第九話 巨大獣ザザンザー 北原未来要塞ベース危機一髪! 1
俺がスパイドローンの映像を見ていると、機動要塞ドグローンにミザーリンがやって来た。
「おや、ミザーリン。何だか機嫌良さそうだな」
「あーあ、また負けちゃった。何だか最近負け癖ついてない? わたくし達」
ミザーリンは青木流の姉、渚の姿のままでドグローンの操縦室に上ってきた。
彼女の表情からは悔しそうとか何だか嫌なピリピリした感じはなく、むしろ何だか楽しそうだった。
「ミザーリン、何か良い事でもあったのか?」
「そうね、楽しみがまた増えたってとこかしら。またあの子に会えるから」
どうやらミザーリンは流から受け取った人形を見てニコニコしている。
原作では地面に落として踏みにじっていたのに……大きな変化だ。
「ねえ、ブキミーダ様。わたくしが他の男と話をしたら嫌な気分になります?」
「え? いきなりそんな事言われても……」
「ご主人様は忙しいんです、そんなこと考えている場合じゃありません!」
マーヤちゃんが大きな口を開けて牙を生やした少女漫画のギャグ顔になっている。
それを見たミザーリンは口に手を当てて笑っていた。
やはり彼女、トゲトゲした感じが無ければ本当に美人だ……。
「あの流の姉のフリをしてたら、弟の事思い出しちゃって、何だか他人に思えなくなってしまったのよ。だから置手紙にまた会いましょうって書いてしまって。本当はもう会う気は無かったんだけど……」
やはり大きな変化だ。
彼女は流の本当の姉さんのフリを楽しんでいるようだ。
原作でのミザーリンからはとても考えられない態度だと言える。
「ははーん、ミザーリンってば、あの流ってのに惚れちゃったんだ、この尻軽女さん」
「な、何を言うの!? この下半身無しアンドロイド!」
「何を!? 言ったわね!」
「ああ言ったわよ。事実を言って何が悪いの?」
頼むからキミ達、ドグローンの中でキャットファイトは勘弁して。
「二人共、帰還するから、大人しくしてくれ」
「あ、ブキミーダ様、少し寄って欲しい場所があるんですが」
「寄る場所? それは一体」
「アキババラとかいう場所に行ってもらえますか? シャールケン様からテレビが何だかんだと言われてましたから」
そう言えばそうだった。
あのテレビはヘソを曲げてしまったエリーザ様の部屋に戻したので、シャールケン提督に新しい大型テレビをどうにかしろと言われていたんだ。
俺はドグローンをステルスモードにし、相模湾から東京に向かった。
本来はエンジニアの俺が行った方が何を買えばいいか分かるのだが、流石にこのブキミーダの姿で街を歩くわけにもいかないし、マーヤに買い物を頼むわけにもいかない。
それなのでミザーリンに渚の姿のまま秋葉原でテレビのチューナーやパーツ、ジャンクの大型テレビのブラウン管などを買ってきてもらう事にした。
秋葉原で電気関係の部品を買い集めた俺達は、デラヤ・ヴァイデスに帰還した。
「おおブキミーダ殿、シャールケン様がお待ちだ。それで、謎の円盤№6の続きは今日見れるのか?」
バルガル将軍は海外ドラマの続きが気になっているようだ。
俺はシャールケンの待つ謁見の間に到着した。
「遅いではないか! 早く作業に取り掛かれ、急げっ時間は無いぞ!」
ハイハイ、そこまで焦らなくてもまだ、三匹が奔る! の放映時間には十分間に合いますよ。
しかし俺のせいとはいえ、このダバール星人の侵略軍がどんどん可笑しな方向に進んでいる様な気がする。
原作ではもっと仲間内での足の引っ張り合いや、やたらとシリアスでハードな軍団のイメージだったのに、今やテレビを見ている面白集団化しているかもしれない……。
そして大型テレビが謁見の間に設置された。
これで問題は解決したはずだったのだが……。
「くどい! 次は余が大江戸最前線を見るのだ!」
「シャールケン様、ここはニュースを見て地球の軍事や政治情勢を研究するべきかと……」
俺の紹介したテレビのせいで、ええ年した大人達が今度はチャンネル争いを始めてしまった……。




