シーン7リーナという女性。
俺が身体を起こそうとした時。
声をかけてきたのは看護師なのだろうか…紫色の美しい長い髪をなびかせた一人の女性だった。
『もう?何やってるんですか?貴方は凄い怪我をしているのですよ?』
『えっ!?あ、ああ……すまない。』
俺をベットに横にさせるとその女性はそれまでの表情とは、様代わりしニコリと笑顔を見せてくれる。
『貴女は!?というか……ここはどこなのでしょうか?』
俺は目の前の美しい女性に問いかける。
すると俺をみかねたのか……女性は深い溜息をつく。
『ふぅ……仕方のない人ですね……ちょっと待っていてください。』
女性はそう呟くと部屋を出ていってしまったのだ。
すると数分後。
先程の女性がはいってくる……………そしてその後ろから……一人の老人も入ってきたのだ。
『やれやれ……そう急ぐでない。』
『ですが、ヤシュア様?ようやく目が覚めたのですよ?無理な事などさせる事はできませんよ!?』
(ん!?ヤシュア…………とは……あのアルベルトの手紙にあった名か?)
すると先程の女性は老人と共に入ってきて立ち止まる。
そして老人は被っていたフードをはいでいく。
老人は口を開く。
『ワシの名はヤシュア……かつての勇者様が残してくださった『魔神具』の研究者でその力を伝承していくものじゃ。』
『ヤシュア………………様ですか…貴方の名は確かに耳にした事があります……あ、俺の自己紹介がまだでした……俺は……………』
『元アメリスアードの自警団に所属しこれまで数々の事件を手がけ解決してきた隊長だった……レギオンであろう?』
ヤシュア様はどうやら俺の事を知っていたらしい。
『どうして……俺の事を!?』
『ああ…………わしは世界の魔王の痕跡を追う者……かつての勇者様が魔王を討伐してくださったのだが……魔王を封じた魔神具という魔導具はとある島の神殿に封じられ誰も立ち入らない様に世界の監視下においておったのだ。』
ヤシュア様は続ける。
『それは魔族だとて立ち入れないように厳重に封じられていたのだが……魔族は別の手を考えたのだろう……そう………魔神具の開発に手を出したのじゃ………』
『魔神具の開発………………ですか?』
『ああ……今現在この世界は魔王の存在がない事もあり世に大々的に魔族が現れる事はないようになっている、じゃがやはり魔族は確実にいるのだ……それが時折起こるこの世界の事件の数々じゃ……それはお主も事件を追うことで知っているであろう?人間がやったとは思えない事件などにはほどんど魔族の影があったであろう?』
『ええ………確かに。』
俺はその話に納得のいくものだった。
『要するに奴らは魔神具の開発をする事で魔王の封印を解く術を探し解こうとしているのだよ。』
『なるほど……それなら納得がいきます。』
『ふむ………じゃが奴らも馬鹿ではない魔神具を研究しているうちにとある事実を発見してしまう。』
『とある発見………ですか?』
『ああ……それは我々が知った新事実……なんと……勇者様が封じたもの全てが魔神具だと思っていたのだがなんとその遙か昔から『魔神具』というものに似た魔物などを封じ力とした魔導具が存在したというのだ。』
『えっ!?それは勇者様の力とはまるで別の魔導具という事ですか?』
『ああ……魔族の魔神だけではなくこの世界の太古には力のある精霊や仙神と呼ばれるものを封じた神の魔導具も存在するという話なのだよ。』
『なんと、そんな力がこの世界にはあるというのですか?』
『ああ、それを我々は研究する事で神の魔神具という存在を知ったのだ……そしてその一つとなりえそうな一つが……何らかのきっかけで魔族が一度は手にし……それを偶然目撃しそれがきっかけで魔族に狙われ殺されてしまったお主の部下アルベルトなのだ。』
俺はその言葉に衝撃を受け…固まってしまう。
『このワシに連絡をくれたアルベルト氏……それが殺されてしまったのはワシのミスとも言えよう……本当にすまなかった。』
俺に真実を告げ謝罪をしてくるヤシュア様。
『いえ、それは本当に偶然でしょう……ヤシュア様の責任ではありません……そんな重要な話を聞いてやれなかった……そして守ってやれなかった俺の失態です……お気になさらず。』
俺は深々と頭を下げる。
すると。
『ヤシュア様!?この方が完治するまでは私が面倒をみましょう!!いいですよね!?』
そう言い放ってきた先程の女性はヤシュア様にそう問いかける。
苦笑するヤシュア様。
そして構わず俺にニコリと微笑みかける女性。
『ああ、わかったわかった!お前は一度言い出したら聞かないからな………頼んだぞ?『リーナ』よ。』
『はいっ!?私は『リーナ』と言います!よろしくお願いします!レギオン様!?』
こうして俺と『リーナ』は出会ったんだ。
後のリオの母になる女性だ。
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