第十三話 巨大獣ゲゲルル 見えない敵を討て! 3
この十三話、ガッダイン5大百科にはきちんと話も巨大獣との戦闘に関しても書いているのだが、やはり実際の映像とスチール写真ではイメージが違う。
いくら俺が生まれる前の昔の戦争や東京オリンピックの話を聞いても、実際に本人が体験した物、見た物でなければイメージは違ってくる。
かろうじて覚えているのは万博くらいのモノだ。
この万博で見た宇宙館、月面館が俺のロボ系エンジニアの原点だとも言える。
まあその話はさておき、ガッダイン5の十三話、この話が後々の伏線になっているのは事実であり、ここで視聴者は初めてダバール星人の一番偉い奴、または悪い奴が――皇帝デスカンダル――だと知ったわけだ。
デスカンダル皇帝は第一王子ハリール(光一郎)の腹違いの弟で、シャールケンからすると叔父に当てはまる。
まあ昔から貴族なんてどこかで血縁がぶつかるのでこれは取ってつけた設定という事ではなさそうだ。
なお、ブキミーダも一応は貴族の名家の生まれではある。
だから後々出てくる奥さんとは政略結婚であり、愛情といったものは無かったようだ。
彼の娘が中盤の話でゲストキャラで登場するが、これが奥さんに似た長身の美人で、ブキミーダに似なくて良かったな、と視聴者全員の共通意見だったようだ。
本編でのブキミーダは貴族の生まれをやたらと強調し、地球人を奴隷扱いにしていた。
バルガル将軍も将軍というだけに軍人系の貴族だったから前半はそういうキャラだったのだろう。
だが、ミザーリンは貴族の妾の娘で幼い頃から弟と一緒に虐待されて育った。
その後、皇帝直属の訓練機関に身売りされた彼女は過酷な訓練を受けた。
だから本編の彼女は他者を一切信用せず、全てを利用する冷徹な諜報活動員だったのだろう。
これらの設定は浜野監督より、ロマン路線の長富監督の得意分野だと言える。
彼が手がけた――明けの明星――もやはり、星座の名前を持つ貴族と平民との革命の話だった。
長富監督は超電磁メカ・ガッダイン5で革命話を、獣将ダイノスでロミオとジュリエットを、未来戦士エルオリオスで戦災孤児とクローン問題をテーマにした人間ドラマを描いた。
なお、この革命話が大ヒットしたのか……放送終了後、ガッダイン5は東南アジアの国で大ヒットした。
奇しくもこの悪辣な皇帝デスカンダルと特権貴族を倒す内容が当時の独裁大統領への革命の火種となったからである!
当時の大統領はこの内容に激怒し、放送を中止した。
だが革命成立後、この後半の話が見られるようになり、東南アジアの国ではガッダイン5はGADDAIN5として知名度がとても高い作品だ。
この作品の主題歌が軍歌として採用されているなんて国、世界中探してもここだけだろう。
それだけガッダイン5は人気があると言えるのだ。
「ご主人様ー。さっきから革命だのガッダイン5だの何言ってるんですかー?」
「えっ?? マーヤちゃん、俺何か言ってた!?」
「はい、ブツブツ何かさっきから言ってました、少し気持ち悪かったです」
マーヤちゃん、キミそんなに明け透けに物を言うキャラだったっけ??
これもバックアップの不具合の産物なのだろうか……。
「ご主人様ー。テレビにあのオッサン出てますよー」
「あのオッサン? 誰だ」
「ミシマーとかいう奴ですよ」
何だって!? 三島防衛長官の姿のアイツがテレビに出ている?
俺がテレビを見ると、そこにはダバール星人の奇岩島基地から脱出してきた英雄として三島の姿のアイツがインタビューを受けていた。
「三島防衛長官、流石です。流石は正義の人三島守人氏! 彼は勇敢にもたった一人で卑劣なダバール星人から政府要人の子供達の乗るバスを助け出しました。その際に彼は自らを人質にしてまであの凶悪な宇宙人と交渉をしたのです!」
なんというか、まあ典型的なプロパガンダをヤツはテレビの視聴者向けに展開しているようだ。




