第十二話 巨大獣アゴゴル 三島長官の選択 7
「遅いぞキサマら! サッサとワシを守らんかっ! このグズ共がっ!!」
ガッダイン5にスパイドローンで取り付けた通信装置で三島の姿のアイツの声が聞こえてきた。
アイツ、マジで人に対する感謝という感情が皆無だな。
普通なら救援に来てくれた相手にはそれなりに社交辞令でもありがとうだの、助かっただの、何か感謝の気持ちを伝えるもんだ。
だがアイツにはそういう思考自体が存在しないのだろう。
せっかく応援に来たガッダインチームも助けた相手にそう言われたらやる気も無くなるってもんだ。
まあダンボット3での主人公達は戦って町を守っても――お前らがいるから敵が攻めてくるんだ!――と罵倒される物語だったが、あれは移民問題や正義の在り方等に対するアンチテーゼだったので仕方が無いと言えば仕方が無い。
また、あの街の住民の気持ちもわからないではない、何故なら日々の日常生活を潰された原因が主人公の星ファミリーのせいだという風にしないと怒りのぶつけどころが無かったのだから。
だがはっきり言って今の三島長官の姿のアイツは危険な所を助けてもらった側そのものなのに、それに対しての感謝どころか罵倒って……あー。そう言えば前の人生の仕事場にもそういうブラック上司っていたよな。
感謝出来ない奴ってのは――謝が負けだと思い込んでいる節がある。――つまり、感謝や謝罪は相手よりも立場が下になるという思い込みだ。
「ちぇっ、折角助けてやったのにあの態度なんだよ」
「まあ気にするな、そんな奴は所詮変わらん」
「でもおかしいわっ。前の長官はもっといい人だったのにっ」
「今はそんな話をしている場合ではありませんっ! 早く長官を助けましょう」
ガッダインチームは既に合体した状態で現れた。
まあダインマシンのダインパンツァーとダインビークルは分離した状態で飛ぶのは出来ないので合体した状態で空を飛んできたのだろう。
「巨大獣アゴゴル! ガッダイン5より長官を狙え!」
「ガギャアアンッ!」
アゴゴルがグローン円盤を庇ったガッダイン5にクローで攻撃をした。
ガッダイン5は不慣れな空中戦でしかも下が海という状態でイマイチ本領発揮できていないようだ。
「ええぃ! このウスノロどもがっ! ワシが狙われておるでは無いか!」
三島長官の姿のアイツはグローン円盤で逃げようとしている。
「スカールミサイル、発射!」
ドグローンの歯の部分がミサイルになって飛んだ。
だがグローン円盤に弾着する前にガッダイン5が全て切り払った。
SランサーとNランサーは両手に持てば小型の双剣のようにも使える。
「ギャーアアォオウ!」
しまったっ! アゴゴルがスカールミサイルの爆発に巻き込まれ、翼がもげてしまった。
このままでは墜落してしまう!
「アゴゴル、ガッダイン5にしがみつけっ!」
落下する前にアゴゴルはガッダイン5にクローを絡ませ、もつれ合うように海に落下した。
海中での戦闘はあまり得意ではないガッダイン5だ。
アゴゴルも水中戦特化では無いが条件としては悪くはない。
これならガッダイン5を倒せるかもしれない!
アゴゴルのスパイクアローがガッダイン5に命中した。
「うわあぁあ!」
「キャアアッ!」
「くっ……!」
アゴゴルはヒット&アウェイを得意とするスピード特化の巨大獣だ。
空中が水中になっても戦闘スタイルはあまり変わらない。
「くっそー、ちょこまかと!」
「龍也さん、動き回るなら捕らえてしまいましょう! 超電磁ワイヤーです。ワイヤーを何重にも絡ませてみましょう!」
「流石は竹千代だぜ、よーしっ! 超電磁……ワイヤーッ!」
ガッダイン5の超電磁ワイヤーが網上に何重にも巻き重ねられ、動き回る巨大獣アゴゴルを捕らえた!
「よっしゃぁー! 超電磁ウェエエブッ!」
水中での超電磁ウェーブは通常より威力が増しているらしく、水圧で更にダメージまで受けているようだ。
「超電磁! スマアアアッーシュッ!」
「アゴゴォオオルウウゥウッ!!」
巨大獣アゴゴルは超電磁スマッシュを受け、水中で大爆発した。




