6話
教室のドアから当たり前のように顔を出したのは、親友の龍だった。
すぐ背後には、真白が苦しそうに膝に手を付いてゼェハァ言っている。
シーン。
あんなに騒いで賑やかだった教室も、また冷酷に静まり返っていた。
「よぉ!」
聞こえてないと思ったのか、もう少し大きな声で言う。
「どうしたー?急にしず……かに……」
「久しぶり、龍。元気だったか?」
「……なんでお前がここにいるんだよ?」
「……ごめん」
昨日、あたしは謝ったほうが良いって言ったけど、間違ったかも。
「ごめん? ごめんってなんだよッッ!? ふざけんなッ! 勝手に急に消えた癖にッッ」
龍が苦しそうに唇を噛みながら言う。
「そんな……そんな言葉が聞きたいんじゃねぇよッッ!!」
「辞めなよ龍!!」
「うるせぇ!! 真白は黙ってろッッ」
今にも掴み掛かりそうな龍に真白が泣きそうだ。
「ふわりぃ」
「そうだよ龍!! 辞めなよッッ!」
海夏君は何も言わない。
「ふわり! お前だってあんなにー…クソッ」
ガラガラピシャッ。
龍が荒々しく出て行くと、真白は「待ってよぉ〜」と教室のあたし達を気にしながらその後を追った。
「……ごめん」
「龍は海夏君が一番の親友だと思ってるから。それだけは分かってあげて」
「ちゃんと分かってるよ」
二人が出て行った戸を見つめながら少し悲しそうに笑った。
龍の気持ちは痛いほど分かる。
でも海夏君も色々あって、その色々をあたしたちは知らない。
無理矢理首を突っ込むのは、やっぱり駄目だよね……?
苦しい。喉がキリキリと苦しい。
昼休み。
「ふわり今日お昼どうする?」
ちぇっ。海夏君と食べたかったのに、もう人集りがある。
「龍は?」
「購買に行ってる。でも、多分私達とは食べないと思う」
分かりやすくとても落ち込んでるな。
シュンっとなっている。
「今日は二人で食べよ? 女子会だー!!」
教室の左前の席をとり、弁当箱を広げた。
あれ?
「わぁ〜! キャラ弁で可愛い〜!! どうしたの? 今日」
いつもはシンプルな弁当なのに、ヌーピィーのキャラ弁だ。可愛い。
「そういえば、あたし今日お弁当作るの忘れてた」
「え? でもじゃあなんで……」真白が目を見開き驚く。
「海夏〜! お前まだキャラ弁なんだな!! 変わんねぇな〜」
一人の男子の声が教室に響き渡った。
「そういえば、海夏一年の時からキャラ弁だったよね。今も変わらずちょっと安心。……ふわり??」
あ、わかったと言う顔をしたと思うと真白がニヤ〜っと笑う。
「知らないふりしても駄目だよ〜? 頑張って良かったね。キャラ弁、オソロだよ」
そう……オソロなんだけど、そうじゃないよ。真白。
あたしじゃないもん。
「いただきマス」
パクッ。
「……美味しい」
チラッと海夏君を見ると、目があった。
『ありがとう』口をパクパクして弁当箱を指差す。
ふわふわとした気持ちが溢れ自然と笑みが溢れた。
ふふっ。嬉しいなぁ。
「どした〜? お前、耳真っ赤だぞ」
いつもの癖でやっちまった……けど、ふわりのあの顔見たらいっか。
「うるせぇよ」