番外編 宇宙漂流記ルミナス 160 夢色セレナーデ6
ダン・ジェム隊のMAダ・ラバとストーク・ランドールは同士討ちで自滅し、再起不能だ。
幸いパイロット達も気を失い、これ以上の戦闘は無理だろう。
これで舞鶴基地のギルノス軍による脅威は一旦回避出来たと言える。
さて、問題は京都に残ったセドリック達だ。
確かバリグナーの本編ではシェーン・アオバとレンダ・クラートの二人が蕎麦屋でかまぼこの裏に書かれたメッセージを元にライオの待つ竜安寺に向かったはず。
オレのウィンセルに仕込んだカメラドローンは竜安寺に無事辿り着いたようだ。
ウィンセルとランセルには今は高い山の上で待機してもらっている。
お、ライオ・クラートとシェーン・アオバの話が始まるようだ。
「この庭を見て貴様は何を感じる?」
「さあね、普通に砂の中に石があるだけだろ」
「貴様には風情も情緒も何もわからんようだな、この庭は、宇宙を意味している、一つは我がギルノス、そしてもう一つは地球と言えるだろう」
「わけわかんねぇよ! そんな話をするためにわざわざおれを呼んだのかよ!?」
茶を呑みながらライオはため息をついた。
「情けない、貴様は何のために戦っている? 国家の為、理想の実現の為にといった崇高な意思は貴様からは感じられん」
「知るかよ、おれは大事な人達とおれ達の居場所を守る為に戦ってるんだ! 好きで軍人やってるアンタとは違うんだよ!」
「そうか、B兵器のエースパイロット、どのような男か一度見てみたいと思っていたが、どうやら私の買い被りだったようだな、残念だ。さあ、もう帰るがいい」
ライオがシェーンに帰れと諭すと、いきなり僧兵の姿をした軍人達が姿を現した。
「汚ねえぞ! 待ち伏せの不意打ちかよ!」
「な!? し、知らんぞ、誰がこのようなことをしろと言った!」
「ワシだ。ギルノスの大鷲さんよ!」
「貴様は、ギルノスの廃棄物ダン・ジェム大佐!」
ここで本編には無い番狂せだ、本来ならここに来たのはギルノス軍の情報将校のはずなのだが、今姿を見せたのは大きな数珠と将棋の駒のアクセサリーをつけた大男、ダン・ジェム大佐だった!
「えぇーいっ!」
「ぎゃわっちっちっちぃ!!」
レンダが茶の湯の入った薬缶をひっくり返すと、煙が辺り一面に立ち込めた。
「レンダ、逃げるぞ!」
「おっと、そうはさせねえ」
ダン・ジェムが青龍刀を振り回すと、それを阻止したのはライオ・クラートだった。
「待て。ここは文化保護の不可侵条約の土地だ、貴様は地球人全てを敵にするつもりか?」
「やかましいわっ! このエリートの青二才が。勝てば良いんだよっ」
「くっ、シェーン・アオバ。私のこれを使え!」
ライオがシェーンに投げたのはバイクのキーだった。
「サンキューよ、レンダの兄さん」
「フッ、お前とはいずれまた戦場で語りたいだけだ、こんな所で死なれては困る」
シェーンとレンダはライオのバイクに二人乗りで京都の街を疾走して逃げた。
本当ならここでB兵器のB-2・B-3が助けに来るとこなのだが、二機ともがダン・ジェム隊のせいで救援に向かえないようだ。
「セドリック、あの二人を助けてやってくれ!」
「了解、任せてくれ」
これでどうにかシェーン達は無事に助け出せそうだ。
——そう思っていたオレだったが、ダン・ジェムはとんでもないものを京都に持ち込んでいた。
それは、鎧武者の姿に似た超大型MAゴシオ・ガンヴァイだった!
「フン、本来なら中国大陸で実戦予定だった機体だが、ちょうどいいわ。この超大型MAゴシオ・ガンヴァイの恐ろしさ、思い知らせてやる!」
出、出たー!! アレはゴシオ・ガンヴァイ! 監督の好きな酒の名前に大河ドラマの主人公である上杉謙信の鎧のイメージで作ったというとんでも巨大ロボだ!
全部で三機作られたうちの試作機で、あの全身黄銅色の機体はダン・ジェム専用機だ。
これはとんでもない相手が出てきてしまったみたいだ。




