シーン21夢見るアキニー。
アキニー視点。
私は産まれてからケニージアの貧困層で暮らしていた。
父親はおらず私は母と二人、母の僅かな収入から細々と暮らしていたのです。
そんな私は生まれながらに頭部に二本の立派な丸みを帯びた角が生えていたのです。
そして成長と共に私の角は立派なものへ。
この国には当然のように私と同じく様々な獣人達がいたのです。
その中で私が暮らす貧困街では食べる事にも困る者も多かった。
私の母も何とか私に食べさせてくれていたけどやはり成長期の私はどうしてもお腹が空いていた事が多かった。
『ママ……私は大丈夫だからね!?』
これは私のいつもの口癖のようになっていた。
目を潤ませごめんねと謝ってくるママ。
いつも本当に私に愛情をそそいでくれた母親。
そんな母親は…………まだ幼かった私を残して。
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『ママ………どうして……どうして………………。』
私は呆然と立ち尽くしていた。
ちょうど出かけていた私。
私が帰るとママはもう息はなかった。
何故!?どうしてママは死んじゃったの!?
私の中でそんな自問自答が繰り返される。
今朝、友達の所に行く時は普通に笑顔で私を送り出してくれたんだ。
でも今……私のママはもう…………動かなかった。
◇
◇
◇
一人残された私。
すると、この国の自警団の人達が家へとやってきたんだ。
普段ならこんな事、そう……この貧困街で起こった事件などは当然のようにこんな事は起こらない……そう……それがこの貧困街で起こった魔族による大量虐殺事件。
これが私のママを殺したのが魔族だったんだと知らされた現実だった。
私は只々立ち尽くす事しか出来なかったんだ。
そんな私の耳に聞こえてきたのは、あちこちから聞こえる悲しみの叫び声。
それは私に起こった事が他でも起こった事を意味していた。
その為に目の当たりにした数名の大人達の話でこの事件の真相も明るみになった。
そう……私達の貧困街の連続殺人事件には魔族が絡んで来ていたの。
そう……こうして幼い私には魔族への仇討ちという明確な目標ができたのです。
だけれど、この貧困の現況にも疑問視を捉えていた私はこの街…ひいてはこの国をも少しでも良くしたい…暮らしやすい暮らしを送る為の対策をしていかなければと考えるようになっていたのです。
そして、あの魔族を倒したら私は。
この街をきっと……建て直すの。
私の明確な目標を叶える為に。
私は立ち上がった。
そんな時、声をかけてきたのはマジェスト協会のヤシュア様だった。
『ほお?凄いのお……………獣人であるお主が我がマジェスト協会に加わってくれたら皆喜ぶぞ。』
『えっ!?でも私何か出来る訳では……。』
『いやいやそんな事はない…………魔族を倒す為に我々はこれまで格闘してきた……だがやはりまだまだだ……かつての魔王はその昔……勇者様により倒され封印された…じゃが生き残った魔族が世界のあちこちには潜んでいたのじゃ……そして魔族は闇の世界に棲み事ある事に表に出てくるようになったのじゃ……そんな魔族によりお主にも悲劇が起こったのじゃ。』
私はヤシュア様の言葉に自然に身体が打ち震えていた。
優しかった私の母は魔族の手により。
『どうじゃ…………隠そうとしてもお主の心の奥底に秘められた正義の心は黙ってはいられないじゃろうて……。』
『はい…………ヤシュア様…………私はどうすれば!?』
するとヤシュア様はゆっくりと口を開く。
『霊峰キリマジャーロ……そこには古の聖獣様が棲むと言われておる………そして我々の調べではお主のその弓に隠された謎を紐解いた……その弓には太古の魔神が宿されている事を知った……我々はその物を『魔神具』と名付けておるがお主の持つ魔神具はかつての勇者様が作ったものではなく、太古の神が作りし伝説の魔神具の一つなのじゃ……故にその秘密を知り自分のものにする為には聖獣様に会う必要があるのじゃ。』
『聖獣様!?』
『ああ、じゃがそこまで気に負う事は無い……偶然じゃが、今回はお主同様に二人の仲間が一緒に聖獣様の元へ向かうのじゃ……………。』
『分かりました………では私はその仲間の元へ向かい……聖獣様に会い………私も魔族討伐の為の一助となる為……力を手にして参ります。』
するとヤシュア様は微笑む。
『ああ………二人ともいい男じゃ…………誰よりもお主の力になってくれようぞ。』
『ヤシュア様………ありがとうございます!では私は準備を整えます。』
『ああ…………じゃが彼らはもうあのキリマジャーロへと向かっているのでな……山へと向かう道で出会える事じゃろうて!?』
『はい!!では行ってまいります!!!』
私はこうしてこの二人と行動を共にする事になったのでした。
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