第十話 巨大獣ゴミンゴ ケン坊の命を救え! 5
とりあえず今分かっていることを整理しよう。
防衛軍の三島防衛長官の中に入っているのはブキミーダで間違いない。
そして原作で死亡するはずだったケン坊の中に入っているのは本物の三島防衛長官。
ミザーリンはダバール星を裏切ったわけでは無いが、姉のフリをして接触した青木流に気を惹かれてしまい、彼を助ける為に防衛隊の女士官に成りすまして北原未来要塞ベースに救援に駆け付けた。
これが今の時点で分かっている内容だ。
この後の話も俺はガッダイン5大百科でほぼ内容を把握しているが、話は少しずつずれてきている。
まずは俺の足を引っ張るのは間違いなく三島防衛長官の姿をしたブキミーダだろう。
下手すれば俺が人道的な方法でヤツが原作でやろうとした非人道作戦を回避したとしても、ヤツが三島防衛長官の立場を利用して上書きしてくる可能性は十分考えられる。
そうなるとせっかく四十四話で俺が処刑を免れたとしても、地球とダバール星の泥沼の全面戦争になりかねない。
ダバール星の皇帝と最終的に組んで宇宙の支配者になろうとしたのがあのブキミーダだ。
シャールケン提督に見限られ、左遷されたアイツは、その後新司令官のアクラデス執政官にすり寄り、シャールケン提督を陥れる。
そのアクラデスにも信用されたわけでは無く、風見鶏のような態度であちこちにフラフラしていたブキミーダは地球防衛軍に情報をリークし、アクラデスすら陥れようとした。
その事に気付かれ、処刑されそうになったブキミーダは、アクラデスの秘密を皇帝に告げ口し、生き延びる。
その後地球とダバール星の全面戦争が開始、そして皇帝の補佐の役割を貰ったブキミーダは、その悪辣な悪知恵で更に凶悪な巨大獣や作戦を考え、実行した。
コイツのせいでどれだけ多くの人達が犠牲になったのか。
そんな邪悪な奴がよりによって、地球防衛軍の司令官の立場に居座っているのだ!
これは下手すれば原作以上の不幸が起きてもおかしくはない。
ブキミーダは言ったところで誰にも信用されず、本人も非力だったので悪知恵しか使えなかった。
それに対し、三島防衛長官はいくら豹変したとはいえ、かつての軍人としての立場がある。
その上、今までに鍛えた肉体があるのであの非力なブキミーダでもよほど不摂生をしない限りは三島防衛長官の身体を使い放題だとも言える。
つまりは元からチートな肉体に非力で狡猾な男が入り込んでしまった状態だ。
アイツを野放しにすると、ダバール星だけでなく地球も破滅しかねない!
俺はこの後どうにか生き延びる必要があるが、話はそれだけでは済まなくなってきた。
つまり、俺は三島防衛長官がニセモノだと証明させつつ、本物の三島防衛長官であるケン坊と接触して真実を明らかにしなくてはいけないのだ。
そうなるとカギとなるのは……。
「ブキミーダ様、今戻りましたわ」
「ミザーリン、お疲れ様。大変だったみたいだな」
「やーん! ブキミーダ様に褒めてもらえましたわー」
ミザーリン、彼女は今地球防衛軍の軍籍とダバール星の諜報官としての立場がある。
これは上手く立ち回れば双方の橋渡しに出来る。
だが、もし失敗すれば二重スパイとしてどちらの陣営かに処刑されかねない。
この戦い、本当の命がけになる。
だが何が何でも俺達はブキミーダを止めなければいけない!
その為には原作の流れを組み替えてしまう危険も冒さなければいけない。
今出来る方法を考えるべきだろう。
とにかく今はデラヤ・ヴァイデスに戻ろう。
「バルガル将軍殿、それでは一旦デラヤ・ヴァイデスに帰還しましょう!」
「うむ、頼む」
そして俺達は機動要塞ドグローンで地球からダバール星の拠点要塞デラヤ・ヴァイデスに帰還した。
さて、戻ったらシャールケン提督に全員叱責されるのは確定だな……。




