番外編 宇宙漂流記ルミナス 161 夢色セレナーデ7
超大型MAゴシオ・ガンヴァイ、それはギルノス帝国最強の巨大ロボット兵器だ。
バリグナー本編では三機が確認され、黄銅色のダン・ジェム樹、モスグリーンのハイルデッケン少佐機、そして……ラスボスのドラグノフの乗る黒と赤の機体の三機があった。
今京都で姿を見せたのはそのダン・ジェム機だ。
この機体には彼の趣向で大型の日本刀が装備されている。
もしそんな巨大な日本刀でぶった切られたらルミナス号ですらタダでは済まない。
「デ……デケェ……あんなのにやられたら……ひとたまりもないぜ」
「シェーン、わたし……」
「大丈夫だ、レンダ。おれが守ってやる」
だがB-1はギルノス軍に包囲されていてそう簡単に乗り込めそうにない。
B-2、B-3は舞鶴から京都に向かいルミナス号に搭載した上で移動中だ。
そんな状況の中で暴れているのはゴシオ・ガンヴァイ。
流石はギルノスの廃棄物と呼ばれるだけあり、ダン・ジェムは世界遺産だの文化的価値だのをまるで無視したように京都の街をゴシオ・ガンヴァイで踏みつぶしながらシェーンたちを追いかけていた。
もう少しでゴシオ・ガンヴァイがシェーンたちを捕らえようとした時、意外な救援が駆け付けた。
なんとそれはライオの愛機、全身蒼いMAファルガン・マッフだった。
その後ろにはファルガンの簡易量産型ともいえるガルフに乗ったプラクティスの三人が追いかける形だ。
「隊長、何故我々ギルノス軍同士で戦う事に?」
「話は後だ。あのギルノスの廃棄物を野放しにしておいてはこのキョウトの歴史的な街が灰燼に帰すのだ!」
「りょ、了解でありますっ!!」
どうやらライオたちのおかげでゴシオ・ガンヴァイによるシェーンへの攻撃は阻止できそうだ。
急いで舞鶴から京都に向かわないと。
「セドリック、B-1の近くにいるギルノス軍を追い払ってくれ」
「わ、わかった。やってみる」
セドリックのウィンセルはデルフ、ランドール等で構成されたギルノス軍に向かいレーザーライフルを放った。
どうやらギルノス軍の兵器でも空中戦特化型の機体はそれほど多くはないらしく、空中戦が出来るウィンセル相手にはほぼ攻撃が出来ないらしい。
そうやってウィンセルがギルノス軍をくぎ付けにしてくれたおかげでシェーンはB-1に乗ることができた。
「ちょっとコクピット狭いけど我慢してくれよな」
「う、うん……」
バリグナーの目が光り、フライトユニットで空に飛びあがった。
「バリグナーだ! 当たると痛えぞぉ!」
「出、出たぁ! B兵器だ!!」
バリグナーがゴシオ・ガンヴァイの方に向かって飛んだ。
その頃、ファルガン・マッフがどうにか人気の無い山の方にゴシオ・ガンヴァイをおびき寄せたので、京都の街が火の海になることはなさそうだ。
「ちょこまかちょこまかと、だからお利口さんなヤツは嫌いなんだよォ!!」
「ギルノス軍の面汚しめ、私が引導を渡してやろう!」
ゴシオ・ガンヴァイとファルガン・マッフの戦闘に到着したのはシェーンのB-1だった。
「お前は、シェーン・アオバか。何故逃げなかった?」
「逃げるのはおれの性に合わないんでね、それに借りを借りたまま返さないのはおれの流儀に反するんだよ」
「フッ、好きにするがいい」
「ごちゃごちゃとやかましいわ! このワシがお前らをまとめてブッコロロコロ……もぎゃあああアァァア!!」
いきなりダン・ジェムが半狂乱になった。どうやら呂律も回っていないようだ。
「ブッコロスススロス、テメエら全員ちまつりだッダダダッルぉっ」
「あ、あいついきなりどうしたんだ?」
「どうやら不完全な操縦システムに脳が追い付かなかったのだろうな」
ゴシオ・ガンヴァイは最強のマシンだ、だが……それだけに操縦システムが不安定で脳に相当の負担を与えるものでもある。
ゴシオ・ガンヴァイはその不安定なシステムにパイロットを振り回す未完成の機体だった。
「デメエラ、全員マトメテ皆殺しだぁあ!!!」
ダン・ジェムが日本刀をやたら滅多に振り回した。




