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マーちゃんの深憂  作者: 釧路太郎


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入場セレブレーション

 マーちゃん中尉試練の七番勝負は実況の水城アナウンサーと解説の宇藤さんに加えてゲスト解説として妖精マリモ子の三人で送ることになった。本来であればエキシビションマッチは実況の水城アナウンサーと解説に栗宮院うまな中将で行っていたのだが、今回は栗宮院うまな中将が本家に戻っているという事もあってこの布陣で実況解説を行う事となった。なぜマリモ子がゲスト解説として呼ばれているのかは誰もわかっていないけれど、そんなことは誰も気にしていないのだ。

 身長も小さくシルエットだけを見たら完全に小学生にしか見えないマリモ子なのだが、その小さな体には不釣り合いなほど育っている胸と尻が見ている者の感覚を狂わせる。天然でそうなっているのか何らかの妖精的な力で育っているのか不明ではあるが、世の男性諸君はそんなことを全く気にすることはなかった。一部女性はマリモ子について噛みつこうとしていたようなのだが、妖精であるわけだし人間の常識を当てはめても仕方ないという事で落ち着いたようだ。ちなみに、彼女の年齢を人間に当てはめると三十歳くらいになるという事も考慮してほしい。


「さあ、いよいよ始まりますマーちゃん中尉と栗鳥院松之助軍団の対抗戦であります。マーちゃん中尉一人に対して栗鳥院松之助三番隊副隊長補佐が用意した人員は七名と何かあったときのために数名という事であります」

「何かあった時と言ってもこの状況を考えるとマーちゃん中尉の方が何かある可能性が高いと思うんですが、それについてはゲスト解説のマリモ子さんはどうお考えでしょうか?」

「そうですね。私としてはマーちゃん中尉の強さを何度もこの目で見ていたのですが、対する松之助軍団の構成がどうなっているのかわからない状態なので何とも言えないですね。マーちゃん中尉が万が一敗れた場合はそこで終了となるのでしょうか?」

「今大会の規約によりますと、マーちゃん中尉は負けたとしても翌日は次の選手と戦う事となっております。なので、マーちゃん中尉としてはそこまで気負う必要はないのかもしれないですね。『うまな式魔法術』をお互いに習得している関係上マーちゃん中尉に不利な状況だと考えられるのですが、宇藤さんはどうお考えでしょうか?」

「マーちゃん中尉にとっては厳しい戦いになると思いますよ。『うまな式魔法術』の恩恵をおそらく世界で一番受けているのがマーちゃん中尉だと思うのですが、『うまな式魔法術』の最大の欠点である習得者同士ではダメージを与えることが出来ないという制約があるためマーちゃん中尉にとっては攻撃手段がほぼ無いようなものですからね。これはかなりの痛手となるのではないでしょうか」

「ただ、マーちゃん中尉には魔法に頼らなくてもいいような体術がありますからね。それに期待するというのもあるとは思うのですが」

 マーちゃん中尉は『うまな式魔法術』によって魔物や機械生命体に対して絶対的な力の差を見せつけることが出来ているのだが、それは奴らが『うまな式魔法術』を使うことが出来ていないからなのだ。同じ人間相手で『うまな式魔法術』を習得しているものが相手の場合、お互いに『うまな式魔法術』を使用した攻撃は無効化されてしまうのだ。もちろん、今回の相手は全員『うまな式魔法術』を習得しているのでマーちゃん中尉にとって攻撃手段を封じられたも同然なのだ。

 マリモ子が期待してしまうレベルでマーちゃん中尉は体術が得意ではあるのだが、それもあくまで一般レベルで得意であるという事でしかないのだ。栗鳥院松之助が選んだ七人の戦士が一般レベルであるはずもなく、各個人それぞれがマーちゃん中尉以上の能力であると思う方が自然だろう。


 いつもの試験会場で行われる七番勝負に先立って選手紹介が行われることになっているのだが、一番最初に出てきたのは全くやる気の感じられないマーちゃん中尉であった。

 本日は戦闘も行われないという事もあって普段は会場に入ることが出来ない一般観衆や入隊希望者も多数押し寄せていた。もちろん、このイベントはテレビでも全世界向けに放送されているのだが、直接その目で見たいと思っている人たちが今日のこの日のこの時間のためだけに阿寒湖温泉に集まっていたのだ。

「いつもはこの会場にいない観客に戸惑っているように見えるマーちゃん中尉ですが、その観客に向かって珍しく手を振っています。今までのマーちゃん中尉であれば他人に関心を向けることなどなかったと思いますが、何らかの心境の変化でもあったのでしょうか」

「マーちゃん中尉はこの戦いに全く乗り気ではないという話でしたが、観客を見て気持ちが乗ってきたのかもしれないですね」

「先ほど挨拶に行ったんですけど、マーちゃん中尉は栗宮院うまな中将とイザー二等兵から愛想をよくしないと殺すぞって脅されてましたね。もちろん、殺すなんて直接的な表現は使っていませんでしたが、私にはそう見えていました。ちなみに、イザー二等兵は私の事を虫を使って殺そうとしてきました」


「続いて登場するのはマーちゃん中尉の対戦相手をまとめる栗鳥院松之助三番隊副隊長補佐です。御三家の一つ栗鳥院家で現役の国防軍隊員ですがこれと言って目立った功績は上げていないようです。兄である栗鳥院梅太郎の功績があまりにも偉大過ぎるがゆえに今回の勝負では絶対に負けられないと言っていました」

「確かに栗鳥院松之助さんは目立った功績を残せていませんね。三番隊副隊長補佐という役職も名誉職ですので今回の勝負に賭ける気合は並々ならなぬものを感じますね。ただ、彼が直接戦わないという事に関しては少し疑問を感じています」

「私は彼の事を詳しく知らないのですが、姉の竹千代と松之助の二人で畜生兄弟と呼ばれているそうですね。長男の梅太郎は基本的には聖人君子だったそうなのですが、この兄弟と絡む時だけ性格がねじ曲がってしまうそうで、三人合わせて倍畜生と呼ばれていたそうです。ただ、この話は梅太郎の部分だけ創作の可能性もあるという事らしいです」


「そして、松之助に続いて登場したのは一番隊隊員である栗鳥院竹千代です。彼女は誰からも愛されるようなルックスを持ちながらもその心の奥はどす黒いもので覆われていると噂されています。実力的には副隊長になってもおかしくないとのことですが、その性格を考慮されて一般隊員として活動しているのです。ちなみに、その事は栗鳥院家の総意であるとのことです」

「彼女は身長も高く手足も長いのでスラっとした印象を受けますね。その見た目とは裏腹に恐ろしい性格をしているという事ですが、それを全く隠すつもりがないという事で一部に熱狂的なファンを作り出していますね。栗鳥院梅太郎以外の言うことは聞かないと公言するだけあって、全ての男性を敵に回しても問題ないと思っているそうです。ただ、彼女と勝負をして一対一で勝てる男性がこの世界にどれくらいいるかはわからないですね」

「彼女の事も私は全く知らないんですけど、あんなにおっぱいが小さい女性っているのかって事に驚いてしまいました。戦いでは私より強いと思うんですけど、女性としての魅力は私が圧勝していると思うので何の問題もないです。胸だけじゃなくてお尻も小さいみたいですし、この七番勝負が終わったら私と竹千代と栗宮院うまな中将とイザー二等兵と他のメンバーでミスコンテストをやってもいいかもしれませんね。でも、そんなことをしても私が優勝してしまうと思うので結果の見えた戦いはやめましょうか」

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