表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マーちゃんの深憂  作者: 釧路太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/44

美少女対決開幕

 最強の二等兵と名高いイザー二等兵は朝からずっと不吉な空気を感じていた。占いを信じているわけではないが、どの占いを見ても運勢は最悪となっていて良くないことが続く一日となるそうだ。会場に向かう直前に栗宮院うまな中将に占ってもらった結果も散々ではあったが、その苦難を乗り越えることが出来ればステップアップできるという事は教えてもらえた。少し複雑な表情を浮かべているイザー二等兵ではあったが、どこかすっきりしないように見えていたのだ。


「今日のイザーちゃんってあんまり乗り気じゃないみたいだけど、何かあったのかな?」

「たまたま見たテレビの中でやってた占いで悪い結果になってたんだって。普段のイザーちゃんならそんなことを気にしたりしないと思うんだけど、今日は何となく気になって他の占いとかも調べてみたって言ってたんだ。そうしたらね、どの占いを見ても運勢が最悪って事しかわからなかったみたいなんだ。私もだいぶ前に習った占いをしてみたんだけど、何回やってもイザーちゃんの運勢は最悪って結果しか出なかったんだよ」

「そんな日もあるんだろうな。俺も気付かないだけで運勢が悪いって言われる日もあったのかもしれないけどさ、気にしなかったらそんなの関係ないって思うんだよな。でも、女子って占いとか好きだから気にしちゃうのかもね」

「占いなんていいことだけ信じていればそれでいいと思うんだけどね。そう簡単にはいかないってのが女心ってやつよ」

 本日の入隊希望者のルーさんは控室に入る前に栗宮院うまな中将とマーちゃん中尉に挨拶に来たのだが、一つ一つの動作をとっても育ちの良さを感じていた。栗宮院うまな中将も人前に出る時は清楚なのだが、それとは違いルーさんの場合はそれが日常で特別なことは何もないと言ってるように感じていた。

「随分しっかりした子ね。あんなに所作がしっかりしてる子って四番隊までを探しても見つからないんじゃないかしら。戦闘になんて参加しない本物の上流階級って感じよね。イザーちゃんは割とそういうのも出来る方なんだけど、私って油断すると素が出てしまうのよね。生まれたときからお嬢様だって言うのに、この違いって何なんだろう」

「性格じゃないかな。うまなちゃんもイザーちゃんも人との距離を詰めようとするから畏まった感じよりもフランクな感じになってるんだと思うよ。あと、見た目の清楚さかな。二人とも清楚だとは思うけど、ルーさんに比べると偽物っぽさがあるんだよね。何となくだけど、ルーさんは本物っぽい感じがするって思ったんだ」

「本物っぽいってのが何を指しているのかわからないけどさ、私もあの子は特別なんだろうって思うよ。その特別がイザーちゃんにとって辛いことになりかねないとも思うけどね。それにしても、あの子ってなんであんなに影が大きいんだろうね」

 マーちゃん中尉はそう言われて部屋から出ていくルーさんの影を見てみたのだ。確かに、言われてみると体の大きさと比べて影が大きく見えていた。それに、なぜかルーさんの影は光源に向かって伸びていたのだ。そんなことはあり得ないと思うのだが、それが彼女の持っている力だとしても何の能力なのかがさっぱりわからなかった。

 ただ、朝からたくさん出ているイザー二等兵にとって良くないことが起こってしまう危険もあるのではないかと感じていたのだ。


「本日は、入隊希望試験で一度も負けていないイザー二等兵とミステリアスな美少女であるルーさんの試合をお送りいたします。イザー二等兵の事は皆さんもうご存知だとは思いますが一応簡単に説明させていただきます。ここまで入隊試験の試験監督官として入隊希望者と戦ってきたのですが、今まで一度も相手の攻撃が直撃したことなどないのです。相手の攻撃を避けるのが異常にうまいのです。宇藤さんはその点をどうご覧になっていますか?」

「そうですね、イザー二等兵の防御技術や今までの実践経験を考えると入隊希望者の技術では攻撃を充てるのも一苦労だと思いますね。入隊希望試験が早く終わった時に行われるマーちゃん中尉とイザー二等兵の模擬戦でもなかなか直撃はしてないですから実戦経験の少ない入隊希望者ですとかなり難しいと思います。ですが、ダメージを与えるのではなく当てることだけに焦点を絞れば道は開けるのかなとも思いますよ」

「なるほど。では、本日入隊試験を受けるルーさんについてはどのように見ているのでしょうか?」

「今回の試験に参加することで初めて知ったので配布されている資料と紹介映像を見ただけの感想になってしまいますが、魔法とも格闘術とも違うような動きをしているように見えるんですよね。カメラの前で緊張していたという可能性もあると思うのですが、それにしては動作もスムーズなんですよね。戦闘スタイルとは話がそれてしまいますが、清楚系美少女対決なんて世間では言われているのも面白いですね。怪我もなく平和に終わってほしいなんて声もよく聞きますね」

「午前中に宴会場で取材をしていた時もそういった話をよく聞きましたね。今まで男性とばかり戦っていたイザー二等兵ですが、同性である女性と戦うことについて何かやりにくいとかはあったりするのでしょうか?」

「特にそういったことはないと思いますよ。イザー二等兵は相手が誰であれ戦うことには変わりないとおっしゃってましたからね。人間でも魔物でも結果は変わらないという事だそうです」

「今回はイザー二等兵の強さだけではなく、初の女性対決という点にも注目していきたいと思います。入隊希望試験はこの後すぐ開始される予定となっております」

 日本中が注目をするイザー二等兵とルーさんの対決は誰も予想しなかった結末を迎えるのである。イザー二等兵としてはとても不本意だとは思う結果になるのだが、栗宮院うまな中将も何と声をかけて良いものか悩んでしまうのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ