番外編 宇宙漂流記ルミナス 163 夢色セレナーデ9
クラート博士はルミナス号の甲板に巨大なレールを敷き始めた。
どうやらこれがマスドライバーカノンになるらしい。
でもこんなもん設置されても、後でどうやって撤去しろというんだ??
「クラート博士、コレって一時的には使えるかもしれませんけど、使い終わったらどうやって取り外すんですか?」
「心配ご無用じゃ、そこはきちんと考えておるわい」
ほっ、どうやらこれは簡易式なシステムで作っているからすぐに取り外せるようにしているのか。
……それにしてはガッチガチに補強しまくっているように見えるけど、コレってここまで頑丈に設置してすぐに取り外せるのか?
まあ今はそれを考えている場合じゃない。
このマスドライバーの威力はオレは本編で知っているが、いくら超大型MAのゴシオ・ガンヴァイでもこれを食らえばひとたまりもない。
このマスドライバー、月面国家ギルノスが地球からの独立の際に使った戦略的兵器だ。
本来は宇宙船を電磁力で打ち上げるシステムなのだが、それをギルノス帝国は月面にあった巨大な岩石を地球に向けて打ち出す事でシドニーの地球連合軍基地を壊滅させた。
奇しくもそのマスドライバーの設計に携わっていたのがライオとレンダの父親であるラング・クラート博士というわけだ。
その彼が協力してくれたのでマスドライバーカノンはかなりの短時間で設置が出来た。
これを取り外す事なんて後で考えよう。
「こちらは準備出来たわい」
「父上、それは?」
「マスドライバーカノンじゃ、これであのデカいのの身体に大穴を空けてやるわい」
だがここで問題が発生した、マスドライバーカノンはあっても、それで撃ち出せる岩石や弾丸になるものが無いのだ。
「しまったぁ、ワシとしたことが」
「レンダの親父さん、それって何でも打ち出せるんだよな」
「無論じゃ」
「ならおれが弾丸になってやるよ、ライオさん。それまでアイツの時間稼ぎを頼む」
「わかった、必ず成功させろよ」
B-1カスタムはルミナス号に合流、そして甲板に設置されたマスドライバーカノンにその機体を設置した。
「かなり手荒に行くから覚悟するんじゃぞ」
「わかった、親父さん、やってくれ!」
「行くぞ、マスドライバーカノン発射じゃ!!」
マスドライバーカノンから打ち出されたB-1カスタムはその加速度を利用し、ゴシオ・ガンヴァイの巨体目指して超高速で突撃した。
「ななななっ何だあれわぁっ!??」
ダン・ジェムが驚いている。
彼はファルガン・マッフに気を取られている間にあんな切り札が攻撃してくるとは考えていなかったようだ。
「行くぞ、デカブツ!」
「ぬおぁぁぁああっ!!」
ゴシオ・ガンヴァイの日本刀がB‐1カスタムを捉えた……はずだった。だが、その日本刀はバキィィインッ! と激しい音を立て、粉々に砕け散った。
「ぬぁんだとおおおおっ!?」
「行くぞ、ツインレーザーソード!」
B‐1カスタムはその全力でゴシオ・ガンヴァイの巨体に風穴を開け、そのまま上空に舞い上がり腰から二本のレーザーソードを取り出して一つに合わせた。
「こちらも忘れてもらっては困る。いくぞっ、奸物!」
ファルガン・マッフのレーザーソードとB-1カスタムのレーザーソードが同時に上空からゴシオ・ガンヴァイの身体をX字に切り裂いた!!
「な、何だと! ワシが……敗れるのか!?」
「ダン・ジェム隊長ー!」
満身創痍のニン大尉とビン中尉がダン・ジェムのコクピットに手を突っ込み、彼を引きずり出した。
「テメエら、無事だったのか!」
「隊長、一旦ここは退きましょう」
「クソッ、シャクだがここまでズタボロじゃ逃げるしかねえな、野郎ども、ずらかすぞ!」
「待て、ダン・ジェム!」
本編ではここで死ぬはずだったダン・ジェムとビン中尉は生き残り、ニン大尉によって撤退した。
そして空中で大爆発を起こしたゴシオ・ガンヴァイはそのまま山の斜面、大文字の下に墜落した。
それはまるで 太 の字のように見えてしまい、それを見た人達は全員が失笑してしまった。
京都でギルノス軍を退けたオレ達は舞鶴経由で中国大陸に移動、そこでクラート博士によって地上用大型マスドライバーのエネルギーを分けてもらうことになった。
それで、例のマスドライバーカノンは……やはり取り外しなんて簡単にできるモノではなかった。
だが、MAでの収納を想定して設置されていたのでウィンセルやランセルを使えば折り畳んで収納できるみたいなのでこのまま設置しておく結果になってしまった。
まあ仕方ないか。
クラート博士によってワープ用のエネルギーを充填したルミナス号は長距離ワープに入った。
——ワープ開始5.4.3.2.1.0ワープ!——
さて。次はどこに到着するやら。
ワープの完了したオレ達が見たのは、あちこちで炎が燃え上がるジャングルの中だった。
この臭い、染み付いてむせそうだ、ここは一体どこなんだ??




