番外編 宇宙漂流記ルミナス175 ムーのマシンダー2
「な、なんという力、これは一体……」
ムーの巫女ラ・ムールはルミナス号から撃ち出されたマスドライバーカノンの威力に驚愕した。
マスドライバーカノンは高出力の磁力により岩石や瓦礫を一気に撃ち出すことで敵を広範囲殲滅出来る未来の超兵器だ。
古代のロストオーバーテクノロジーとも言えるムーの科学文明でもこのマスドライバーを武器にする発想は想定外のものだったらしい。
「ラ・ムール様、ドラゴ兵はもう見当たりません。ですが南地区の住居地域はほぼ壊滅です」
「そうですか、ところで死者はどれくらいいましたか?」
「ドラゴ兵達の侵略による死者多数、しかしそれ以外はほぼ避難する事が出来ました」
「わかりました、ご苦労様」
ラ・ムールは部下の神官の報告を聞き、心を痛めているようだった。
確かにドラゴ兵は打ち倒したが、全く犠牲者が出なかったわけではない。
まあモブに厳しいのは昔のロボアニメあるあるなので仕方ないと言えば仕方ないか。
「貴方がたのおかげでドラゴ兵を倒すことができました。貴方がたとあの白い鯨は一体何なのですか?」
オレはラ・ムールにこの世界に来た理由を説明した。
その理由としては、自分たちが未来の人間でこのルミナス号のワープシステムの故障であちこちの世界を転々としているといった内容だ。
流石はロストオーバーテクノロジーのあるムー大陸の住人、この荒唐無稽な話をすんなりと受け入れた。
「なるほど、それでツルギ・ヤマトではなく貴方がたがそのクエンタの遺跡からワープしてこのムーの神殿に現れたというわけですね。あのドラゴ兵を打ち砕いた凄い武器は貴方がたが作ったものなのですか?」
ここで変に話をこじれさせても話がややこしくなるだけだ。
オレはあのマスドライバーカノンの事から話を変えることにした。
「まあ、アレは以前に知り合いに作ってもらったんです。ところでツルギ・ヤマトって誰なんですか?」
「ツルギ・ヤマトは神像マシンダーに選ばれた戦士の末裔です。残念ですがこの時代には神像マシンダーを乗りこなす戦士はいません。それ故に最も力の優れた神像マシンダーの乗り手を後の時代から召喚しようとしたのです」
なるほど、それが神像マシンダーか。
という事はここはエメラインの世界や時代ではなく、ゴッドマシンダーの世界というわけか。
ゴッドマシンダーとは、マシンダーAの作者が80年代に作ったロボアニメで、マシンダーサーガの始祖になる作品だ。
ロボアニメの元祖、スーパーロボット・マシンダーAは日本の天才科学者、鎧一造が作ったものだ。
だがそれは彼と共にガードス島に調査に向かったドクトル・ゲヘナが見つけた古代の巨人兵、つまりゴルランティスの遺産を元に作り上げた機械兵に対抗する為にゴッドマシンダーの古文書を読み解き、作り上げた物だった。
つまり、ゴッドマシンダーを元に現代科学で作られた巨大ロボットがマシンダーA、ゴッドマシンダーとはその始祖とも言える巨大な古代ロボットの事なのだ。
「わかりました、それでオレ達は何か出来ることはあるのですか?」
「貴方がたはこの場で見ていればいいです、わたしが今この場にムーの戦士を召喚します。来たれ、ムーの戦士よ、長き時を超え、我が呼びかけに答えよ。我、ムーの大神官ラ・ムールの名において命ずる!」
魔法陣が光り、円形に巨大な光が迸る。
そしてその場には現代風の服装をした五人の少年少女が姿を表した。
「え? どうなってるんだ?? おれはバスに乗ってたはずなのに……」
「ボクはサッカーの試合にいたはずだけど、ここはどこだ?」
「私、テニスの決勝戦だったのに、どうなってるの??」
「これは、もしかしてタイムワープ? あの建物の雰囲気からしてここはムー大陸に違いありません!」
「ケッ、なにがどうなってんだよッ!?」
どうやらラ・ムールの召喚した五人はまだ様子がよくわかっていないようだ。




