第十二話 巨大獣アゴゴル 三島長官の選択 4
何と、俺を助けてくれたのはミザーリンだった。
「っこのポンコツメイドロイド! アンタ一体何やってんのよっ!?」
「テキ、ゾウエン……ハイジョシマス」
気を付けろ、今のマーヤは普段のゆるふわポンコツメイドロイドではない本来の……エリミネーターロイドだ!
三島の姿のアイツには戦闘能力はほぼ無いが、今のマーヤは下手すればバルガル将軍にすら匹敵する破壊力だ。
まあマーヤがこの力を発揮するのは番組でもかなりの後半なんだが、まさかまだ前半の今でこの状況になるとは。
こうなったらどうにかマーヤをリセットしてバックアップをするしかない。
実は彼女に与えていた猫耳型の大きなリボンパーツは今までのデータバックアップシステムになっている。
それなので一度彼女を気絶させて再度フォーマット化してからリボンパーツからのリカバリーをかければ元に戻る。
実は俺はガッダイン5を最終回まで見ているので、メイドロイドマーヤのシステムも全部把握しているのだ。
――メイドロイドマーヤ――
本来はマーダーロイド、エリミネーターロイドとして制作されたダバール星人のアンドロイド兵器。
敏捷性に優れ、足技による攻撃に特化していて、数多くの敵を倒した。
だがあまりにも強すぎるその力は実験途中に軍で暴走を起こし、数多くの負傷者を出してしまう。
バルガル将軍とアクラデス指令の二人が指揮してようやく鎮圧化に成功。
あまりにも強大すぎる力は軍で使うには持て余しすぎるので下半身パーツを取り外してフロートシステムに変更した上で、メイドロイドとして再調整。
この際のマーダーロイド・メイドロイドマーヤの製造責任者の技術士官だったのがブキミーダだったわけだ。
――って俺も設定忘れかけてけど、ガッダイン5大百科には特別コラム枠扱いだった。
つまりこの記事は、数行程度で巻末のオマケコーナーに載っていたので設定を知らない人が大半、アニメだけ見ていた人ならまずマーヤがそんな兵器だったとは知らないだろう。
とにかくミザーリンが必死で食い止めてくれている今、どうにか彼女を止めないと。
幸いフロートシステムのおかげで本来の殺人的足技は無いから俺でも近寄る事は可能だ。
こうなったら、悪く思うなよ……マーヤちゃん!
ビビビッ!
「!! キノウ……フグアイ、セイノウ40パーセントダウン……」
成功だ、マーヤの緊急用外部コントローラーを持っていてよかった。
本来は使いたくなかったんだが、三島の姿のアイツが何をしでかすかわからなかったので俺はこれをポケットの中に入れておいたのだ。
これでどうにかリセットボタンを押せる。
マーヤちゃんのリセットボタンは、首のココだ!
「ガッ…………」
「キッ、キサマ。何故マーヤのシステムを知っている!?」
この台詞で確信した。
三島防衛長官の姿のコイツは間違いなく本編終了後の処刑されたブキミーダだ。
何故ならこの外部コントローラーや初期リセットシステムは番組の終盤で出てきた設定であり、それを作ったのはその時のブキミーダだったからだ。
つまりこのマーヤの制御システムは番組後半で無いと出てこない物体というわけだ。
しかし俺はそれを今、前半のうちに使用したわけだ。
つまり、三島長官の姿のブキミーダと、この転生者である俺が入っているブキミーダ、どちらもが番組の終盤の結果を知っているというわけだ。
これはかなり厄介な事になってきた。
リセットのかかったマーヤは、ミザーリンの手の中で目を覚ましたらしい。
「マスタートウロク、オネガイシマス」
これで下手にミザーリンが登録されてしまうとややこしい事になってしまいそうだ。
さて、初期登録は一旦保留にしてリボンのバックアップシステムを起動させよう。
「え? わたくし?? ミザーリンだけど」
「リョウカイ、マスター。ミザーリンサマ、トウロクシマシタ」
えー、バックアップ途中で登録されちゃったらシステムどうなっちゃうのよ!?




