第十一話 巨大獣バグゲグ 人質の命はあと一分! 5
「何だと! 政府要人の子供の乗る乗り物を占拠して人質にするというのか!?」
「左様でございます」
「ええい! この痴れ者が! 恥を知れ!」
まあシャールケンのこの反応は想定内だ。
彼はバルガルと同じタイプの武人、人質や毒といった作戦を嫌う。
だから原作ではブキミーダが彼に蛇蝎の如く嫌われていたわけで……。
「ブキミーダよ、最近のお前の在り方、余は評価しておったのだぞ。それを何だ! 人質を取るような卑怯な手を使ってまで勝とうというのか!」
「ご怒りはごもっとも、ですが少しはワシの話を聞いて頂けませんでしょうか?」
「何だ、これ以上余の機嫌を損ねるようならお前の地位を奪い営倉にぶち込むぞ!」
まさか三島防衛長官の姿のアイツから子供達を守る為とはとても言えない。
こんな荒唐無稽な話信じられるわけも無ければ、俺が地球人だとバレてしまう。
――だからこういう切り口で話を進める。
「政府要人の子供をさらうのはきちんと理由があります。彼等彼女等は後の地球の指導者になる者達、それ故に今のうちにダバールが敵では無い事を伝え、後のシャールケン様の地球統治の際に彼等を正しく教育する事で地球の統治の補助をさせるのです」
「何、それではお前のしようというのは人質を取って脅す事では無いと?」
「はい。後の地球の統治の為に平和に現地の者達を正しく教育する事で我等の目的を達成しやすくしたいと考えております」
我ながら適当なコトを言ったもんだ。
だがこれで信じるのがシャールケン提督という人物だ。
彼は良くも悪くも真っすぐな性格で、物事の裏を疑わない。
だから原作ではバルガルは彼に従い、ブキミーダやミザーリンは彼に従ったふりをしながら出し抜く事を考えていた。
だからシャールケンは今のオレの言う事を信用するだろう。
「よかろう! ブキミーダよ、お前に任せよう。後の地球統治の為の先見の明、まさにあっぱれだ! 早速地上に降りて巨大獣で政府要人の子供を確保するがよい」
「はっ! 承知致しました。シャールケン様」
さて、これで目的を達成する事が出来そうだ。
三島防衛長官の姿のアイツよりも先に子供達を確保し、原作の悲劇を避けるのだ。
本来この話、政府要人たちの子供は残り一分のタイミングで助けられたはずがブキミーダの二重の罠によって全員死亡という衝撃的な結末が待っていた。
それが子供の中に仕掛けられた人間爆弾によるものだ。
だがケン坊を殺した後にさらにこのシナリオを出してしまうとこの作品がもう収拾のつかない暗い話ばかりになるという事で流石に監督にストップがかかった為、アニメ雑誌の先読みの話と実際の放映話の入れ違いが起きてしまったのだ。
そしてこのスケジュール調整、一話分の話の入れ替えになってしまい、結局総集編の制作すら間に合わずに視聴者達には十一話の前に特別リクエストと称して第一話の再放送が行われた。
どうやら監督交代の裏話も、この十一話のシナリオ差し替えが最大の原因だったようだと後のネットでは噂されている。
監督交代劇についてはガッダイン5大百科には書かれてない内容だったので、あくまでもこの話はイッタッターの投稿で当時の製作スタッフの暴露話から漏れた内容だ。
さて、それでは幼稚園バスジャック用に巨大獣バグゲグを作る事にするか。
これで当分このデラヤ・ヴァイデスのロボット格納庫に来ることは無さそうだな。
俺は何度も使ったロボット格納庫を見て感慨にふけっていた。
「ご主人様ー。とりあえずちゃっちゃとやっちゃいましょうよー」
「ああ、そうだな。作業に取り掛かるか」
マーヤちゃん、キミ本当に空気読まないね。
まあそれが可愛らしいんだけど。
「ブキミーダ様ー。わたくしも何か手伝いますわー」
ここで話をややこしくするミザーリンまで登場した。
もうこの状況に慣れてしまった俺が怖い……。




