第十話 巨大獣ゴミンゴ ケン坊の命を救え! 2
ダバール星人の侵略軍によって、北原未来要塞ベースは陥落寸前だった。
原作で助けに来るはずの輸送機は、ニセモノの三島長官のせいで来ない。
バルガル将軍率いるダバール星人の軍人達は、北原未来要塞ベースの各所を占拠し、残っているのは防災シャッターを閉めた司令部のみだ。
だがその司令部にいるのも非戦闘員と言えるような研究者やスタッフばかりで、このままでは北原未来要塞ベースはダバール星人の手に落ちてしまうところだった。
しかし、原作を知る俺が予想だにしない展開がこの後で待っていた。
なんと、防衛軍の輸送機が北原未来要塞ベースに到着したのである!
一体誰が……? 本物の三島長官が出てくるわけが無いし……。
俺はスパイドローンを防衛隊の輸送機に移動させた。
そこに居たのは……ミザーリン!?
なぜ彼女が防衛隊の輸送機を……? 彼女は地球人に擬態しているが間違いなくあの雰囲気はミザーリン、いや……渚だった。
彼女は防衛隊の士官の服を着て隊員達に指示を出している。
「みんな、敵はダバール星人の精鋭よ。心してかかるようにっ!」
「はいっ! 了解であります。青木大尉!」
青木大尉?? ミザーリンは地球人になりすまし、防衛隊の士官のフリをしている。
一体なぜ??
その理由は……後でわかった。
「あの姿は、姉さん!」
「流、無事だった?」
「姉さんこそ……どうしてここに?」
「ごめんね、流。わたくしの地位としては下手に表に出せなかったのよ。わたくしは今防衛軍の士官なの。あの戦場の国で助けられたわたくしは、政府の特殊部隊で訓練を受けていたの。流、黙っていてごめんなさい」
そうか、ミザーリンは、流を死なせたくなかったのか。
――木乃伊取りが木乃伊になる――という諺があるが、ミザーリンは情の湧いてしまった弟代わりの流を戦闘の中で殺させたくなかったのだろう。
「ガッダインチームの皆さん、ここは危険です。ここは防衛隊に任せてあなた達は退避してくださいっ」
「渚さん、わかりました」
ガッダインチームはダインマシンに乗ったまま、待機する事になった。
まさかミザーリンが輸送機を操縦して基地救援に来るとは……俺の遥か想定外の内容だ!
だが、想定外はそれだけでは終わらなかった。
◆
「ン……ん? ここは何処じゃ?」
彼が気付いたのは、薬品の臭いのする医療室の中だった。
「ここは……北原未来要塞ベースの医療室か? しかし何故ワシがここに……?」
「誰かいるぞ! 子供だ! 非戦闘員は手を出すな。バルガル将軍のご命令だ」
「ばるがる……それが敵の将軍の名か。という事は、貴様! ダバール星人だな!」
「黙れ! このガキッ!」
彼は何か武器が無いかを探した。
そして彼の目についた武器は、スチール製の柄の長い箒だった。
「これなら! ちぇすとぉー!」
バギッ!
油断したダバール兵はその場で気を失った。
「何だ何だ! どうしたっ!? 何だと、子供だと!」
「誰が子供じゃ! ダバール兵めっ」
「このガキッ、大人しくしろっ!」
「馬鹿め、甘いわっ」
バギッ! ドゴッ! ドガッ!!
何と彼はスチール製の箒一本で、ダバール星人の兵隊を打ち倒してしまった。
「ふむ、ワシもまだ捨てたもんじゃないな。さて、な……何じゃこの小童は!?」
鏡を見た人物は自分の姿を見てビックリしていた。
「え? ワシは夢を見ておるのか……?? あの墜落事故、あの事故以降の記憶が……うーむ、まるで理解が追い付かん!」
彼のその姿は意識不明になっていたケン坊だった。
そのあと少し考えた彼はある結論に達した。
「うーむ、昔読んだSF小説に輪廻転生や入れ替わりの話があったのう。という事は今のワシはワシではない誰か別人という事か。まさか長年生きていてこのような事になるとは……だがここは素直に成り行きに任せるしかあるまい」
彼が医療室の外に出ると、そこには防衛軍の兵士がいた。
「坊主、ここは危ない。すぐにそちらに逃げろ!」
「わ、わかった!」
ケン坊の姿の彼が走ると、目の前の人物にぶつかった。
「お、お前は誰だ!?」




