第八話 巨大獣ガゴンゴ ミザーリンの美しき罠 5
俺はシャールケン提督とバルガル将軍におすすめのテレビ番組を伝える事になってしまった。
この二人には下手にバラエティや歌番組とかよりも、海外ドラマや時代劇の戦う話の方が良いだろう。
幸い、海底大戦争スクイードや、冒険野郎ハイランダー、謎の円盤№6、高速突撃ヘリ・エアー等といった海外ドラマの再放送や、必殺隠れ人、三匹が奔る!、水戸中納言漫遊記、破れ傘紋次郎といった時代劇が有ったのでそれを見せたところ、二人共かなり興味を持ったようだ。
また、プロレス中継もこの二人には楽しめたようだ。
残念ながら野球はルールが分からないようですぐに別のものにしろと言われた。
「ほう、コレが地球の戦闘術か。このカタナという武器、面白い!」
「うむ、この戦車という武器、原始的ではあるが何か惹かれるものがあるな! しかし我々以外にも地球を征服しようとした宇宙人が存在したとは……」
どうやらバルガル将軍は海外ドラマ、シャールケン提督は時代劇に興味を持ったようだ。
「――ブキミーダよ。今回の件は不問と処す、だが……お前に命令を伝える。この部屋に大型のテレビを設置せよ。地球の文化、侮れぬ。今後の侵略作戦の参考とするのだ!」
「はっ! 承知致しました!」
助かった、どうにか俺は処分されずに済んだ。
だが、その代わり……この部屋に大型のブラウン管テレビを用意する事になってしまった。
困った困った、そんな大型のモニター作るのかなりの至難の技だぞ。
テレビのチューナーやパーツは秋葉原で手に入るので問題無いが、モニターは巨大ブラウン管を作るよりは液晶モニターを作った方がマシか。
幸いこのダバール星の科学力には今の地球で言える3Dプリンターみたいな出力装置がある。
コレを使えば大抵の物を作る事は可能だ。
しかし、巨大獣作るはずが何で俺テレビを作る事になっているんだ?
俺は地球にいるミザーリンに通信をした。
「ミザーリン、ミザーリン。聞こえるか?」
「その声は、ブキミーダ様ー。どうされましたか?」
「地球から戻ってくる際にテレビのパーツで俺が言う物を買ってきて欲しい。詳しい内容は後で伝える」
「はい、わかりましたわ。ブキミーダ様に良いお土産も買って帰りますから」
あの声、完全に恋する乙女だ。
原作のツンツンしたイメージはどこへ行ったやら……。
彼女がデラヤ・ヴァイデスに帰ってきたのはそれから数日後の事だった。
それまではシャールケンとバルガルはエリーザ様の部屋から没収したテレビを見て地球の文化や情報を手に入れようとしていた。
「ふむ、地球には二大大国というものがあって地球人同士で争っておるのだな」
「シャールケン様。その二つの丁度真ん中と言える場所があの二ホンと呼ばれる国のようです」
「我等があのガッダイン5のある地域を攻めたのは間違いでは無いという事だな! 防衛隊の極東司令部が在るのもこの辺りというわけか。ミザーリンが戻り次第、侵略作戦会議を行う!」
幸か不幸か、シャールケンは地球の情報をテレビで色々と知ったようだ。
そして侵略の妨げとなる防衛軍の要が極東の日本だという事を改めて確信したらしい。
ミザーリンが帰還したのはその日の夕方だった。
「シャールケン様、ご命令通り北原未来要塞ベースに潜入し、内部から超電磁バリア発生装置を破壊してまいりました。また、地球防衛軍極東司令部の三島防衛長官についても調査済みです」
「ご苦労であった! それでは侵略会議を開始する! 何か意見のある者はおるか?」
「シャールケン様、わたくしに提案がございます」
「何だ、申してみよ」
「はっ。ガッダイン5のパイロットは五人の子供達です。その中でもアカイ・タツヤとアオキ・ナガレは仲が良くないらしいので、この二人を決裂させればガッダイン5は本来の力を発揮出来ません。二人を仲違いさせた上で巨大獣で攻め込めば……勝てるかと」
この提案にシャールケン提督が頷いた。
「うむ、ではその作戦で進めよ! ブキミーダよ、すぐに巨大獣を用意するのだ。テレビの件はまだ後で良い」
さて、俺は巨大獣を作る仕事に取り掛かりますか。




