番外編 宇宙漂流記ルミナス169 パーフェクト・ソルジャー6
カメン正規軍と反乱軍の戦いは市街戦に飛び火した。
先程までバトリングで盛り上がっていた会場は阿鼻叫喚の有り様だ。
普段軍やミリタリーに憧れているはずのマルコですらこの状況にビックリしている。
やはり本当の戦場とイメージしているフィクションとでは別物だ。
「止まれ、止まらんと撃つぞ!」
カメン正規軍は次々とバトリング会場にいた人間を捕縛している。
ボウト、ココア、ヴァニラの三人はギルデン札のぎっしり詰まった札束を抱えて一目散に逃げだした。
キリオはATベルセルクに乗っていたルシャットを降ろし、二人で正規軍相手に戦っている。
彼らの今所属しているのはアンサンブルEX-10、つまり反乱軍のならず者傭兵部隊だ。
こんなところで捕まったら確実に処刑対象になるのだろう。
というか……カメン正規軍でも反乱軍でもないオレ達はどうすればいいんだ?
とりあえず売り物にするつもりだったがまだ手渡していないドローンだけ飛ばしてキリオの様子を確認しておこう。
さあ、どうにか車まで戻ってルミナス号に向かった方が良さそうだ。
オレ達が車に乗ろうとしていると、先にオレ達の車に乗っている奴がいた。
「あー、ドロボウ! オレ達の車を返せ!」
「すまないが、この車は借りるぞ」
「そうはさせるかよっ!」
セドリックとマルコが車泥棒に飛び掛かったので泥棒は車を出せずにもたついている。
その隙にオレ達はどうにか車に乗ることができた。
さらにそこに走ってきたのがボウトとココアとヴァニラだ。
「おい、降りろ! 定員オーバーだ!!」
「やかましい、金ならここにいくらでもある。これでここからさっさと離れてくれ!!」
あの……この車、一応オレ達の物なんだけどな。
車泥棒は定員オーバーの車を発進させ、市街戦の中から脱出した。
車を走らせる中で車泥棒のフードが捲れた、彼は……メーテルリンクだった。
「あ、アンタはあのバトリングで戦っていた男か! いやあ、アンタのおかげでおれ達は大儲け出来たぜ、あのベルセルクに小細工を仕掛けておいて正解だったな」
「何だって、あのベルセルクは万全の体制ではなかったのか?」
メーテルリンクはボウトの言葉に驚いていたようだ。
だが、すぐに状況を受け入れたらしい。
「ハハッオレはアンタたちのおかげで勝てたってわけか、だが……あのバトリングの機体に乗っていたのはオレの仇ではなかった」
「アンタ、一体何者なんだ?」
「オレはメーテルリンク・ハリティー。元シナップス小隊の生き残りだ」
シナップス小隊の名前を聞いたボウトとヴァニラが驚いていた。
「ま、マジかよ! アンタはあの悲劇の捨て石部隊の生き残りだっていうのかよ!」
「そうだ、オレはオレ達の仲間を見殺しにした軍のやつらを許さない……」
「でもよぉ、それなら反乱軍に入っちまえば目的を果たせるんじゃないのかぁ?」
ヴァニラの提案にメーテルリンクは反論した。
「反乱軍もクソの集まりだ! アイツら、裏で手を組んでギギリウムの横流しをやっている、それの元締めがクァン・ユゥー大尉だ! アイツは、カメン正規軍とつながっていて、ギギリウムの横流しを行っていた。オレの隊長シナップス少尉はその様子を見てしまったんだ、だから……小隊ごと証拠隠滅された」
なるほど、ここでこう繋がってきたか。
本編のメーテルリンクでは正規軍の上官は出てきたが、取引先の相手が誰かという話まではたどり着いていなかった。
まあ、外伝のOVAだとそこまでの話にはたどり着けなかったのだろう。
「とにかく早くここから離れた方が良い、正規軍も反乱軍もあてにはできないからな!」
オレ達はメーテルリンクの助言をもとに、すぐにその場を離れることにした。
だが、少し車を進めたところでオレ達はとんでもない相手に出くわしてしまった!
アレは! ブルーティッシュ・ウルフ!!
パーフェクトソルジャー、フィオナの愛機だ!
こんなとこであんな奴に出くわすなんて、一体どうすればいいんだ?




