第十話 巨大獣ゴミンゴ ケン坊の命を救え! 3
「小僧、ここは戦場だ。怪我をしないうちに立ち去れ」
「黙れ! 侵略者めっ! ワシの目の黒いうちはこの星を貴様等には決して渡さんぞ!」
「小僧……人が優しく言っているうちに大人しく言う事を聞け。吾輩は無駄な血を流したくはない」
何だ!? 俺はスパイドローンでありえない光景を見ていた。
それは、意識不明の重体になっていたはずのケン坊がスチール製の箒を持ってバルガル将軍と向き合っている映像だった。
「黙れ! 貴様がばるがる将軍だな! よくもこの星を!」
「小僧……人が大人しくしていれば調子に乗りおって、少しお仕置きが必要なようだな」
バルガル将軍は剣を柄から出さずに構えた。
「小僧、悪く思うなよ」
「貴様こそ、ワシを舐めるでないわ!」
バルガル将軍がケン坊を鞘付きの剣で打ち据えようとした。
だが、ケン坊はその剣を躱し、バルガル将軍の足にスチール製の箒の柄を叩きつけた。
「つうっ! 小僧、やるではないかっ」
「黙れ、侵略者。貴様等こそ尻尾を丸めてさっさと立ち去れ!」
「調子に乗るなっ! 小僧っ!!」
バルガル将軍は剣を捨て、素手でケン坊の身体を殴ろうとした。
だがケン坊はスチール製の箒でその拳を受け止めた。
だがあまりの威力に、スチール製の箒の柄はぐにゃりと曲がってしまった。
「くそっ、慣れない身体では思い通りに動けんかっ!」
「坊や、そこを離れなさいっ!」
「防衛軍の者かっ。だが見覚えのない顔だなっ」
「つべこべ言ってないでさっさとどきなさいっ」
バルガル将軍とミザーリンが鉢合わせたが、バルガル将軍は彼女がミザーリンだとは気が付いていないようだ。
「防衛軍の者か、女に手を上げるつもりはない、その小僧を連れてさっさと立ち去れ」
「残念だけどそうはいかないのよ、覚悟っ」
これは芝居なのか? ミザーリンはバルガル将軍に拳銃を構え、威嚇している。
防衛隊の隊員達は、ダバール星人に占拠された基地を次々と取り返していった。
「フッ、興が削げた。ここは一旦退くとしよう。そこの小僧、お前……良い目をしているな、気に入った」
「バルガル将軍……」
「だが次もし戦場で見かけたら殺す! 吾輩はもうお前を子供とは思わん、一人の戦士として勝負してやろう! さらばだ!」
バルガル将軍は残っている兵士達を引きつれ、北原未来要塞ベースから撤収した。
そして指令室の防災シャッターが開き、基地のスタッフ達は基地の通常配備に戻っていった。
「ケン坊。お前……生きていたんだな」
バギッ!
鈍い拳骨がケン坊の頬に叩き込まれた。
その後、無事なケン坊の姿を見た彼の父親は、息子を見て涙を流した。
「バカヤロウ、バカヤロウ、父ちゃんを心配させるな。」
「父ちゃん……? お父ちゃん」
「よかった、お前が無事でよかった。もう川の深みに行くんじゃねえぞ」
「お父ちゃーん! お父ちゃーん」
ケン坊は父親にしがみついた。
先程までダバール星人相手に戦った子供だとはとても思えない姿だ。
俺の思い違いなのかな? あのケン坊の中身、本人とは別人のように思ったのだが……。
「ケン坊くん、無事だったんだね」
「あれ、キミは? 竹千代?」
「そうだよ、ぼくだよ。良かった、ケン坊が無事でよかった」
ガッダインチームのみんなは優しくケン坊と竹千代を見守っていた。
「姉さん。姉さんは防衛隊の士官だったんだね。助けてくれて……ありがとう」
「流、姉さんを心配させないで。わたくし、貴方の事が心配で駆けつけたのよ」
「ありがとう、姉さん……ありがとう」
流は疑いもせずミザーリンに感謝を伝えている。
そんな流に対し、ミザーリンは敬礼をした。
「これよりわたくしは本部に戻ります。北原未来要塞ベースの皆様、どうぞご無事で」
「姉さんこそ気を付けて」
ミザーリンは輸送機を操縦し、空に消えた。
「さて、ケン坊も無事だったし、今日はお祝いだよ! あたしが腕によりをかけて料理するからね! ケン坊の父ちゃんの持ってきた魚で豪勢なご飯にするよ!」
その晩、脅威の去った北原未来要塞ベースは、おタケさんの奮発した料理で全員が宴会ムードだった。




