番外編 宇宙漂流記ルミナス165 パーフェクト・ソルジャー2
食料と資材調達の為に街に来たオレ達は闇商人のボウトを訊ねていた。
だが、ボウトの名前を出すと途端に警戒されてしまう。
その不穏な空気が漂う中に現れたのは、キリオ・ジュービィだった。
「何か飲み物は無いか? 出来ればコーヒーが良いんだが」
「ヘッ、酒も飲めない甘ちゃんが傭兵をやってるってのかよ、それにこっちにはガキ連れたヤツがいるしよ。ここはテメエらみたいなひよっこが来る所じゃねえぞ」
酒場の中にいたガラの悪い連中がオレ達とキリオを笑っている。
「オレは……戦場で酒に飲まれたやつを何人も見てきた。どいつも……最後にはまともな判断が出来ないまま地獄に旅立って行ったさ」
「野郎! おれ達をバカにするのか!?」
「自分の限界の判断も出来ないヤツは……戦場に出ずにここで酒を吞んでいればいい」
「野郎!!」
喧嘩っ早い大男がキリオに殴りかかった。
だがキリオはそれをコーヒーを飲んだまま少し上体を逸らし、攻撃を避けた。
勢い余った男は殴りかかった勢いそのままに歌を歌っていた少女の前に飛び出してしまった。
「キャアッ!!」
「オイこら、ナニうちの歌姫のココアちゃんに飛び掛かろうとしてんだテメェ!!」
アフロっぽいモジャモジャ頭の甲高い声の男がその辺にあった一斗缶で男の頭を叩きつけた。
「野郎! やるってのか!」
「上等だ、表に出ろ!!」
「よさんか! お前達!!」
どこかの博士のような声の恰幅の良い小男が店の奥から姿を現した。
「おれの店で暴れるなら壊したものを酒代に上乗せしてやるからな、金額はトイチだぞ!」
「その声、ボウトか!」
「お前は……キリオ、キリオなのか。よく生きていたな!!」
ボウトとキリオはお互いが抱き合って背中を叩いて再会を喜んでいた。
「お前はあのクドの街の大火の中で死んだもんだと思っていたぞ、よく生きていたな」
「生憎どうやらオレは死神に相当嫌われているみたいでな、今回も生き残ったってわけだ」
「まあ積もる話もあるだろう、今日はおれのおごりだ、さあ旧友同士の再会、派手に行こうぜ」
どうやらボウトはキリオとの再会でかなりの上機嫌のようだ、今ならオレ達も交渉をしやすいかもしれない。
「貴方がボウトさんですか」
「おや、見かけない顔だな。子供までいるみたいだが、アンタ達はダレだ?」
オレはレイジと名乗り、旅の途中でこの惑星メルキドに不時着した話をした。
「なるほど、レイジ達は戦火のヒッタイト星系やアッシリア星系の外から迷い込んで来たってわけだな。それでここを離れる為には超高出力のエネルギーが必要というワケか。ウーム、それに当てはまるだけの高出力エネルギーと言えば、ギギリウムぐらいだろうな」
「ギギリウム?」
「ギギリウム鉱石から生み出されるエネルギーは機械にかなりの力を与えるんだ、お前さん達の言うだけのエネルギーを確保するにはそのギギリウムが必要だろうな」
そうか、この装甲鉄機メタルズの世界ではギギリウムが作品のキーワードになるくらいの重要性を持つ。
そしてこのカメン王国はギギリウム鉱石の鉱山が存在するので独立派はそこを占拠する事で独立を認めさせようとしていた。
「いくらおれが凄腕の闇商人でもギギリウムだけは手を出せん、下手すれば命が狙われかねんからな。ギギリウムを輸送する為に敵を引き付けるオトリ部隊にされて全滅したヤツラまでいるくらいだ。ギギリウムに比べれば人命なんて吹けば飛ぶような軽いモノだ」
この話、機甲擲弾兵メーテルリンクの話だな。
機甲擲弾兵メーテルリンクの主人公、メーテルリンクはオトリ部隊シナップス小隊の生き残りとして仲間を見殺しにした軍上層部に復讐する為、生身でATを狩る復讐鬼として戦う。
奇しくもその輸送したギギリウムが輸送されたのがキリオと不思議な運命で巡り合う事になるフィオナのいるこのカメン王国だったわけだ。
「悪い事は言わん、ギギリウムには手を出すな。それ以外なら何でもおれが調達してやるがな、勿論金次第だがな」
そう言うとボウトは商売人の顔をオレに見せて計算機を叩き始めた。




