第十二話 巨大獣アゴゴル 三島長官の選択 1
原作通りに巨大獣バグゲグは爆散し、三島の姿のアイツは人質として奇岩島基地に連れて行かれた。
これはあまり良くない展開かも知れない。
なぜなら三島の姿のアイツは俺達のせいにして幼稚園バスの下に時限爆弾を設置した。
もしあの爆弾が爆発していたら、政府要人の子供達は全て吹き飛んでいただろう。
――アイツ、これが目的だったのか。
人質交換のタイミングに合わせ、時限爆弾をセット。
多分狡猾なアイツの事だ、地球のマスコミにダバール星人は人質を爆殺しようとする卑劣な集団だと見せつける事によって、地球とダバール星の歩み寄りを出来なくするのが目的だったのだろう。
原作でもブキミーダのやり方はマスコミ等を焚きつけたり、二つの反する組織を敵対させたりする搦め手を得意とした。
だが今のアイツは捕虜として拘束中。
下手に動けるわけが無いのだ。
アイツに原作の三島のような縄抜けの技術も無ければ、戦闘能力も人望も無い。
それなのにアイツはどうしてこんなにすんなりと人質になったのだ??
原作との違いを考えてみよう。
原作のガッダイン5大百科の十二話はこうだった……。
――三島防衛長官は幼稚園バスと自らを人質として交換させ、奇岩島基地に到着した。
牢屋に入れられた三島防衛長官は度重なる拷問に対し、一切屈しなかった。
非力なブキミーダが出来る拷問なんてたかが知れている。
その為ブキミーダはメイドロイドのマーヤにやらせようとするが、マーヤはブキミーダのいう事を実行しようとして主であるブキミーダに拷問をするというギャグ話を挟んでいた。
これでどうにかギャグとシリアスのバランスを取ろうとしたのかもしれないが、残念ながら前の話が重すぎてギャグとしては成り立たなかった。
その後、拷問係はブキミーダからバルガル将軍に代わり、バルガル将軍は何度も三島を打ち据えた。
だが三島は満身創痍になっても決して防衛軍の秘密もガッダイン5についても口を割らなかった。
そんな三島に感心したバルガル将軍は拷問を止めさせ、彼に捕虜としての食事を与え、その男気を讃えた。
バルガル将軍は三島防衛長官に対し、休戦を提案する。
その条件とは、地球防衛軍の解体及びガッダイン5の凍結だった。
バルガル将軍はこの条件を飲めば、ダバール星は一切の民間人への虐殺や侵略、略奪を禁止し、地球人を人道的な扱いにするとシャールケン提督に提案すると言ったのだ。
悩みに悩んだ末、三島長官は結論を出した。
それは断固とした拒否だった。
彼は――ここでお前達と和解する事は確かにこれからの犠牲を失くす意味では最良の選択だろう、だが……それでは今まで毒水で亡くなった非戦闘員や、基地で戦闘に巻き込まれて死んだケン坊、そして親友の妻である北原みどりさん、これらの人々の死は何だったのか、ただの犬死ではないか! だから私はこの人達の無念の為にこの条件は飲めない!――と、バルガル将軍に伝えた。
交渉が決裂したバルガル将軍は仕方なく彼を再度牢屋に閉じ込めろと兵士に命じた。
だが、三島防衛長官は縄抜けの技術を使い自由になった両腕でダバール兵を倒し、ロボット格納庫に向かい、グローン円盤を使って奇岩島基地から脱出した。
三島を追いかけた巨大獣アゴゴルだったが、海上でガッダイン5と鉢合わせる。
ガッダイン5は不慣れな水中の戦闘だったが、超電磁ワイヤーとビッグミサイルでアゴゴルにダメージを与え、水中で超電磁ウェーブからの超電磁スマッシュで倒した。
そして助けられた三島防衛長官は北原未来要塞ベースに到着し、代々木博士と昔話をしてから防衛軍基地に帰った。――
という話だ。
この話の主役はほぼ三島防衛長官だったが、視聴者は別に彼の出番が多くても特に文句は出なかったらしい。




