シーン3決意。
俺たちに起こった悲劇。
そんな悲劇の復讐をも考えた我々だったが……上からの言葉で動けない状況。
そんな時………俺を再び動かす事件が発生する。
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『た、隊長!!???』
『なんだ!?お前が珍しくも……そんなに慌てるとは珍しいではないか……何かあったのか!?』
俺は慌てる部下にそう問いかけてしまう。
『それが………………』
この時、俺の中で嫌な予感が頭に中に過ぎってしまう。
そして言葉を続けた部下の一言が俺の脳内を支配したんだ。
『アルベルトさんが………先程………亡くなりました。』
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俺は今……横たわったままのアルベルトを見ていた。
あいつが首元にいつもつけていたペンダントの写真入れは僅かに欠け……家族三人の笑顔の写真がチラリと見えている。
アルベルトが……子供の話をし、俺に結婚の大切さを聞かせてきたのはつい最近の事だ。
今は蒼白の表情で横たわるアイツに俺は只々……動けずにいたんだ。
この部下アルベルトが俺の元に配属されてきたのは三年ほど前の話である。
その頃から俺を慕ってくれ、そしてここまで着いてきてくれた。
今ではアルベルトの人生の喜びを聞かされる事が俺の楽しみにもなってきていたような気がする。
俺の後釜にも推薦してもいいと思っていた貴重な人材でもあった。
『何故……こんな事に?』
俺の言葉に報告をしてくれた部下の一人が口を開き語る。
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『アルベルトさんは自宅で家族といつも通りに過ごしていたそうです。』
部下は続ける。
『これは奇跡的に生き残ったお子様と奥様の話です……一家団欒で食事を終えたアルベルトさん一家、するとそこへ突然のチャイムが、旦那であるアルベルトさんが奥様に変わり出たそうです…その時……………恐るべき咆哮が聞こえたそうです……その声に奥様が玄関先に向かうと………魔族により食われ恐るべき形相を見せていたアルベルトさんの姿……そして彼は『逃げろ……』それだけを声を絞り出し……動かなくなったといいました。』
『その時……偶然魔族は何者かに呼び出されたかのように彼の身体を投げ捨て……家を飛び出していったと言う事でした。』
俺はその言葉に思わず拳を握りしめてしまう。
そして俺は気がつくと装備を整えていた。
『隊長!?なにを!?』
『いいか?……………俺の事は誰にも言うな……』
『!?隊長!!???』
『あの事件の中にはどうやら魔族の影があるようだ……アルベルトの家族の保護はどうなっている?』
『ええ、奥様もさすがに子供もいる為、保護を求めてこられましたので保護しております。』
『そうか……ならばまずは申し訳ないが奥様に当時の話を聞きたい。』
『わかりました…………ならばその準備を早急に整えます。』
『ああ……頼む。』
そして俺はアルベルトの奥様の話を聞く。
奥様の話ではその魔族は黒いマントに身を覆い、そしてその表情は口は耳まで裂け…目は恐るべき鋭い眼光目を向けてきたという……その姿から魔族を感じさせるものだったという。
魔族……かつて存在し、そして勇者によって討伐され封じられた魔王……その魔王と共に魔族はこの世界から消え去ったとされている常識は今のこの世界の定説なのだ。
だが俺の中ではやはりその状況を目の前で見ていた奥様の証言が今は一番信憑性が高いのである。
『この目で確かめなければ………』
この自警団にはもはや先の警告通り今回の事件も関わらないように言い渡される気がしていた。
俺はもうここに戻る事はないと……そう心に決めていたんだ。
二人の大切な友人を失った俺の心はもうこの事件の解決へと向かう事しか考えてはいなかった。
俺は書き出し準備した辞職願いを自分のデスクの上に置く。
そして部下に伝える。
『もう俺がここに戻る事はない…………二人の意思は俺が受け継ぐ。』
『レギオン隊長!?』
『俺は先の事件に関わらぬようにと署長より命令が出ていた事に違和感を覚えていた……このままではこの事件はうやむやにされ…この事件は何かの圧力により隠蔽される事だろう…さも、魔族が関わっているとしたら尚更だ……。』
『隊長…………』
『今まで世話になったな……自警団を俺は去る……お前は自分がまだここを信じれるのなら信じ……この街、人々の為に力を尽くせばいい。』
俺はそうい言い残し………この自警団に別れを告げる。
『今までありがとう……世話になった……俺は大切な者の死を簡単に受け入れられる程できちゃあいない……この手で犯人を追い詰め……そしてこの事件を明らかにし……俺は。』
パタンと閉める自警団の扉。
俺はこのアメリスアードの雑踏の中に身を紛らせていったんだ。
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