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第十三話 巨大獣ゲゲルル 見えない敵を討て! 4

「皆さん、ダバール星人は悪魔です! あいつ等はこともあろうに非戦闘員の幼児達を人質に取った挙句、約束を反故にして爆殺しようとしたのです!」


 ふざけるな! 幼稚園バスを爆殺しようとしたのはお前だろうが!

 三島の姿のアイツは俺達を徹底的に地球人の敵に仕立てようとしているのだ。


「アイツらはそれだけではなくあの北原博士の奥さん、みどりさんを拉致し、デラヤ・ヴァイデスに連れて帰ってしまったのです!」

「あの……三島長官、そのデラヤ・ヴァイデスとは一体?」

「う、うむ。デラヤ・ヴァイデスとは……ダバール星人の巨大要塞の名前だ」

「流石は三島防衛長官、既に敵の基地の名前まで把握しているのですね! それで、みどりさんの奪還計画はどうなっているのですか?」


 この質問はアイツには不利だ。

 何故ならアイツは本物の三島防衛長官と違い、そんな作戦を考える事が出来る程に防衛軍の中を把握していない。

 それに対しアイツはこう返答した。


「ガッダインチームに向かわせます。あのロボットはダバール星人と戦う為に作られた巨大ロボ、その為の力です!」

「おお、それは頼もしい!」


 嘘だ。

 ガッダイン5が作られた本当の目的は、マグネコンドルを防衛する為、そして圧政に苦しむダバール星の皇帝デスカンダルから弱い人達を守る為だ。

 決してダバール星人と戦う為の武器なんかではない。


 その事をテレビに叫んでいたのは俺ではなく、俺がスパイドローンで様子を見ていた北原未来要塞ベースの代々木博士だった。


「嘘だ! 三島……お前一体本当にどうしてしまったんだ? あのガッダイン5とマグネコンドルは光一郎の夢、儂等がそれを継いだんじゃろうが、そんな事も忘れてしまったのか」

「三島のおじさまっ。どうしたのかしらっ。あんな人じゃなかったのにっ」


 どうやら代々木博士も千草も最近の三島の様子がおかしい事に気が付いているようだ。


「代々木博士っ!」

「おお、ケン坊くんか。掃除は終わったのかい?」

「はい、終わりました。それで、どうしたのですか? 何だかテレビを見て何か言ってたみたいですが」

「キミは気にする事ないぞい。さあ、仕事の続きを頼む」


 どうやらケン坊はテレビに映っている三島を見て様子を察したようだ。


「わかりました。――汚いモノは早く掃除しないと後が大変な事に――なりますよね」


 彼はやはり切れ者だ。

 何気ない台詞に聞こえるようにしつつ、これは明らかに三島防衛長官の姿の彼への揶揄だ。


「そうじゃな、しかしケン坊くんが手伝ってくれるようになって本当に助かったぞい。これで儂は安心して研究に打ち込む事が出来るからのう」

「博士、それはマグネコンドルの設計図ですか?」

「ケン坊くん、どうしてそれが??」

「……竹千代くんがトレスしてたのを見ました。ごめんなさい」


 代々木博士は何だか困ったような顔をしていた。


「うーむ、まあ竹千代くんからなら仕方ないぞい。しかしケン坊くん、この話は絶対にお父さんにも内緒だからな」

「はい、わかりました!」


 ケン坊の中身が本物の三島防衛長官だと知っているのは俺だけだ。

 他の連中は彼が瀕死から甦った際に素晴らしい能力に目覚めたと考えているようだ。



 オレがスパイドローンの映像を見ている間にテレビのインタビューが終わりに近づいていた。


「皆さん、この三島がいる限り……ダバール星人は誰一人生かしては帰しません! あの侵略者、悪魔の軍団を倒す為……防衛軍は命を懸けてダバール星人を殲滅すると誓います!」


 この発言に記者やマスコミ関係者は全員拍手喝采だった。


 やられたっ! これでアイツの狙い通りに大半の地球人はダバール星人を相容れられない敵だと認識してしまったのだ。


 この流れを変えるのはかなり至難の技だ。

 仕方ない、こうなれば本来のストーリー通りに巨大獣で地球を侵略しなくては。

 下手に行動を変えるとそれこそ三島の姿のアイツの思うツボだ。

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