第九話 巨大獣ザザンザー 北原未来要塞ベース危機一髪! 2
シャールケン提督とバルガル将軍のチャンネル争いはどうにか決着がついたようだ。
三匹が奔る! を見た後ニュースを見て今後の方針を決める。
マジで何だかこの連中が、俺の中で王者キャリバイザーの宇宙海賊ダイナスターと被るようになってきた。
王者キャリバイザーの宇宙海賊ダイナスターは恐竜型の宇宙生命体ロボが毎日ゴロゴロしながらテレビを見て、ダイナボスの命令で地球の貴重な物を手に入れる為に略奪に出るという子供向け作品の敵集団だった。
まあこの連中にテレビを与えてしまったのは俺なので、あまり偉そうには言えないんだが……。
部屋に閉じこもっているエリーザ様は、――若奥様は18歳の魔法使い?――を見ている。
海外ドラマの日本版設定でのリメイクといった作品だ。
シャールケンは妹が地球の世俗に染まるのをあまり快く思っていないようだが、もう既に彼女は恋愛ドラマを見て心をときめかせている様なので、もう遅いかもしれない……。
だが、このアホ連中、本気を出せば地球征服可能な力は十分持っている。
それが出来ないのは彼等にとっての想定外だったガッダイン5という地球最強のロボットがいるからだ。
まあとりあえず今日は特に会議も無さそうなので部屋帰って寝よう。
俺はテレビを見ている連中をそのままそこに置いて自分の部屋に戻った。
次の日、俺はシャールケン提督に呼び出された。
「ブキミーダよ! 地球にいる巨大ロボはガッダイン5だけではなかったのか!? 何だあのビッグバロンというロボットは!?」
あ、コレ現実と特撮の区別がついていない人だ。
――スーパーロボット・ビッグバロン――
ガッダイン5の二年前に放送されていた巨大ロボ特撮番組だ。
世界征服を企むリヒテンシュタイン博士とビッグバロンの巨大ロボット戦が見ものの特撮ドラマだった。
どうやらシャールケンが見たのはそのビッグバロンの再放送らしい。
そして彼はそのロボットを実在するモノだと思い込んでいるようだ。
「ビッグバロンは、ガッダイン5の以前に地球で作られた巨大ロボです。地球人同士が争い、世界征服を企むリヒテンシュタイン博士のロボット軍団と戦い、最後はリヒテンシュタインの乗ったロボットを抱えて宇宙で爆発しました」
「そうか、これはその戦闘記録か。それでは今は存在しないというわけだな! ガッダイン5だけでも脅威だというのにその上ビッグバロンまでいるとなると、地球侵略作戦が滞るところだったわ」
どうにか誤魔化すことが出来たか。
「ブキミーダよ、ミザーリンが前に奴らの基地に潜入し、バリア発生装置を破壊したと聞いた。至急地球に向かい、奴らの基地を破壊せよ!」
「はっ。承知致しました。」
この話では前回のミザーリンによる超電磁バリア破壊がきちんと話の続きになっていて、北原未来要塞ベースにバルガルの部下が入り込み白兵戦をする流れになっている。
ここで本来なら三島防衛長官が日本刀を手にそれらの兵士を倒す八面六臂の活躍をする流れなのだが、今の三島長官は中身が別物だ。
そうなると本当に北原未来要塞ベースを陥落させる事が出来てしまうかもしれない。
この場合、番組はダバール星人の勝利で終わりました、完!
になるのだろうか??
俺は北原未来要塞ベースに仕掛けたスパイドローンで基地の様子を確認した。
おや? アレは誰だ??
ガッダインチームの最年少、徳川竹千代が誰かと話をしているようだ。
あれは確か、ケン坊か。
彼は第九話のゲストキャラで、同じ年の友達のいなかった竹千代の友達になった地元の網元の息子だ。
昔のロボアニメによくあった基地の近くの少年キャラといったところなのだろうが、浜野監督がそれだけで終わらせるわけが無い。
彼は竹千代と遊ぶ為に北原未来要塞ベースに来た時にダバール星人の攻撃の巻き添えで重傷を負い、次の話で亡くなる予定だ。
浜野監督、流石です。
子供相手でもシナリオに容赦ない。
小学生の竹千代とケン坊は、年相応に二人で楽しそうに遊んでいた。




