番外編 宇宙漂流記ルミナス166 パーフェクト・ソルジャー3
「アンタ、おれに用があったんだろ。それで、売りたいものはなんだ?」
闇商人ボウトは商売人の顔になってオレに話しかけてきた。
彼は生まれついての商売にんなのだろう、オレの持ってきたものがガラクタではない事をすぐに見抜いた。
「1ギルデンから取引してやる。1ギルデンを笑うものは1ギルデンに泣くからな。それで、何を持ってきた?」
「とりあえず、これを見てくれ」
オレは中型のジュラルミンケースからルミナス号にあったガラクタを色々と取り出した。
ガラクタとはいえ、元々は使えたものだ、オレが暇なタイミングでそれを通電しなかったものを通電できるようにしたり、壊れた箇所をメタリック3Dプリンターで作ったパーツで補強したようなものだ。
まあ基本は軍用から払い下げの日用品といったとこか。
ジュラルミンケースの中に入っていたのは電気シェーバーにドライヤー、小型カメラにミニドローン等だ。
「コイツはスゲぇ! こんな上等なものはそうお目にかかれないぜ。そうだな、一つ安くても100ギルデンにはなるだろうな」
大体1ギルデンが日本円にして1000円計算だろう。
そう考えるとオレ達の持ってきたガラクタは10万円相当ということになる。
まあ、戦場で物資不足の中に貴重な日用品となるとそれくらいいくのだろうな。
だがまさかのエッチ本までもが売れるとは思っていなかった。戦場で女に飢えた連中が多いからなのだろうか……。
「毎度あり、ところで……レイジ。お前さんはAT用の武器や整備用パーツは持っていないのか? あったら言い値で買い取らせてもらうが」
「生憎だが、そういったものは持ってないんだ。残念だったな」
「そうか、ところで……さっきの売り上げだけどよ、もっと大きく儲ける方法があるんだが、一口乗ってみないか?」
どうやらボウトはさっきオレから買った金を少しでも回収したいようだな。
彼はオレを街の開けた大きな塀で囲まれた場所に連れて行った。
ここはコロシアムのようだな。そうなると、やはりここで行われているのはバトリングってわけか。
「安心しろ、お前さんから巻き上げて取り返すつもりはない。それよりももっと大勢の賭けからもうけを増やそうぜってことだ。なに、ここでキリオが出てくるからそれに賭け続ければいい。おれだけがキリオに賭け続けたら怪しまれるからお前さんも賭けに乗ってくれってことだ」
なるほど、そういうことか。
確かにそれなら下手な賭け事よりも確実に儲かるな。
オレは100ギルデンをキリオに賭けた。これは先程の売り上げの三分の一といったとこだ。
「キリオ、頼んだ。クドの街で見せてくれたビッグバトルを頼むぜ」
「わかった、ボウト。オレは……普段通りに戦うだけだ」
「頼んだぜぇ、キリオォ。俺今日の仕事代全部お前に賭けたんだからなぁ」
どうやら酒場にいた声の甲高いアフロの男はヴァニラといってキリオの仲間だったようだ。
「わかった、ヴァニラ。……安心しろ」
そう言うとキリオは肩の赤いサーチドッグに乗った。
サーチドッグはこの世界で一番多く出回っているタイプのATで、肩の赤い機体は地獄の吸血部隊と言われたブラッドサッカーの生き残りの象徴だ。
「へッ、ブラッドサッカー隊気取りのヤツがバトリングに出るんだってよ。面白そうじゃねえか」
「だが相手の青いベルセルクもかなりの腕のヤツが乗ってるんだろ」
「そのベルセルク、今頃前哨戦やってるはずだが、どうやら自殺志願者がバトリングに出たらしいぞ」
「どこのバカだ? 自殺志願ってどんなオンボロなATに乗ってるんだよ!?」
バトリングコロシアムでは観客たちが次の試合の賭けの話をしていた。
「それがよー、なんと、AT相手に生身の男が対AT用グレネードランチャーだけで戦うってよ!」
なんだって!? まさか、それって……。
「そのバカの名前は何ってんだよ」
「どうやら、メーテルリンクとか名乗っているようだが、そんなバカに賭ける奴がいたら大バカ確定だぜ。というか賭けにすらならないってな」
いや、もしそれが本当にメーテルリンクならこの勝負は決まったようなものだ。




