番外編 宇宙漂流記ルミナス 145 バトルロボぶっちぎり大逆襲5
ガンドラーは卑劣そのものと言える。
幼い姉弟を騙し、姉には敵討ちを、弟は悪党の片棒を担がせるやり方で利用しようとしているのだ。
——ミナとトロンの父親の話、思い出した!
彼女達の父親は傭兵のキガイ、牛型に変形するバトル族の戦士だった。
彼が幼い姉弟の為に金になる仕事として引き受けたのがトム・ストームとの戦い、その対決の中、彼は卑劣にも人質を取ろうとしたガンドラーの女幹部ディエンドラからセイナを助け出し、ディエンドラの罠にかかってしまった。
その後洗脳され、暴走戦闘マシーン化したキガイを楽にしてやる為にトム・ストームは泣く泣く彼にとどめを刺したのだ。
どうやらディエンドラは占い師に化け、その時系列をいじった悪意ある編集映像を使い、ミナとトロンの姉弟を騙したのだろう。
その上でさらにこの父親を失った姉弟を騙し、トム・ストームを倒そうとしている。
まさに吐き気を催す邪悪とはこういう連中を言うのだろうな。
「どうなっとんねん! まあええわい。こうなったら作戦変更じゃい。コイツら連れてディエンドラの姉御のとこにずらかるで」
関西弁チンピラロボはトロンを捕え、そのまま一目散に逃げた。
「待てっ!」
「待て言われて待つアホがおるかい!」
「姉さん、姉さぁーん!!」
「トローン!!」
必死の追跡も虚しく、トロンは関西弁チンピラロボに連れ去られてしまった。
「トロン……」
「ミナさん、アイツらのいる場所はわかるかい? 追いかけよう」
「でも、どこに行ったのか……」
困っているミナに爽やかな笑顔を見せたのはレッドジェットだった。
「オレに任せナ! ジェット族の速さ、舐めんじゃねーゾ!」
「ちょっと待ってくれ、これを持っていってくれるか」
「何だこの変なの? まあわかった、持って行ってやるヨ」
オレはレッドジェットに小型のカメラ付きドローンを手渡した。
そしてレッドジェットは小型ジェット機に変形し、トロンのさらわれた方向に向かった。
「どうやらワタシは騙されていたみたいですね。トム・ストームは分かりませんが、あなた方はウソをつくような人たちじゃなさそうです」
弱々しく微笑んだミナさんはセイナ達とレッドジェットの飛んでいった方向を目指した。
そして、オレは小型ドローンの映像をモニターに写し、レッドジェットの飛んだ先を確認した。
すると、渓谷の方に向かったそこには巨大な移動要塞が姿を現した!
——あれは! ジャガバールX!?——
間違いない、あの大型要塞はガンドラーの移動要塞ジャガバールX。
という事は渓谷にいるのはガンドラー一味に違いない。
オレ達がドローンの映像を見ると、トロンはジャガバールXのアンテナにぐるぐる巻きにされて縛られていた。
早くしないと! オレ達は奴らのいる渓谷に急いで向かった。
「クソ、はなせ! はなせよぉ!」
「そうはイカンねん。あんさんはトム・ストームを誘き寄せる人質やからな」
「だ、だましたんだなー! おまえら、オレとねーちゃんをだましたんだな!」
そこに姿を見せたのは占い師の姿の女ロボだった。
「オホホホホホ、所詮この世は騙される方が悪いのよ。アンタの父親も簡単に騙されたからね。でもトム・ストームを倒すどころか返り討ちになるなんて、マヌケに用は無かったわよ」
「クソッーこの卑怯者めー!」
「のう、ディエンドラ。その小僧、ワシの実験用にくれんか? 姉と合わせれば父親にも勝る邪兵コマンダーになるじゃろうて」
「ゲルジオスかい。まあいいさ、あんなの使い終わったらゴミみたいなものだからね」
その様子を見ている剣士のロボが腕を組みながら目を閉じていた。
「くだらない。策を労せなばトム・ストームに勝てぬのか」
「バルーバイン! 何をいうか、バイリビドーを手に入れるバデス様の命令は何にも勝るのだ。それに手段なぞは関係ないわ」
ガンドラーのいる渓谷に到着したオレ達だったが、それは罠だった。
渓谷は狭い場所に大量の邪兵コマンダーが待ち受け、オレ達は袋の鼠にされてしまった。
「ギャハハハハハッ! アホや、アホがおるでぇ! コイツは全員しばき倒したれ。あ、そうそう、可愛いねーちゃんはワイが可愛がったるからなー」
絶体絶命のオレ達。
だがその時、渓谷の上から声が聞こえた!
「待てぃ!!」




