第十話 巨大獣ゴミンゴ ケン坊の命を救え! 1
巨大獣ザザンザーを倒したガッダインチームは北原未来要塞ベースに戻った。
だが、基地は大勢のダバール星人達に取り囲まれており、指令室にはスタッフの大半が避難していた。
残念ながら助かる見込みのないと見られたケン坊はトリアージ黒と判断され、シャッターの外側にある治療室の中だ。
俺はスパイドローンで北原未来要塞ベースの指令室の様子を確認した。
中心にいる男性が代々木博士、この基地の責任者代行だ。
本来の基地の責任者である北原みどり博士は、今デラヤ・ヴァイデスで捕虜として扱われている。
その為、今の基地の司令官は代々木博士という事になる。
本来の話では今頃防衛隊が到着し、この後防衛隊と一緒に戦う三島長官が八面六臂の活躍をするシーンだ。
「三島長官! 三島長官! 返事をしてくれっ! 今こちらは大ピンチだぞいっ」
「失礼ですが、長官は只今席を外しております」
「何じゃと!? 用事とは何じゃっ!」
「昼寝です。数時間は絶対に起こすなとの命令です。上官の命令には逆らえません」
何じゃゃそりゃぁああ!?
敵のはずの俺がツッコミを入れたいレベルだ。
アイツは間違いなく三島長官ではない、三島長官がこんな堕落した生活をしているわけが無い。
そうなると、本物の長官は一体どこに??
俺はその疑問がどうしても抜けなかった。
本来のガッダイン5大百科での十話はこうだ……。
巨大獣ザザンザーを倒したガッダインチームは急いで北原未来要塞ベースに駆け付けたが、既に基地の大半はダバール星人達によって占拠されていた。
万事休すと思われたその時、基地を助けたのは輸送機を自ら操縦する三島防衛長官とその部下の防衛隊員達だった。
三島長官と防衛隊員達のおかげでダバール星人を退けたガッダインチームだったが、意識不明の重体のまま治療が出来なかったケン坊は命を引き取る。
ケン坊の葬式を終わらせた後、葬列が漁村に戻ろうするが、その時巨大獣ゴミンゴが出現し、ガッダインチームはすぐに基地に戻らないといけなくなってしまう。
そこに駆け付けたのは三島防衛長官自らが操縦する輸送機で、ガッダインチームは輸送機で北原未来要塞ベースに戻り、ダインマシンで出撃し、ガッダイン5に合体。
――ケン坊の仇だ! と言って竹千代が泣きながら戦い、ガッダインチームはそれを補助する形になった。
竹千代はガッダイン5のメインパイロットをやらせてもらい、超電磁ウェーブからの超電磁スマッシュを叩き込んで巨大獣ゴミンゴを倒した。
戦いを終えた竹千代はケン坊の墓参りをし、彼と遊んだ川で楽しかった時を思い出す。
そこに水をかけたのは龍也達で、竹千代は水を浴びて涙を誤魔化しながら笑って遊んだ。
そしてみんなが帰った夕暮れの川で竹千代はダバール星人を倒す事をケン坊に誓うのだった……。
――だから浜野監督の話ってマジで重いんだって。
この話は竹千代の心の成長と、三島防衛長官の人間性が見える話でロボアニメファンの中でも名エピソードの一つとして語られる神回だ。
だが今のあのニセモノの三島防衛長官がこの後助けに来るわけが無い。
そうなると原作とは全く違った展開になり、下手すればダバール星人の勝利で物語が終わってしまうかもしれない。
まあそれはそれで俺の処刑フラグが消えるから問題無いのだろうけど。
何だか腑に落ちない部分があるのも事実だ。
「誰かおらぬのか! 吾輩はダバール星人一の猛者、バルガル将軍である! これより我等はこの基地を占拠する。逆らう者達は皆殺しだ。だが、素直に投降するならば、命だけは助けてやろう!」
バルガル将軍の大きな声が北原未来要塞ベースに響いた。
本来ならここでバルガル将軍と戦うのは三島防衛長官だったが、彼はここにはいない。
北原未来要塞ベースは風前の灯火とも言える状態だった。




