シーン1レギオン。
一人の男が赤子をその手に抱き感慨深い声を上げる。
『ふぅ……リオ…………お前は本当に可愛いな…俺はお前の為なら………例え世界を敵にしたとしても。』
そう言ったのはこのアメリスアードの裏の組織『アステリオ』のBOSS………名は『レギオン』。
俺はこの世界で今………………………………。
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この世界はなんというか……弱肉強食の世界だ。
世界には俺の様なヒューマンがいて……近しい存在の獣人もいる。
もちろん妖精や精霊なんてのもいて……そして。
魔族までもが存在する。
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この世界の中での俺の立ち位置はというと……どこにでもいる普通の男だ。
そんな俺は…………。
この国アメリスアードの『自警団』に属していた。
我々の仕事はこのアメリスアードを舞台とした事件を解決しこの国を守る事だ。
そして今日も。
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『レギオン隊長!!聞きましたか!?』
『なんだ急に!?』
俺の元に現れた部下である『アルベルト』が大声を上げ俺のいる隊長室に入ってくる。
『ええ……あの闇の大組織『エクステリア』が勢力を拡大しているというのです。』
『ああ……このアメリスアードの犯罪の大部分を閉めるあのマフィア達であろう?』
『はい……ですがやはりそれは『黒い噂』でしかないのですが間違いないと僕は思っていますが隊長はどう思いますか?』
『ああ……その噂は聞いている…だがそれは俺もエクステリアで間違いないと踏んでいるがな……いつか必ずそのしっぽをつかんでやる。』
『ええ…僕もきっと。』
アルベルトはそういうと笑みを見せる。
すると俺の目に止まったのは彼が身につけていたペンダントだった。
以前自慢気にそのペンダントを見せてきた事があった。
ペンダントの中には写真が入っておりそこには自慢の妻と娘の写真が収められていたんだ。
『アルベルト………娘は元気か!?』
『あ!はい!!実はもうすぐ自分の誕生日なのですが昨日なんて僕のほしいもの聞いてきて……そりゃあもう可愛くて仕方ありませんよ?』
『ああ……そんな事聞かれたらそりゃあ嬉しいだろうな?』
『ええ!隊長も早くお相手探して子供作る事をオススメしますよ!?』
『はは……確かにそうだな。』
俺たちの仕事は危険と隣り合わせの職業だ。
いつどうなるかなんて隊員の中でも誰にも分からないのだ。
そんな俺たちの中では『アルベルト』のように家族の写真をいつも持ち歩いている隊員も少なくないのだ。
そう言った『アルベルト』もまたしかりだ。
だが、その反面…家族の為に頑張ろうとも思える起爆剤にもなるのだろう。
そしてその笑顔もまた幸せそうだ。
すると俺達に突然の凶報が知らされる。
『隊長!?アルベルトさん!?』
もう一人の隊員が慌て入ってくる。
『そんなに慌てて、どうした!?』
俺の声に顔面蒼白の新人隊員が答える。
『『ロット』さんが…………………………殉職……しました。』
俺たちはその言葉に震えてしまう。
『なにっ!?』
『ロットさんが。』
俺たちが自警団の医務室へと向かう。
そこには……既に『ロット』の姿は無かった。
そして俺たちは奥にある霊安室へとゆっくりと歩き出す。
すると中から女性のすすり泣く声……そして彼の息子であろう少年の声が聞こえる。
殉職したと報告があった隊員は三十代になったばかりの俺と同期であり親友の副隊長である『ロット』だった。
『ロット…………………。』
ツーマンセル……なにか動く時は何があってもいいように常に二人一組で行動する事になっているこの自警団。
新人教育を任せていたロットの突然の死に俺は呆然としてしまう。
彼の家族にもすぐに連絡をしたのだろう。
遺体の傍で泣く彼の妻と………未だ理解できていない彼の息子。
『うううっ…………………………あなた。』
『ねえママ……パパ起きないね?』
彼の一言に俺たちの時間は停止してしまう。
そう……俺たちの仕事は……いつこうなるか分からないのだ。
すると新人の隊員マイクが口を開く。
『ロットさんは僕が偶然見つけた男をつけて行ったんです……僕に隊長に報告を入れてくれと一言残して……。』
俺たちはマイクを連れその場を出る。
ここでそんな話をする訳にはいかなかったからだ。
そして号泣する彼女の声を聴きながら俺たちは会議室へと向かったんだ。
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『経緯を詳しく……説明してくれ。』
俺はそう告げる。
『ロットさんと僕は…………街で偶然『エクステリオ』の重要人物とされている『ベリアル』を見かけました…そして着いて行った僕達はとある建物の中に入って行ったんです……するとそこで見かけたのは麻薬取引の現場でした……これは好機とロットさんは僕に救援をといい僕をここへの連絡を頼んだのです…………すると………建物を出た僕の耳に銃声と爆発音が聞こえたんです……爆発音に僕はロットさんの事が気にかかり戻って見た時には……ロットさんはもう……ですが一つなにかの違和感をロットさんから感じたのですが。』
『違和感?』
『はい……ロットさんに残されていたのは魔力だったのです。』
『魔力…………敵は魔族か………………』
『ええ……僕も僅かですが魔力を感じる事ができますので。』
『ああ……かつての魔王がいた頃は魔族もかなりの数が存在し、我々ヒューマンの中でもその影響なのか魔力を持つ者もかなり存在したらしいが今ではその数も減ってきているらしいからな。』
『そうですね…現にロットさんは魔力を持たない方でしたよね。』
新人のマイクはそう告げ震える。
俺たちはロットの死を痛感する。
(ロット……そんな……お前が逝ってしまうなんて。)
俺が焦りの表情を浮かべていると…そこへ一本の通信が入ったんだ。
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お読みくださりありがとうございました。
リオの父親『レギオン』そして彼の人生と仲間の物語をお楽しみくださいませ。