表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/56

第三章 婚約は突然に⑦

「……あれは妹ではないのか?」

 シルヴィオがぽつりと呟いた。ヒカリが驚いた顔でデルフィーナの目線を追う。

「妹……? 君の?」

「そうみたいだけど……訳がわからないわ」

 一体どうして彼女が聖女になってるの。

 その後は何を言っているのか聞き取れなかった。周りに集まっていた人たちが歓声を上げて大騒ぎし始めたからだ。

 シルヴィオは混乱を避けるために御者に馬車を動かすように命じた。

 大公邸に戻るまでに、デルフィーナは妹のことをヒカリに説明した。

 ピエラは世間的には義母の連れ子ということにはなっているが、顔は父そっくりでデルフィーナと半年しか歳が違わない。父の溺愛ぶりからしても、明らかに異母妹なのだろう。

 ピエラは甘やかされた分、上昇志向だけは強いけれど努力が伴わない。

 さらに他人のものを奪うことで自分が魅力的だと感じたいという、理解しがたい思考の持ち主だった。

 既婚者や婚約者のいる相手に近づいて仲を引き裂くのが好きだったのよね。

 なまじふわふわした愛らしい顔をしているから、彼女の本性に気づかない。特に男性は欺されやすい。そうやって悪意のない様子で複数の男性に近づいては揉め事を起こしていた。

「最初はわたしがお詫びしに行く羽目になったけど、最近は断ってたのよね」

「え? 何でデルフィーナが謝るの?」

「家がこんな下らないことで没落したら亡くなったお祖父様に申し訳ないって思ったのよ。でも、そろそろお祖父様も許してくださるんじゃないかって」

 だから、コジモ王子と婚約したころからなるべく関わらないようにしていた。

 そうしたら、あまりに素行が悪いからと相手側から莫大な慰謝料と行儀見習いに行くように要求されたらしい。

 それについても実家からお前が何とかしろとしつこく手紙が来ていたけれど、無茶を言わないでほしい。自業自得って言葉を知らないのかしら。

「あの子は神殿に行儀見習いに出されたと聞いていたんだけど……」

「じゃあ、その時に聖女だってわかったってこと?」

「それならもっと前に発表されているし、何より聖女召喚なんてしないはずよ」

 ピエラが行儀見習いに出されたのはすでに三月ほど前のことだ。デルフィーナがそれを知ったのはコジモ王子が巫女見習いに言い寄る騒動を起こしたとき、その中に彼女の名前があったからだ。

 ……巫女見習いという形で聖女候補を神殿に入れる前例があったから、コジモ王子が介入したって話だったけど。それでもピエラが聖女だなんて……。

「あの子は魔力判定で微量すぎて数値に出なかったくらいで、聖女になれるわけがないのに……」

 神殿が聖女の判定に使っている器具も、実は魔力判定の装置と同じものだ。媒介に水晶球を使っているだけ。突出した魔力量と光属性がなければ聖女にはなれない。

 ピエラは魔力量が少なくてその上光属性は全くなかった。

 シルヴィオは眉を寄せて考え込んでいる。そこで通信用の魔法具が鳴り出した。


 それは、辺境の観測所から魔族襲来を伝えるものだった。

 しかも、魔族を率いているのが先代聖女を名乗る女性だという。

『先代聖女と女神との約定を破って聖女召喚を行ったフィオーレ神殿と王家に対して、魔族の王エイスリンとその妻リナは宣戦を布告する』

 同時に王宮と中央神殿に同じ書状が届いた。

 新たな聖女選出で浮き立っていた王都は大混乱に陥った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ