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第九章 星躔祭と変態神様②

 そうして迎えた星躔祭の初日。ヒカリは早朝から会場設営に出かけてしまった。

 デルフィーナは午前は警備担当、午後は出店の手伝いという役目だった。

 すっかり綺麗に更地になった中央神殿跡地に、綺麗に並べられた椅子とテーブル。そして色とりどりの布で彩られた出店がいくつも並んでいる。

 ヒカリの提言で飲食関係の店はこの広場に集中させて、そこで飲食物を購入したら椅子とテーブルは自由に使えるようにするらしい。フードコートというものを参考にしたとか。これなら街中で飲食して食べ散らかしが散乱するのを防げるし、いろんな店を食べ比べも可能だ。好きな食品を客が買ってくるので給仕も必要ない。

 そして、飲食関係の区画の隣がヒカリが担当した神殿の店だ。半分が軽食販売、もう半分が魔族の工芸品や魔法具の販売。

 あと、神殿で依頼された護符も販売するらしい。

『なんか、僕が魔力込めたら凄い値段で売れるらしいんだけど、値段聞いたら詐欺じゃないかってくらい……これでいいのかな?』

 ヒカリは知らないのだ。過去に聖女の護符として売られた属性魔法が籠もった護符は途方もない値段で売られていた。偽物も出回っているが、本物は持っているだけで呪詛も防げるし魔獣に襲われない。神殿はそれでボロ儲けしていたのだ。

 先代聖女は一年足らずで消息を絶ったけれど、それまでの聖女は神殿派の貴族や王族の妻になって抱え込まれていた理由の一つだ。聖女の関連商品は儲かるらしい。

 今回その売り上げを神殿の再建費用の募金にするという約束で製作を手伝った。

 偽物防止のため護符の図案はヒカリが考えて木版で印刷、リナが描いた謎の「電気鼠」とヒカリが描いていた「二足歩行の白猫」の絵があしらわれていた。

 デルフィーナが開店前の神殿の出店に向かうと、すでに行列ができていた。

 護符が本物である証拠を示すために、最初にヒカリが魔力を入れる作業を観衆の前でするのだという。ひと目当代の聖女を見ようと人々が集まっているのだろう。

 これはステファノには勝ち目ないんじゃないかしら。

 店の中ではせっせと品出しをしているミケーレがいた。

「ヒカリはどこにいるのかしら?」

 そう問いかけると奥から声がした。

「ごめん、デルフィーナ。着替えていたんだ」

 そう言って出てきたヒカリの姿にデルフィーナは驚いた。純白の神官の服に豪奢な刺繍が入った上着。髪は整えて金色の飾りが額に輝いている。

 聖女の衣装を男性用に仕立て直したのだろうけれど、そうしているといつもの彼ではないようで、ドキリとしてしまう。

「すごい衣装ね」

「最初にパフォーマンス……実演っていうのかな? それをやるって言ったら用意してくれたんだ。まずは見た目から聖女っぽくしないと……。それらしく見える?」

 そう言って照れくさそうに微笑む。

「けど、その後で売り子もする予定なんだけど、威厳台無しだよね?」

「さすがに給仕はしないんでしょ?」

 聖女の店は半分が商店で半分は飲食だ。聖女様が飲み物や食べ物を運んでいたらさすがに客が驚くだろう。

「あー……そっちは神官さんたちに任せることにした。泣いて反対されたから」

「でしょうね……」

「もう外に行列できてるって言うし、忙しくなりそう」

 ヒカリはそう言って楽しんでいるようだった。

「だけど、お祭りはしっかり楽しみたいから、あとで一緒に回ろう? ミケーレとエリゼオも楽しみたいだろうし」

「そうね……」

 ヒカリはエリゼオのことまで気にかけてくれていたらしい。彼にとってはエリゼオもすでに家族なのかもしれない。ミケーレは甥なのだから当然家族だし。

 彼の家族が増えていくのは素敵なことだわ。別の世界から来て、知り合いも誰もいない場所で、彼が孤独じゃないのは胸が熱くなるほど嬉しいことだ。

「でも、ヒカリ。無理はしないでね」

 デルフィーナはそれだけ答えるのが精一杯だった。 


 結局、聖女の店は午前中だけで大半の商品を売り切った。飲食も昼を回るころには売り切れになったので、店じまいとなった。

 当代聖女の護符も飛ぶように売れたらしい。

 そんなわけで後片付けを終えて二日目の準備をして終わったヒカリは予定通りデルフィーナを誘ってきた。乳母に連れられたエリゼオとミケーレ、それにヒカリの護衛も一緒に。

「デルフィーナは何が見たい?」

「ヒカリが作った女神像が見たいわ。不思議な彫像なんでしょう?」

 夕方に広場の中央にヒカリが設置した巨大な女神像が現れることになっている。その女神像は触れることができない不思議なものだとか。

 異世界の技術を応用したと聞いて俄然興味があった。

「ホログラフィを想像して光魔法で作ったんだ。もう少し時間があるから、その前に何か出店で食べようか。忙しくて食べそびれてしまったんだ」

 ヒカリはそう言っていい匂いを漂わせている出店を指さした。

「そうね。お祭りといえば食べ物よね?」

 デルフィーナはヒカリが差し出した手を握って力強く答えた。 


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