかった。

 そんなこんなで、旅の準備は万全となる。


 そろそろディディエが迎えにやってくる時間だった。

 けれどもマリエッタには一つだけ気がかりがあったのだ。


「森のみんなに挨拶してから行きたかったけれど……」

『あなた、まだ気にしていますの?』

『ミンナニ、森ヲ、ヨロシクネエ、ッテ言ッテキタカラ、大丈夫ダヨ』

「ええ、そうね」


 今日までマリエッタは王都ディアマンテに行く準備をしていた影響で、挨拶に行く暇もないくらいの忙しい毎日だったのである。


『一生のお別れをするわけではないのですから』

「うん、そうだね」


 なんて話していたら、扉がトントントントン! と元気よく叩かれる。


「この叩き方は――!?」


 マリエッタは急いで扉を開くと、そこにはリスの兄弟妹きょうだいがいた。


『おうおうおう! 長い間家を空けるみたいじゃないか!』

『お見送りにやってきたよ!』

『きたよ!』

「まあ!」


 マリエッタはしゃがみ込み、リスの兄弟妹きょうだいをそっと抱きしめる。

 兄は『大げさだな!』と言って恥ずかしそうにしていたが、弟と妹は『わーい!』と言って喜んでいた。


『他の森の奴らも、お前を見送りしたいってやってきたぞ』

「え!?」


 外に出てみると、庭にたくさんの動物達がいた。


『朝霧の魔女、行ってらっしゃい!』

『気をつけて!』

『グリージャとメルヴ・トゥリーを、よろしく!』


 その光景を前に、マリエッタは泣きそうになる。


「みんな、ありがとう!! わたくし、とっても嬉しい!!」


 そんな言葉をかけると、動物達は嬉しそうな様子を見せていた。

 ここで、ディディエが転移のゲートを通じてやってくる。

 庭に押しかけた動物達を見て、驚いていた。


「たいそう賑やかだと思ったら」

「みんな、わたくし達を見送りにきてくれたみたいで」


 ディディエにも『マリエッタをよろしく!!』という声が上がった。


「マリエッタのことは、何があっても絶対に守りますので」


 ディディエの言葉に、動物達が沸く。

 なんとも平和な光景だった。


 グリージャはかごの中に入り、メルヴ・トゥリーは蜂蜜の瓶とカップを包んだハンカチを背負う。

 マリエッタの鞄はディディエが持ってくれた。


「ディー様、わたくし、自分で持てますので」

「私と一緒にいるときは、カトラリーより重たい物は持たせるつもりはありませんので」


 そんなことを言うと、動物達がヒューヒューとからかうような声をあげていた。

 ディディエは少し照れたような表情で「行きましょう」と言う。

 マリエッタは森の動物達と、最後の挨拶を交わした。


「みんな、行ってくるわね!!」


 行ってらっしゃい、の大合唱に見送られながら、森の家をあとにしたのだった。


 ◇◇◇


 メルヴ・トゥリーの転移魔法で、クリスタリザーシーにあるディディエの屋敷に到着した。

 マリエッタ達を迎えたのは、ディディエの祖父であるリードだった。


「ごきげんよう、リード様! お待たせしました!」

「マリエッタさんは、今日も元気いっぱいだ」

「ええ、おかげさまで!」


 後見人を名乗り出たリードは、マリエッタのことを本当の孫娘のように接してくれる。

 血の繋がりはないのに、ありがたいことだとマリエッタは思っていた。

 先に身なりを整えてくるように言われる。

 マリエッタはあっという間にメイド達に囲まれ、ドレッサールームで着替えをすることとなった。

 今日は移動日なので、コルセットなしのドレスを選んでくれた。

 アザーブルーの美しい布地で仕立てられた一着で、丁寧な縫製ほうせい精緻せいちなレース、美しい刺繍ししゅうにマリエッタはため息が零れる。

 ディディエはマリエッタのために、最高級の一着を用意してくれたのだ。

 化粧を施し、髪を結って、マリエッタの身なりはあっという間に整う。


 ディディエが待つ部屋に行くと、ハッと驚いたような顔を見せるので、マリエッタは似合っていないのではと不安になる。


「ディー様、その、わたくしにはもったいないドレスだったかしら?」

「いいえ、そんなことはありません。似合い過ぎて、驚いていたところでした」

「そうだったのね、よかった」


 ホッとしていると、グリージャがゲホンゲホンと咳払いしたあと、『出発時間が迫っているのではなくって?』と言った。


「ああ、そうでした。ワイバーン車はすでに到着しているみたいです」

「ワイバーン車!!」


 王都ディアマンテまでの移動は、馬車で一ヶ月かけて行くものだと思っていた。

 けれども今回はワイバーン車と呼ばれる、ワイバーンが車を引いて空を飛ぶ移動手段を使うらしい。

 ワイバーン車を使えば馬車で一ヶ月かかる距離も、たった二時間ほどで到着するようだ。


 ちなみにワイバーン車は一般的に普及されていないものらしく、王族とその家族のみ使うことが許されているらしい。


 屋敷の庭に向かうと、漆黒の美しいワイバーンが翼を休ませていた。


「あれがワイバーンなのね!」


 とてつもなく大きく、また美しい。

 クローデットが召喚した竜も美しかったが、このワイバーンも負けないくらいだった。

 ワイバーン車の車体は馬車とそう変わらない。

 この車体とワイバーンを魔法のベルトで繋ぎ、空を飛んで王都ディアマンテまで運んでくれるという。


 御者が恭しく頭を下げ、車の扉を開いてくれた。

 ディディエはマリエッタの手を取ると、エスコートしてくれる。

 かごに入ったグリージャはメイドの手によって運ばれ、メルヴ・トゥリーは自らの足で車内に飛び乗った。

 リードが続き、最後にディディエが乗る。

 ディディエが剣の柄でコンコンコンと御者側の壁を叩くと離陸する。

 ワイバーン車は大空を飛び立った。

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