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第二章 白炎の魔女と悪役令嬢②

 魔法庁の本部庁舎は大きな石造りの建物で、王都にほど近い小高い丘の頂上にある。

 使われていなかった古城を増改築したとかで、雰囲気は某テーマパークにあった魔法学校を思い出す。周辺には学生寮や職員用官舎もあって小さな町を形成している。ステファノが通っている魔法学院もここにある。

 聞いたところでは、この国はずっと聖女重視のフィオーレ神殿が幅を利かせていて、昔は魔法というのは邪法だとまで言っていたらしい。

 そのせいで魔法研究は他国に比べて遅れていて、隣国から嫁いできた王妃が魔法学院を作るまでは研究機関すらなかった。

 さらに、魔法を振興させるために魔法庁の創設を提言したのが王弟ペオーニア大公シルヴィオ、今の魔法庁長官だ。魔法学院を創らせた王妃の子で、当時はまだ十五歳の第二王子という立場だったというから驚きだ。

 彼自身も優秀な魔法使いで、幼い頃から才覚を発揮していたという。今は王弟という立場にいるが、度々馬鹿なことをやらかすコジモ王子より彼を次期王位継承者にしたほうがいいのではないか、という声がある。


 ……という凄い人に会うことになっているとは。


 採用初日、挨拶のために光里はデルフィーナに連れられて長官室に来ていた。

 大きな執務机と壁を覆う本棚という豪奢とは縁遠い実務重視の部屋。そして、目の前の人はデルフィーナとよく似たプラチナの髪を首の後ろでひとまとめして、職員と同じ上着を羽織っている。

 こちらを見る表情は険しいけれど敵意は感じられない。

 この人も凄い美形だ。三十代後半くらいだろうか。この年齢でこの存在感と落ち着きがあるのはさすが王族。

 あれ? でも、何となくステファノを大人にして王者感を足したらこんな感じかも。もしかしてまた親戚だったりしないだろうか。

「魔法庁長官シルヴィオ・ディ・サンクティスだ。ようこそ異界のお客人」

 うわあ。顔もいいけど、めっちゃいい声だ……。

 低くよく響く声。そして纏う空気がひんやりと冷たい。威圧されているような気がして、それが自分の引け目から来るものなのか、現実なのか区別がつかなかった。

 あちらの世界では自国のトップにも会うことがないくらいの庶民だったから、王様の弟とか聞かされたらさすがに身構えてしまうよな……。

 緊張しつつも光里は社会人として、基本はまず挨拶からだと頭を下げた。

「本日付で採用になりました。ヒカリと申します」

「頭を下げる必要はない。こちらの阿呆どもの仕業で迷惑をかけてしまったのだから。それから、職員として預かるのと同時に、君の身元保証人をペオーニア大公家で引き受けることになった」

 阿呆……ってあの聖女大好き王子様のことだろうか。デルフィーナは馬鹿だと言ってたし、ボロカスじゃないか……。

 それにしても王弟が身元保証人とか、こちらに寄る辺がない身としてはありがたいけど、過分な扱いは何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。

「……そこまでしていただく理由があるのですか?」

「現在、異界から来た人間は君しかいないからだ。今後何かの拍子で誰かが君を利用しようと企むかもしれない。当面の後ろ盾はあったほうがいい」

 たしかに、異界人は珍しいからと捕まって何かに利用されるのなんてごめんだ。虎の威を借るようだけど、僕にはこの世界で身を守る術はない。

 光里は納得して頭を下げた。

「ありがとうございます。そういうことでしたらよろしくお願いします」

 光里が神妙に答えると、長官はわずかに目を細めた。

「だが、私こそが何かに君を利用しようと囲い込んでいるとは思わないのかね?」

「囲い込んでいただけるほど、自分に価値があるとは思えないので。保証人になっていただいたご恩は、ここで真面目に働いてお返ししたいと思ってます」

 囲い込んだところで何にもなさ過ぎてガッカリされるくらいだろう。ラノベとかの異世界ものでよくあるチート知識なんて平凡な会社員にあるはずもない。

 そう思って正直に答えた光里に、長官はあまり表情を変えず何度か頷いた。

「なるほど。ではしっかりと働いてくれ。あと、息子が迷惑をかけていないか?」

「……息子さん?」

 戸惑っていると、背後にいたデルフィーナが「ステファノよ」と囁いてくれた。ステファノは長官の息子なのか。やっぱり。道理で似ているはずだ。

「いえ、むしろ彼にはお世話になっています」

「そうか。そこのロレンツィ補佐官……デルフィーナも私の従姪に当たる。何かあったら相談するといい」

 あーそうか。ステファノはデルフィーナと親戚だと言っていた。ステファノが長官の息子ならデルフィーナも他人ではない。

 そうだよな。王侯貴族って婚姻で繋がるから、国と国との関係は姻戚関係も重要なんだって高校の世界史の先生が言ってたっけ。

 確かデルフィーナの祖母とステファノの祖母が姉妹だから、デルフィーナの母とあの長官がいとこ同士……ってことか。長官の母親は元隣国の王女で、先代の王妃。つまりデルフィーナの母方って隣国の王族?

 ってことはデルフィーナってかなりいいところのご令嬢ってこと?


5月から隔日更新に変更します。次回更新は1日で、その後は一日おきです。

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