シーン19三人の夢。
俺達はキリマジャーロへの登山口へと入る頃。
夜もふけかかっていた。
するとユーロが口を開く。
『二人とも夜のこの地は危険だな……入山は明日朝にしてひとまずこの辺りで野宿する事にしよう。』
『いいわね……確かにこの辺りは野生動物も危険動物達も現れるし万全を整えて野宿する事にしましょう。』
女性であるアキニー……だが彼女は俺がこれまで出会ってきた女性達とは違い男勝りであった。
そしてテキパキと野宿の準備を始める二人。
俺は二人を手伝うように野宿の準備を始める。
そして………。
俺達三人は綺麗すぎる夜空の下…………簡易な食事をとりながら会話をしていた。
◇
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『私はね…………あのケニージアの貧困街で産まれたの………』
そう、自分の身の上話を始めたのはアキニーだった。
『そうだったのか。』
俺の声に彼女は語り始める。
◇
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◇
ケニージアは獣人国家……そして太古から続いてきたこの国は文化の向上などには関せず独自の文化を何も変わらず続けてきたのだ。
だが……国王達はなんの苦もせず自分達の暮らしは補償されている……だが国民はとなるとそうではない。
何事があっても税は国王達の暮らしを支える為に足りなくなれば国税を増やし自分達は贅沢三昧なのだ。
一方の国民達はその所業に疲弊し、そしていつしか貧困街も生まれるのだ。
それにより治安も悪くなりこの国は犯罪件数も多くなってしまうのだ。
そう、そんな中その貧困街に産まれたのがこのアキニーだった。
そんな貧困街に産まれた彼女。
◇
『私はね……そんな貧困街に産まれたけれど…それでもこれまで生きてこれたのはね…獣人っていうのもあるのだけれど………生まれ持って持っていた力があったの。』
『産まれ持っていた力…………………』
『アキニー…………やはり君も?』
『えっ!?』
アキニーは驚きの表情を浮かべる。
俺……そしてユーロの背後にも感じるなにか。
それはアキニーを納得させるものだっただろう。
アキニーはふっと微笑むと口を開く。
『この国はこのままではずっと何も変わらないの……どこまでいっても王族の為の国……人に言わせたらそれが当然なんだと言われてしまうかもしれないわ……でもね……どこかで誰かがそれを変えていかなければこの国は何も変わらないの……貧困街では未来のない子供達が溢れそして世の中に絶望しか感じない将来しかない状態……私はそれを変える為に……これから聖獣様の元へ向かうの。』
『そうだったのか。』
俺達は彼女の熱い思いを知る。
するとアキニーは口を開く。
『さ、貴方はどうなの!?』
そう問いかけた先はユーロだった。
『俺は………そうだな………アキニーと似たようなものかも知れないな……ヨーロディアもまた歴史深い国でもある……だが我々の国は未来への激しい力の策謀も多い……故に科学者も多くてな……その為に科学………マシーン化を図る力により犯罪を重ねる事も多いのだ……そして力を所有する恐るべき指導者の出現により内乱も多い地と化している………俺は歴史と美しい自国を誰よりも愛している……そんな自国を守る為に俺は力を振るうと決めているのだ。』
そう言いきったユーロ。
彼の思いもまたヨーロディアの為の未来となるのだろう。
『貴方はどうなの!?』
ユーロの次はお前だという流れで俺に問いかけてくるアキニー。
そしてユーロもまた俺の言葉を待っているよう に見ている。
『俺は………君達のようにそんな大それた事は考えてはいない……………』
俺の言葉に驚いたような表情で見ている二人。
『俺は…………』
二人の様な立派な名目があるわけじゃない俺。
それでも俺は言わずにはいられなかった。
この旅の目的を。
『俺は………娘のリオをこの生命をかけて守る為に聖獣様の元を目指すんだ。』
◇
するとやはりというようにこの場に沈黙が流れる。
『あはは!!』
そう言いながら笑い出すアキニー、そしてユーロもまた笑いが止まらないようだ。
『なっ!?お、お前達!?そ、そんなにおかしな事なのか!?』
俺は苛立ちを覚えながらもそう訴えかける。
すると二人は息を整えながら笑いを止めていく。
『ああ……すまんレギオン……君の愛娘だからな……笑った事を詫びよう。』
するとアキニーもまた続ける。
『ええ……私もその可愛らしい娘さんにいつかあってみたいわね。』
『ああ………でもな……そんな娘にも俺達同様魔神が着いてくれてるんだ……その事も聖獣様に会えたら聞いてみたいんだ。』
『確かにそうね……………私達の力同様の力を持っているとしたら心配だものね。』
『ああ、そうなのだよ。』
『でも……娘さんの話をするレギオンの顔ったら!!』
そう言い吹き出しながらアキニーは再び笑う。
『確かに違いねえ!これが親バカってやつだよな!?』
そうからかってくるユーロ。
『お前ら………リオは可愛いんだ……笑うなーーーーーーーーーーーーっ!?』
俺はそう叫び……そんな俺達は会話に花を咲かせるのだった。
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